主人公リッキーには、妻、息子、娘がいて、彼は大黒柱として、マイホーム購入を目指してフランチャイズの宅配ドライバーになります。最初は本人の頑張り次第で稼げると、夢が膨らむような話をされますが、実際に働いてみるとドライバーには負担ばかり。自分の裁量で働けるはずなのに、全然自由もありません。リッキーは、金銭面でも、時間的にも、身体的にも、精神的にも、追い詰められていきますが、その余波はやがて家族にも広まっていきます。日本でも会社に勤める以外のいろいろな働き方が選択肢として選ばれるようになってきて、主人公のような働き方をしている人も増えてきていると思います。またアメリカの配車事業社大手が日本で展開する飲食宅配代行サービスで、配達員らが雇用関係について不満を訴えたニュースがありましたが、本作を観てどの国でも同じようなことが起こっているのだなと感じるはずです。個人って本当に無防備だということを実感させられるストーリーで、一生懸命働こうとしている人でもこんな風になってしまうなら、絶望しかありません。フランチャイジーに限らず、フリーランスの人達も、弱い立場を利用されることは当たり前に経験していると思います。ケン・ローチ監督は『わたしは、ダニエル・ブレイク』でも、国から見放された人々にフォーカスしましたが、本作でも弱肉強食社会を浮き彫りにしています。世の中の現状を知る一つのきっかけになる作品です。
お互いの仕事について、家計について、子どもの教育について、夫婦で考えるべき課題が山積みな様子が描かれています。なので、敢えて夫婦で観ると、立ち止まって考えて話し合うきっかけになると思います。またこれから結婚しようと思っている人は、お互いの価値観、今後の見通しなどを話し合うきっかけに観ると良いのではないでしょうか。
長男、長女、それぞれの立場で親をどう観ているかという子ども心もリアルに描かれています。普段、親がどんな仕事ぶりをしていて、いくら稼いできているかなんて、あまり考えないかも知れませんが、家族を養うことがいかに大変かがしみじみとわかると思うので、ぜひキッズやティーンの皆さんにも観て欲しいと思います。
『家族を想うとき』
2019年12月13日より全国順次公開
ロングライド
公式サイト
TEXT by Myson
photo: Joss Barratt, Sixteen Films 2019
© Sixteen SWMY Limited, Why Not Productions, Les Films du Fleuve, British Broadcasting Corporation, France 2 Cinéma and The British Film Institute 2019