2017年3月18日より全国順次公開
ロングライド
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イギリスの巨匠ケン・ローチ監督が、イギリスや世界中の格差や貧富に苦しむ人々の姿を目の当たりにし、引退宣言を撤回してまで作成した本作。主人公のダニエル・ブレイクは、妻を亡くし、長年の介護生活から解放された後、心臓発作を起こし、医者から仕事をしてはならないと言われます。彼は生活のために国の援助を受けようとしますが、申請や承認を受ける方法が複雑過ぎて、なかなか受給できないという状況のなか、自らもギリギリの生活にも関わらず、隣人を助けるという精神を持ち、人間らしく生きています。お役所は融通が利かないのは万国共通で、何でもオンラインでの処理になってしまい、お年寄りやパソコンなど持てない人達に不親切な世の中になっている状況も生々しく描かれていました。そんななか、ダニエルが若者達や隣人達と交流する姿には、お互いへの気遣いが見え、“人の心”があるおかげで世の中は保たれていると思えますが、一方で心ない対応しかしない政府に憤りを感じます。“私は一人の人間で、一人以上でも一人以下でもない”というセリフがあったのですが、すごく深いなと思いました。人として当たり前の権利を求めているだけで、国民としての義務も果たし、人間としても立派な人が報われないのは辛すぎます。ぜひ、日本の政府の方々、お役所でお勤めの方、政治に携わる方々にも観て欲しいです。 |
心をが温まる内容である一方、切ない展開もある人間ドラマで、デートの雰囲気が盛り上がる要素は正直ありません。でも、自分がダニエル・ブレイクの立場だったらどうするか、隣人の立場だったらどうするか、鑑賞後に語り合うことで、お互いの人となりが垣間見えると思います。思いやりがある人かどうか見極めたいなら、一緒に観に行くのもアリではないでしょうか。 |
福祉のお話なども出てきて、ある程度背景がイメージできたほうが良いため、キッズにはちょっと難しいかも知れません。中学生くらいなら、理解できる内容だと思うので、本作の鑑賞を機に、イギリスだけでなく、日本にもこういった現状があることなどに目を向けてもらえればと思います。また、国が助けてくれなくても、隣人同士で助け合う姿もぜひ目に焼き付けてください。 |
2017.3.13 TEXT by Myson