映画制作スタジオA24とプランBが、アカデミー賞作品賞受賞作『ムーンライト』以来タッグを組んで製作された本作。舞台はサンフランシスコで、都市開発により変わっていく街の中で、家族との記憶が宿った大切な家を取り戻そうと奔走するジミーと、それを支えるモントの友情が描かれています。 現在のサンフランシスコといえば、お金持ちがたくさん住んでいて、有名な観光地の1つでもありますが、その歴史を遡ると、かつては日系人コミュニティがあったり、黒人達が多く住んでいました。でも、急速な発展によって地価が高騰していき、富裕層が住むようになったことで、代々住んでいた人達の多くが行き場を失ったそうです(公式資料参照)。主人公を実名で演じたジミー・フェイルズもその1人で、幼馴染みであるジョー・タルボット監督が、彼の体験談を基に本作を制作しました。劇中では、ジミーが昔住んでいた家を何度も訪れるシーンがありますが、その姿を見ていると、故郷や自分の居場所の大切さを感じると共に、人種問題や貧富の差についても深く考えさせられます。でも、決して難しく描かれているわけではなく、ジミーやモントの視点で観ることで、自然と彼らの気持ちに共感できる内容となっています。また、サンフランシスコの美しい街並みや、スローモーションを活用した映像など、アート作品としても見どころ満載なので、ぜひ細部まで注目してご覧ください。
デートで観ても問題ありませんが、アメリカの歴史に興味があったり、アート系の作品が好きな方だとより楽しめそうです。本作は自分の居場所がテーマとなっているので、観賞後はこれを機に、お互いの故郷や幼い頃の思い出話などをして、さらにお互いの距離を縮めるのも良いと思います。
PG-12なのでキッズも保護者同伴なら観られますが、本作の背景にある歴史的な部分を理解できたほうがより本作の良さがわかるので、中学生以上になってから観ることをオススメします。ティーンの皆さんは、ジミーとモントの友情に注目して観るのも良いですが、観ていると自然と「なぜ、ジミーはこの家から出ることになったのか?」が気になると思うので、観賞後はぜひサンフランシスコの歴史について調べてみてください。
『ラストブラックマン・イン・サンフランシスコ』
2020年10月9日より全国公開
PG-12
ファントム・フィルム
公式サイト
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TEXT by Shamy