REVIEW

ジャン=リュック・ゴダール反逆の映画作家(シネアスト)【レビュー】

  • follow us in feedly
  • RSS
映画『ジャン=リュック・ゴダール反逆の映画作家(シネアスト)』ジャン=リュック・ゴダール

彼にとって、映画が言語なのだと感じました。彼の中にある概念はとても掴みづらいもので、だからこそ彼は映画として表現してきたのではないかと思います。常に世の中、人間を探求し、自分自身をも探求するゴダールの視点に同化してみたくて、人は彼の映画を観る。簡単には理解できないとしても、それこそがゴダールも感じてきた混沌であり、言葉で簡単に表現せずに映画で表現した所以であると考えます。

映画『ジャン=リュック・ゴダール反逆の映画作家(シネアスト)』ジャン=リュック・ゴダール

イヤホンで俳優にセリフを指示する手法もユニークです。第三者の語りの中に“ロボット”のようだという表現も出てきましたが、ゴダールは自分の頭の中にあるものを俳優の声、身体を借りて具現化しようとした点で、俳優はまさに媒介のためのロボットであったともいえそうです。

映画『ジャン=リュック・ゴダール反逆の映画作家(シネアスト)』ジャン=リュック・ゴダール

そして、ゴダールの言葉や彼が書いたセリフには、“矛盾”が散りばめられています。彼自身も孤独を好んでいるように見えながらとても寂しがり屋であったり、皆に“声”を届けようとする一方で嫌われようともしたり、彼の中、世の中にある“矛盾”が、彼の創作意欲を掻き立てているように見受けられます。

映画『ジャン=リュック・ゴダール反逆の映画作家(シネアスト)』ジャン=リュック・ゴダール

本作は彼の言動と、周囲の人々、専門家の言葉で綴られており、すべてが揃って、彼という人間を表すパズルのピースが揃っているように思います。彼の作品に出演した俳優達はゴダールに翻弄されながらも、ゴダールという人間を彼等なりに捉えていて、彼等が語るゴダールの人となりは、ゴダール自身が自分を知るよりも理解していたのではないかと感じる部分もあります。神秘に溢れていたジャン=リュック・ゴダール自身、そして彼の作品を完全に理解するのは難しそうですが、本作は私達とゴダールの距離を少しだけ近づけてくれるドキュメンタリーです。

映画『ジャン=リュック・ゴダール反逆の映画作家(シネアスト)』ジャン=リュック・ゴダール

『ジャン=リュック・ゴダール反逆の映画作家(シネアスト)』
2023年9月22日より全国順次公開
PG-12
ミモザフィルムズ
公式サイト

ムビチケ購入はこちら

©10.7 productions/ARTE France/INA – 2022

TEXT by Myson


関連作

『勝手にしやがれ』

DVDレンタル・発売中/デジタル配信中
Amazon Prime Videoで観る U-NEXTで観る

『小さな兵隊』

ブルーレイ&DVDレンタル・発売中/デジタル配信中
U-NEXTで観る

『女と男のいる舗道』

ブルーレイ&DVDレンタル・発売中/デジタル配信中
Amazon Prime Videoで観る U-NEXTで観る

『気狂いピエロ』

ブルーレイ&DVDレンタル・発売中/デジタル配信中
Amazon Prime Videoで観る U-NEXTで観る

『恋人のいる時間』

ブルーレイ&DVDレンタル・発売中

『中国女』

ブルーレイ&DVDレンタル・発売中

『ウィークエンド』

ブルーレイ&DVDレンタル・発売中

『東風』

ブルーレイ&DVDレンタル・発売中

『ウラジミールとローザ』

DVDレンタル・発売中

『勝手に逃げろ/人生』

ブルーレイ&DVDレンタル・発売中

『パッション』

ブルーレイ&DVDレンタル・発売中

『カルメンという名の女』

ブルーレイ&DVDレンタル・発売中/デジタル配信中
U-NEXTで観る

『JLG/自画像』

ブルーレイ&DVDレンタル・発売中

『ゴダールの映画史』

関連作:『中国女』主演、ゴダールの2番目の妻アンヌ・ヴィアゼムスキーの自伝

『グッバイ・ゴダール!』

DVDレンタル・発売中/デジタル配信中
REVIEW/デート向き映画判定キッズ&ティーン向き映画判定 ステイシー・マーティン来日記者会見
Amazon Prime Videoで観る U-NEXTで観る  Huluで観る

本ページの情報は2023年9月時点のものです。最新の販売状況や配信状況は各社サイトにてご確認ください。

  • follow us in feedly
  • RSS

新着記事

映画『HERE 時を越えて』トム・ハンクス/ロビン・ライト HERE 時を越えて【レビュー】

映像作家としてあらゆる挑戦を行ってきたロバート・ゼメキス監督は、本作でも新たな挑戦の成果を見せてくれています…

映画『アンジェントルメン』ヘンリー・カヴィル/エイザ・ゴンザレス/アラン・リッチソン/ヘンリー・ゴールディング アンジェントルメン【レビュー】

本作は「近年機密解除された戦時中の極秘ファイルを後ろ盾にしたダミアン・ルイス著 『Churchill’s Secret Warriors: The Explosive True Story of the Special Forces Desperadoes of WWII』」を原作としており…

映画『少年と犬』高橋文哉/西野七瀬 映画レビュー&ドラマレビュー総合アクセスランキング【2025年3月】

映画レビュー&ドラマレビュー【2025年3月】のアクセスランキングを発表!

映画『BETTER MAN/ベター・マン』ジョノ・デイヴィス 社会的成功が本当の幸せをもたらすとはいえない事例【映画でSEL】

昨今、ウェルビーイングという概念が広まりつつあり、社会的な成功は必ずしも幸福をもたらすとは限らないという見方も出てきました。その背景を、「自己への気づき」(SELで向上させようとするスキルの一つ)に紐づけて考えてみます。

映画『片思い世界』広瀬すず/杉咲花/清原果耶 片思い世界【レビュー】

広瀬すず、杉咲花、清原果耶がトリプル主演を務める本作は、『花束みたいな恋をした』の脚本を手掛けた坂元裕二と、土井裕泰監督が再タッグを組んだ…

映画『神は銃弾』マイカ・モンロー マイカ・モンロー【ギャラリー/出演作一覧】

1993年5月29日生まれ。アメリカ出身。

映画『ファレル・ウィリアムス:ピース・バイ・ピース』 ファレル・ウィリアムス:ピース・バイ・ピース【レビュー】

“ハッピー”や“ゲット・ラッキー”をはじめとする大ヒット曲を多数生み出し、他のビッグ・アーティストへの楽曲提供やプロデュースでも並外れた偉業を成してきたファレル・ウィリアムスの人生が初めて映画化…

映画『ANORA アノーラ』ユーリー・ボリソフ ユーリー・ボリソフ【ギャラリー/出演作一覧】

1992年12月8日生まれ。ロシア出身。

映画『片思い世界』公開直前イベント、広瀬すず/杉咲花/清原果耶/土井裕泰監督 存在するということに対しての肯定を、ここまで実験的に描いた物語もなかなかない『片思い世界』公開イベントに広瀬すず、杉咲花、清原果耶が揃って登壇

劇場公開を目前に控え、本作でトリプル主演を務めた、広瀬すず、杉咲花、清原果耶と、土井裕泰監督が舞台挨拶に登壇しました。

映画『おいしくて泣くとき』長尾謙杜/當真あみ おいしくて泣くとき【レビュー】

タイトルを聞いただけで泣いちゃいそうな作品だと予想できるので、逆に泣かないぞと…

本サイト内の広告について

本サイトにはアフィリエイト広告バナーやリンクが含まれます。

おすすめ記事

映画『キングダム 大将軍の帰還』山﨑賢人/吉沢亮/橋本環奈/清野菜名/吉川晃司/小栗旬/大沢たかお 映画好きが選んだ2024邦画ベスト

正式部員の皆さんに2024年の邦画ベストを選んでいただきました。2024年の邦画ベストはどの作品になったのでしょうか?

映画『セトウツミ』池松壮亮/菅田将暉 映画好きが推すとっておきの映画を紹介【名作掘り起こし隊】Vol.4

このコーナーでは、映画業界を応援する活動として、埋もれた名作に再び光を当てるべく、正式部員の皆さんから寄せられた名作をご紹介していきます。

映画『オッペンハイマー』キリアン・マーフィー 映画好きが選んだ2024洋画ベスト

正式部員の皆さんに2024年の洋画ベストを選んでいただきました。2024年の洋画ベストに輝いたのはどの作品でしょうか!?

学び・メンタルヘルス

  1. 映画『BETTER MAN/ベター・マン』ジョノ・デイヴィス
  2. 【映画でSEL】森林の中で穏やかな表情で立つ女性
  3. 映画『風たちの学校』

REVIEW

  1. 映画『HERE 時を越えて』トム・ハンクス/ロビン・ライト
  2. 映画『アンジェントルメン』ヘンリー・カヴィル/エイザ・ゴンザレス/アラン・リッチソン/ヘンリー・ゴールディング
  3. 映画『少年と犬』高橋文哉/西野七瀬
  4. 映画『片思い世界』広瀬すず/杉咲花/清原果耶
  5. 映画『ファレル・ウィリアムス:ピース・バイ・ピース』

PRESENT

  1. 中国ドラマ『柳舟恋記(りゅうしゅうれんき)〜皇子とかりそめの花嫁〜』QUOカード
  2. 中国ドラマ『北月と紫晴〜流光に舞う偽りの王妃〜』オリジナルQUOカード
  3. 映画『ガール・ウィズ・ニードル』ヴィク・カーメン
PAGE TOP