“クリード”シリーズ3作目となる本作では、アドニス(マイケル・B・ジョーダン)の過去が明かされます。輝かしい実績を残して引退したアドニスは、長年疎遠になっていた幼馴染のデイム(ジョナサン・メジャース)の突然の訪問を受けます。そして、昔アマチュアボクシングで好成績を残し、長年の刑期を終え刑務所から出所したばかりのデイムは、ボクサーとして再起を図ると、アドニスに宣言します。引退したアドニスはデイムを支えることにしますが、事態は思わぬ方向に進んでいきます。
アドニスとデイムは親友でありながら、心に傷を残すほどの過去を引きずっています。その過去に向き合うことなく過ごしてきたアドニスは、遂にその過去と対峙せざるを得なくなります。最終的にアドニスは誰かしらと闘うはずとわかっていながら、前半はデイムが何を考えているのか読めずにどこで何が起こるのかハラハラします。そして後半には、トレーニングシーン、ファイトシーンをたっぷり堪能できます。マイケル・B・ジョーダンの俳優の域を超えたボクサーとしての身体作りには、今回も驚かされます。また、スピード感と迫力満点のリアルなファイトシーンは見応え充分です。
本シリーズはボクシングシーンが見どころであるのはもちろんのこと、本作ではアドニスの心理的な葛藤も見どころです。今回、主演だけでなく監督と製作も務めたマイケル・B・ジョーダンは、トキシック・マスキュリニティ(有害な男性性、男らしさの呪縛と訳される)もテーマの一つとしていると来日時に話していました。トキシック・マスキュリニティはここ数年で議論が活発になってきた概念です。ざっくりいうと、社会全体で醸成されてきた「男はこうあるべき」という見方が男性として生まれた人にはもちろん、社会全体に悪影響を及ぼしていることを表す言葉です。昨今、人種問題、ジェンダーの問題などを解決し、多様性を受け容れようとする風潮が強まる一方で、それに反発する暴力的な集団が起こすニュースも見られます。そんななか本作では、ボクシングは暴力でもないし、復讐の手段でもない、スポーツであると主張する場面が出てきます。そういった点からも、本作でトキシックマスキュリニティをテーマに取り上げた背景には納得がいきます。そこにもマイケル・B・ジョーダンの本作への思い入れを感じます。さまざまな視点でお楽しみください。
カップルで観ると、アドニスとアドニスを心配する妻のビアンカのやり取りにいろいろ思うところが出てくると思います。夫婦だからこそ言えない、夫婦だからこそ支えたい、両方の思いが拮抗する場面はとてもリアルです。1人で抱え込む性格の方と付き合っている方は一緒に観てみると、少し刺激をもらえるかもしれません。
本作では、アドニスの娘が登場し、子どもながらに大人の世界をどう見ているかという描写も出てきます。大人の視点とは異なるかもしれませんが、キッズやティーンの皆さんは今観るからこそ感じられること、気付けることがあるのではないでしょうか。また、アドニスとデイムの友情物語が軸なので、年齢を問わず感情移入できると思います。
『クリード 過去の逆襲』
2023年5月26日より全国公開
ワーナー・ブラザース映画
公式サイト
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TEXT by Myson