REVIEW
荻上直子監督×堂本剛という情報以外は入れずに観て、何ともユニークなストーリーと、伝わってくるメッセージに痺れました。映画公式資料には荻上監督と堂本剛の対談インタビューで、本作制作までのいきさつが以下のように語られています。荻上監督は留学していたアメリカから20代後半で帰国して、30代で映画監督デビューしたものの、なかなかうまくいかない時期に、「テレビに出ている堂本さんを拝見して、『あれ……私よりもっとツラそうな人がいる』と、すごく興味がわいてしまった」そうです。それから荻上監督は誰に興味があり誰と一緒に映画を作りたいかと聞かれる度に堂本剛の名前を出していたそうです。とはいえ、しばらく俳優業から離れているし難しいと考えていたところ、出演の可能性がないわけではないと知り、すぐに本作の脚本を書き始めたそうです。普段はあまりアテ書きをしないという荻上監督は、今回アテ書きをするにあたり、堂本剛の過去のインタビュー記事をたくさん読み、本作のテーマに辿り着いたといいます。
一方、堂本剛は、お芝居に興味が無いという噂に対して、そんなことを言った覚えはなく、自分のお芝居を見てもらった上で必要とされればスイッチが入ると話しています。そして、今回は荻上監督にぜひといわれてオファーを受けたそうです。そんな堂本剛の演技力が抜群に光るシーンがクライマックスにあります。そのシーンについては対談インタビューでも、親身になって思いを伝えてくれた監督やスタッフのために全霊で演じたとあります。ここでは具体的に書きませんが、観ればすぐにこのシーンだとわかるはずです。本当にそのシーンは演技を越えたものに見えて引き込まれます。
皆さんにも真っ新な状態で観て、主人公と同じように周囲で起こる出来事に巻き込まれていただきたいので、詳しくは書かずにおきますが、本作はアイデンティティの話です。そして、そこから存在意義の話になり、最終的に生き方の話になっていきます。
片桐はいり、小林聡美、柄本明が演じるキャラクターはどこかファンタジックでコミカルな世界観を作り出している一方、綾野剛、吉岡里帆、森崎ウィンが演じるキャラクターは逆に現実世界の辛辣さを物語っていて、バランスが絶妙です。好きなことは見つけたはずなのに、自分がこのままでいいのかわからなくなったり、無力感に苛まれた時にぜひ観て欲しい1作です。
デート向き映画判定
カップルで観て気まずいことはないし、自分の中に溜めているものを語るきっかけにできそうなのでデートで観るのもアリでしょう。ただし、ロマンチックなムードになる内容ではなく、きっと観賞中は自分の世界に入って、いろいろなことが頭を巡ると思います。デトックス効果がある作品なので、ひとまず1人でじっくり観るのもアリだと思います。
キッズ&ティーン向き映画判定
大人とは感じ方が異なるかもしれませんが、誰しもが感じる焦燥感や無力感についてのストーリーなので共感できる部分があると思います。今は若くて夢がいっぱいな状態でグイグイ進んでいけば良いですが、本作で描かれている現実的な展開も知っておくと、より覚悟が深まるかもしれません。
『まる』
2024年10月18日より全国公開
アスミック・エース
公式サイト
© 2024 Asmik Ace, Inc.
TEXT by Myson
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情報は2024年10月時点のものです。最新の販売状況や配信状況は各社サイトにてご確認ください。