一つの事実を、裏表両方から描いていて、前半と後半で全く見え方が変わってきます。前半は、半地下に住む一家による見事な“パラサイト”ぶりが軽快に描かれ、その巧妙なやり方にはめられていくお金持ち一家が心配になりますが、ある出来事が起きたところで何もかもが一変。そこから、人間の尊厳の問題に移り変わっていきます。住む世界が違う人間同士がお互いをどう観ているか、同じ世界に住む人間同士でもどんな問題が起こるのかをリアルに想像させられて、格差社会の問題をこういった切り口で語るというセンスに感服します。また、映画なのに、観客の嗅覚を刺激するシーンもあって、その表現力に驚かされます。さらに観ている側に選択を迫るような結末も、観終わった後に語り甲斐があります。
角度によっていろいろな感情を引き出す複雑なキャラクターも、役者陣が見事に演じていて、とてもリアル。半地下の家族は、手を差し伸べたくなるような、でも関わりたくないような…という絶妙な距離感を観ている側に感じさせますが、こういった感情こそが、社会問題に目を向けるきっかけになるのかも知れません。とにかく良いパンチを浴びせてくれる1作。これは必見です。
パンチ力のある作品でとても見応えがあり、人の価値観を問う、いろいろと考えさせられストーリーです。なので、初デートやお互いのことをまだあまりわかっておらず、意見をするのも遠慮しがちな状況には、不向きだと思います。「すごい映画を観た!」という充実感を味わってもらえると思うので、その興奮を一緒に共有できる相手を誘って観るか、1人でじっくり観るほうが良さそうです。
過激な描写が出てきますし、ある程度社会背景などがわかった上で観て欲しい内容で、PG-12ということもあり、中学生以上になってから観るのが良いように思います。物事の多面的な観方を教示してくれる作品なので、生きる上で何が最低限必要で、何は我慢できるのか、何は我慢できないのかを考えさせられます。どんな生き方をこれから選ぶのか、主人公達の姿をいろいろな意味でお手本にしてみてはいかがでしょうか?
『パラサイト 半地下の家族』
2019年12月27日よりTOHOシネマズ日比谷、TOHOシネマズ梅田にて先行公開
2020年1月10日より全国公開
PG-12
ビターズ・エンド
公式サイト
TEXT by Myson
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