本作は、第二次世界大戦が終戦した後、シベリアの強制収容所=ラーゲリで不当に拘留されていた日本の兵士達の実話を基に映画化されました。文学に関心が深く語学が堪能だった山本幡男(二宮和也)を中心に描いた群像劇となっています。映像からはシベリアの凍てつく寒さのなかで、日本兵達が理不尽に虐げられる様子が生々しく描かれています。その過酷な状況のなかで追い詰められた兵士達は、生き残るため、苦しみから少しでも逃れるためににロシア兵からいわれるままに仲間を傷つけたり、裏切ったりします。その姿からは人としての尊厳を守る余裕もないことが伝わってきます。そんな観ているだけでも苦しくなるような状況を、豪華キャストが見事に演じています。
二宮和也が演じる山本幡男は、語学が堪能だったことから通訳の役割を果たしていました。彼はこの苦境のなかでも人としての尊厳、自分らしさを捨てず、仲間を支えていました。ロシア兵の拘留下にありながら、彼が英語の歌をくちずさんでいたのも印象的で、この時代、この劣悪な環境下でも国の違いを超えたグローバルなものの見方をしていた点にも共感できます。そして、幡男の帰りを日本で待つ妻モジミ(北川景子)の気丈さも素敵です。夫婦共に心の持ちようが素晴らしい!どこにいても支え合えるというのは本当にスゴい絆です。
観ていて辛くて辛くて胸が締め付けられますが、すごく暖かい作品です。主人公の山本だけでなく、戦争で心が壊れていく他の兵士達の葛藤、奮闘にも心を動かされます。本作は私達の祖先の方々が苦しんだ思いを無にしてはいけないと教えてくれます。


山本幡男とモジミは遠くにいても夫婦で支え合っています。その姿はとても良いお手本になるでしょう。痛々しいシーンも含まれるので、デートのムードを盛り上げてくれるタイプの作品ではありませんが、山本夫妻の姿から良い刺激をもらえると思います。


歴史的背景、社会的背景がないと少し難しい部分があるので、小学校高学年か中学生くらいになってから観るほうが一層関心を持って観られると思います。第二次世界大戦でどの国とどの国がどんな関係にあったのか、社会科の授業で習った方ならある程度理解できるでしょう。戦争がいかに人を壊すのかということも知ることができると思います。

『ラーゲリより愛を込めて』
2022年12月9日より全国公開
東宝
公式サイト
© 2022映画「ラーゲリより愛を込めて」製作委員会 © 1989 清水香子
TEXT by Myson

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