一流ファッションブランドとして長らく親しまれ続けているGUCCIにこんな歴史があったなんて!本作では実話を基にグッチ一族が崩壊するに至った経緯が描かれており、ドロドロとした愛憎劇が繰り広げられます。本作の公式サイトにある相関図で、GUCCIはグッチオ・グッチによって創業され、その次男アルド・グッチ(アル・パチーノ)と四男のロドルフォ・グッチ(ジェレミー・アイアンズ)が家業を継いだことがわかります。本作の物語はロドルフォの息子マウリツィオ(アダム・ドライバー)が、パトリツィア(レディー・ガガ)と出会うところから描かれていて、パトリツィアを軸に展開していきます。
マウリツィオが魅力的だからか、グッチの子息だからかはさておき、彼に出会ってすぐにグイグイ近寄っていくパトリツィアの姿にはちょっと怖いものがあります。でも、彼女は見事彼のハートを射止め、グッチ家に嫁ぎます。そこからさらにビジネスのセンスを見せようと張り切りますが、ある意味“外”から入ってきたパトリツィアがグッチ家のファミリービジネスに割り込むのは簡単なことではありません。そうなればそうなるほど、パトリツィアは暴走してしまいますが、そこには夫婦関係も大きく関わってきて、余計にドロドロとした状況に陥っていきます。
詳しくは映画でご覧いただくとして、本作の見どころはグッチ家の実話に基づいた物語というところはもちろん、パトリツィアという女性のキャラクターです。彼女を突き動かしているのは愛なのか、野心なのか。もちろんどちらもあるのだと思いますが、複雑な状況になっていくほど彼女が空回りし自分を見失っていく姿が切なく映ります。一見悪女ではありますが、元々そうだったというよりも、彼女もグッチ家が持つ富と名誉に振り回された1人であることはいうまでもありません。なので、やっぱり人ってお金や権力を持ちすぎるとコントロールを保つのが難しいのだなと改めて感じました。
物語の最後はどうやって今のGUCCIになったのかという入口まで描かれていますが、実権者が変わっていく様子、そこに辿り着くまでのいろいろな駆け引きもドラマチックです。GUCCIユーザー、ファッションに興味がある方はもちろん、経営者、映画好きにも楽しんでいただける1作です。
女性のしたたかさが際立つシーンもあり、恋愛模様も複雑なので、ロマンチックなムードは期待しないほうが良いでしょう。そんなつもりではなくても、玉の輿のような関係にあるカップルは特に余計な心配が頭をよぎるかもしれないので、1人でじっくり観るか、仲の良い友達と観るほうが気楽だと思います。
ティーンの皆さんなら有名ブランドにも徐々に興味が湧いてくるお年頃なので、本作に関心を持つ方もいるのではないでしょうか。富や名声に憧れる部分はあると思いますが、本作を観るとその代償が大きいこともわかるでしょう。人や物事を見る際の視野が広がり、視点も増えると思うのでぜひ観てみてください。
『ハウス・オブ・グッチ』
2022年1月14日より全国公開
東宝東和
公式サイト
© 2021 METRO-GOLDWYN-MAYER PICTURES INC. ALL RIGHTS RESERVED.
TEXT by Myson