本作は、2020年のカンヌ映画祭で『ドライブ・マイ・カー』が脚本賞など4冠に輝き、一気に注目を集める濱口竜介監督の初の短編集です。「魔法(よりもっと不確か)」「扉は開けたままで」「もう一度」の3話が入っていて、どれも全く違うトーンですが、まさに”偶然と想像”という部分が効いたストーリーとなっていて、なおかつこの3つの短編の組合せが絶妙です。
第1話「魔法(よりもっと不確か)」では恋愛のドロドロした部分と現実的な部分が描かれ、この短編がどういうものかということを掴めるエピソードになっています。2話目の「扉は開けたままで」はハラハラドキドキなシーンから切ない展開になりますが、そのきっかけ自体はクスッと笑えるもので、私達の日常に転がっている人間の滑稽な一面を垣間見ることができます。最後の「もう一度」は、女性は特に「ありそう!」と思えるシチュエーションのように感じます。途中から「あれ、そうなるとこの後どうなる?」となりますが、ホッコリするとても素敵な結末となっています。
3話とも濱口監督の脚本と演出の力が感じられて、人間が愛おしく見えてきます。役者達の演技もとてもリアルなので見応えがあります。映画好きにはもちろん、老若男女楽しめる作品です。
1話目がカップルのお話で、ありそうでなさそうでやっぱりありそうなストーリーという意味で、たまたまシチュエーションが自分達と似ているなと感じた場合はいろいろな想像が頭を巡るかもしれません。でも、なかなかここまでの偶然が起こるのは稀なので、大半のカップルは大丈夫だと思います。独特のユーモアがある作品で、自分達の”偶然エピソード”を話すきっかけにもなり、鑑賞後の会話が弾みそうです。
どのストーリーもおもしろいし、短編集なので若い皆さんにも観やすいと思います。偶然に起こった出来事によって人間関係に化学変化が起こる様子がよくわかり、それが思わぬ展開に繋がっていくので、不思議な爽快感もあると思います。2話目がちょっとセクシーな要素があるので、思春期だと親子で観るとちょっと恥ずかしいかもしれません。友達と観るか1人でじっくり観ると良いでしょう。
『偶然と想像』
2021年12月17日より全国公開
PG-12
Incline
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TEXT by Myson