“キネマの神様”というタイトルがストーリーの中のどんな作用を示しているのか想像しながら観て、改めてこれは広い意味で映画を愛する人のための映画だなと思いました。主人公ゴウの過去(菅田将暉)と現在(沢田研二)を描いたストーリーで、現在のゴウがギャンブルと酒好きで借金を抱えたダメ親父というところから始まるので、なぜこうなったのかと主人公の過去に興味を引かれます。でも本作の魅力はただただ映画愛を語るだけではなく、映画を愛する人達がどんな人生を送り、その中で映画がどんな存在なのかを語っている点で、私達映画好きにとっても身近なストーリーだと言えます。
観た印象としては予想以上にラブストーリーで、不器用な若者達が恋と友情の狭間で揺れ動く姿に共感できます。また、根本は家族の物語であり、3世代に渡る家族が時に厳しく、時に優しく接する姿にホッコリさせられます。ここは特に「これぞ、山田洋次監督作!」といった魅力を感じられるのではないでしょうか。
いろいろな意味でどういう結末になるんだろうと思いながら観ましたが、現実の苦さもありつつ、夢のあるエンディングとなっています。誰が観ても何か自分に通じるものを感じられる作品です。
友達以上恋人未満の2人は、自分の気持ちになかなか素直になれない主人公ゴウ(菅田将暉)の姿や、そんな彼に対して思いを寄せる淑子(永野芽郁)の姿を観て共感すると同時に、一歩を踏み出す勇気ももらえると思います。そして大人カップル、ベテランカップルにとっても、現在のゴウ(沢田研二)と淑子(宮本信子)の姿に自分を重ねられるところが見つかると思います。長く付き合っているといろいろあると思いますが、初心に返れるようなラブストーリーとなっているので、デートで観るのもオススメです。
3世代の家族が登場するので、特にティーンの皆さんは孫の勇太(前田旺志郎)の目線で観たり、若かりし頃のゴウや淑子、テラシン(野田洋次郎)に親近感を持って観られると思います。人生の苦々しい面も描いている点で、反面教師として観られる部分もあると思います。でも、どんな道を辿ったとしても何かしら幸せがあるということも感じられるはずです。親子で観たり、おじいちゃん、おばあちゃんと観るのも良いですね。
『キネマの神様』
2021年8月6日より全国公開
松竹
公式サイト
© 2021「キネマの神様」製作委員会
TEXT by Myson
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