REVIEW
本作は、『マチネの終わりに』『ある男』の原作者、平野啓一郎の同名小説「本心」の映画化作品です。本作の物語の舞台が何年代かは明示されていないもの、映画公式資料によると、原作は2040年代を舞台に書かれたとあります。映画を観ると、近未来の日本ではAI技術がさらに進化していると同時に、死生観を問う重大な法律が施行されているのがわかります。
あまり情報を入れずに、実際にタイムスリップした感覚で観ていただくために、具体的なキーワードを伏せたまま見どころをお伝えすると、一見複数に見えるテーマには「本心って何だろう」「本物って何だろう」という一つの大きな問いが貫かれています。それはアイデンティティの問題でもあり、「人間とは何か?」という話でもあります。そうした重みのあるテーマを、さまざまな切り口で描く構成がまず見事です。だから、さまざまな視点で大きな一つの問いに対する答えを探す感覚で観られます。
そして、何といっても池松壮亮の演技がスゴい!彼の豊かな感情表現は間違いなく観客を引き込みます。また、母親役を演じた田中裕子の演技にも魅了されます。“表情”が意味する部分が大きいストーリーだけに、その使い分けの巧みな技が光っています。
とにかく、自分自身のアイデンティティはもちろん、人との関係についてもすごく考えさせられるストーリーなので、今後もふとした時に観返す度に大事なことを教えてもらえそうな気がします。
デート向き映画判定
恋愛についても考えさせられる部分があるので、お互いの恋愛観が合うかどうかを試すために観てみるのもアリでしょう。ただし、どこか自分をごまかしながら恋愛をしている感覚がある方は、本作鑑賞を機に心の奥底にあったものが湧き出てくる可能性があるので、覚悟ができたら観てください。
キッズ&ティーン向き映画判定
自分のアイデンティティや価値観を揺さぶる内容なので、年を重ねるほど心に刺さる部分が大きくなっていくと思います。今一度観ておいて、何年か経ってまた観るというようにすると、自分の変化にも気づけるのではないでしょうか。親子の物語でもあるので、家族と一緒に観ると、普段話しづらい本音を言い合う機会にできるかもしれません。
『本心』
2024年11月8日より全国公開
ハピネットファントム・スタジオ
公式サイト
©2024 映画『本心』製作委員会
TEXT by Myson
関連作
「本心」平野啓一郎 著/文春文庫 / コルク
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情報は2024年10月時点のものです。最新の販売状況や配信状況は各社サイトにてご確認ください。
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