これは児童文学として長年愛されているピノキオの物語ですが、私達がよく知るピノキオのお話とはちょっとイメージが異なります。本作は、1883年に出版されたイタリアの作家カルロ・コッローディの「ピノッキオの冒険」に書かれていたピノッキオの本来の姿を描いた作品ということで、そもそも私達がこれまで観てきたピノキオの物語よりも、本作のほうが原作に近いと言えるのかもしれません。
そんな本作は、良い意味での不気味さが満載。人間や擬人化した動物、妖精などさまざまな個性的なキャラクターが登場します。特にコオロギやカタツムリ、魚など擬人化した動物の特殊メイクは精巧で、独特な世界観を放っています。ピノッキオの見た目もすごく精巧に作られていて、こんなにすごい特殊メイクをするクリエイターは誰なのかと気になって公式サイトを見てみると、米アカデミー賞で複数回受賞しているマーク・クーリエという方が担当されていて納得しました。とにかく、どのキャラクターもリアルなので、このダークファンタジーの世界にどっぷりと浸って観ることができます。
そして、ロベルト・ベニーニの演技が久々に観られるのも本作の嬉しいところ。『ライフ・イズ・ビューティフル』を彷彿とさせる切なくておどけた演技も垣間見ることができます。また、ピノッキオがとってもピュアで可愛くて、次々と出くわすハプニングにちゃんと対処できるのか、ハラハラドキドキして観てしまいます。一方で笑えるシーンも織り交ぜられていて、私はカタツムリで遊ぶシーンで爆笑しました。設定もおもしろいのですが、カタツムリ役の俳優さんが上手すぎます(笑)。
ストーリーの大筋は私達がよく知っている内容と共通していますが、「こんな展開あったっけ?」と思うシーンや設定が少し違うシーンもあり、とても新鮮な気持ちで観られます。子どもが観ても楽しいですが、ストーリーはもちろん、美術、衣装、特殊メイクなど芸術的にもこだわりが見える作品となっているので、幅広い層に楽しんでもらえると思います。
気まずいことは全くなく、ピノキオは誰でも知っているので、誰を誘っても観やすいと思います。「あれ?私達が子どもの頃に本で読んだり、映画で観たピノキオってどんな話だったっけ?」と思える内容なので、自然に鑑賞後の会話のネタも生まれるでしょう。ついでにお互いの子どもの頃のお話にもなりそうなので、付き合いたてのカップルのデートや初デートで観ても、お互いのことを話すきっかけになって良さそうです。
不気味な生き物が登場したりしますが、キッズの皆さんでも大丈夫な程よいテイストで、クセになるかもしれません(笑)。キッズの皆さんでも、ピノッキオと一緒に冒険する感覚で観られるし、ティーンの皆さんもピノキオの物語を懐かしく思いながら楽しめると思います。芸術に興味がある方にも見どころがたくさんあると思うので、いろいろな観方で楽しんでください。友達と観ても楽しいし、親子の物語というところで親子で観るのも良いでしょう。
『ほんとうのピノッキオ』
2021年11月5日より全国公開
ハピネットファントム・スタジオ
公式サイト
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TEXT by Myson