何とも言えない不気味さが蔓延する作品で、冒頭の動物のお面を付けた子ども達が死んだ動物を埋葬するために墓地へと行進するシーンからゾッとさせられます。主人公一家は、のどかな生活を求めて、田舎の町に引っ越してきますが、物語の舞台が狭い範囲に限られていることで、とても閉鎖的な環境であることが伝わってきて、この世界に入ったら最後、抜け出せないという緊張感も漂ってきます。ただ、何かに襲われるというのとは違うのが、この物語の怖いところで、大きな喪失感が人を狂わせてしまうという点で人間の恐ろしさを突きつけられます。でも同時に、過ちを犯してしまうほどの主人公の喪失感には誰でも共感できるので、怖いというシンプルな感情だけではない複雑な感情を引き出してくれる点でこの物語が一目置かれるのも納得です。この物語には、原作者スティーヴン・キングにとって、これまでの彼の作品の中でもとても私的な内容が含まれているそうで、一時は出版するのも恐ろしいとして、執筆後3年間も引き出しにしまい込まれていたとされています。結果的に妻の説得により1983年11月14日に初版が出版され、当時前例のない70万部を発行するベストセラーになりましたが、いろいろな意味で彼の小説の中でも要となる作品なので、映画化作品である本作も、ぜひ抑えておいて頂きたいです。原作とは変えてある部分もあるので、小説でストーリーを知っている方も比較してみてはいかがでしょうか。
ジワジワとくる心理的な怖さと、ビジュアル的な怖さの両方があり、吊り橋効果もそれなりにありそうなので、デートで観るのもありだと思います。ただ、田舎の閑散とした場所の独特な不気味さがあり、墓地がキーになっているので、設定に近い環境で暮らしている人を誘う場合は、ちらっと内容を事前に伝えた上で誘うほうが良さそうです。本作が気に入ったら、1989年版の『ペット・セメタリー』との比較を楽しむのに、次のデートを企画するのも良いでしょう。
R-15なので15歳未満の人は観られません。主人公と妻のセリフにもたびたび出てくるくらい、死生観をテーマにした内容で、考えさせられるホラーとして楽しめます。直視するのを躊躇してしまうようなシーンも一部あるので、ホラー初心者には刺激が強いかも知れません。少し怖さがマイルドなホラーで馴らしてから観るほうが良いでしょう。
『ペット・セメタリー』
2020年1月17日より全国公開
R-15+
東和ピクチャーズ
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TEXT by Myson