主人公のエヴ(カトリーヌ・フロ)は、新種のバラを開発し、数々の賞に輝いたローズメイカー。でも、この物語は順風満帆なバラ開発の過程を描いたものではない点でユニークです。エヴは父が遺したバラ農園を経営していますが、数年前から巨大企業に顧客を奪われ、倒産寸前の窮地に立たされています。一方、助手のヴェラもこの危機を何とか乗り切ろうと、格安で雇えるワケありの3人を雇います。最初エヴはど素人の3人を相手にしようとしませんが、やがてある閃きを得て、彼等をある作戦に駆り出します。ここからは本編をご覧頂くとして、本作がおもしろいのは、まずエヴが本当に必死なところ。「それ、やっちゃっていいの!」ということをやろうとしますが、そこに意外性もありつつ、人間必死になると何でもやっちゃうというところでコミカルに描かれています。そして、細かいところに伏線があり、それがワケありの3人とエヴの再生に繋がっているところにも共感できます。家族って何だろうと考えさせられる展開もあり、ちょっと切ないシーンもありつつ、最後はホロッとさせられる作品です。バラの奥深さも知ることができるので、お花好きの方にもオススメですよ。
ラブストーリーの要素はありませんが、誰にでも観やすい作品なので、初デートで観ても大丈夫です。バラにはさまざまな種類があって、香りもそれぞれ特徴があり、「そんな香りの構成なの!」と驚くほどです。本作を観ると、バラに興味が湧く方もいると思うので、次のデートで植物園に行く約束をしても良さそうですね。もしくは、本作を観た後のデートでパートナーにバラをサプライズでプレゼントすると喜ばれるのではないでしょうか。その場合は花言葉も調べて花を選ぶと良いですよ。
主人公はエヴですが、バラ農園に新しく雇われる青年フレッド(メラン・オメルタ)も物語の中心人物なので、キッズやティーンの皆さんは彼の目線で観られると思います。ネタバレになるので詳細は伏せますが、フレッドは不遇な環境で育った青年ですが、エヴのバラ農園で働くことになり、徐々に道が拓かれていきます。フレッドのストーリーもとても爽快で、人との出会いがいかに大切かを本作を観て知っていただけると思います。
『ローズメイカー 奇跡のバラ』
2021年5月28日より全国公開
松竹
公式サイト
THE ROSE MAKER © 2020 ESTRELLA PRODUCTIONS – FRANCE 3 CINÉMA – AUVERGNE-RHÔNE-ALPES CINÉMA
TEXT by Myson