REVIEW
本シリーズの1作目となる前作の結末で、社会の隅に追いやられていた青年アーサー(ホアキン・フェニックス)がジョーカーとして目覚め、社会に蔓延する闇をあぶり出しました。その光景に恐ろしさを感じた方もいるでしょう。本作は投獄されたジョーカーのその後を描くシリーズ2作目となっています。
本作ではアーサーの精神状態を表現する上で歌が効果的に使われています。歌はアーサーを現実世界から連れ出す役割を持っているように見えます。劇中にはふんだんにショーのようなシーンがあり、アーサーの心に火を灯す謎の女性リーをレディー・ガガが演じている所以にも納得します。レディー・ガガはショーのようなシーンでアーティストとしての本領を発揮しているのはもちろん、物語のキーパーソンとなるリーのあらゆる“顔”を見事に表現しています。
そして、再びホアキンが演じるアーサーを観て鳥肌が立ちました。本シリーズの主人公には、アーサーとジョーカーという2つの顔が同居しており、本作で描かれる裁判ではそれが病理によるのかどうかが争点となっています。つまり、アーサーはアーサーで在り続けているのか、それとも彼は完全にジョーカーなのかが本作の要である点で、端からは見分けがつかない曖昧さを表現しなければいけません。これはかなり高度な演技をしていると感じます。ホアキンの役作りのための減量も凄まじく、見ただけで怖くなるくらい痩せていて、改めて彼の役作りと名演に感服します。
ここからはあくまで私個人の解釈です。ネタバレしないように書いていますが、鑑賞後に読むことをオススメします。
本シリーズには、ジョーカーを崇める人々が出てきます。ジョーカーことアーサーは主人公でありながら、彼は社会を映す鏡であり、ある種のスケープゴートでもあるように思います。ジョーカーを求める人達は、アーサーには興味がなく、ジョーカーをおもしろがり囃し立てながらも、自分は手を汚さずにうまく生きているような人々なのでしょう。だから、囃し立てている相手がおもしろくなくなってくれば、平気で手のひらを返してしまう。エンタテインメントという言葉がセリフに出てくる点で考えても、エンタテインメントと現実を分けられなくなった人達で溢れる現代社会、何もかも都合よくエンタテインメントとして片付けられてしまう現代社会を揶揄しているようにも思えます。
本作においてアーサーは社会的弱者の象徴であり、都合よく一時はヒーローとして祀り上げられたとしても、現実社会はやはり弱者を本気で助けようとはせず、まさにピエロのような存在で在り続けるしかないのかもしれません。アーサーの物語はその比喩ではないかと受け取りました。つまり、都合の良い存在であり続ける限り、他人は無責任な加担はしてきても、本当の意味で彼のような人間を救おうとはしない現実が本作には描かれています。これはオリジナルで作り上げたキャラクターではなく、もともとDCコミックスのキャラクターであるジョーカーを主人公に描いているからこそ、エンタテインメントと現実の境界が曖昧になっている点に一層説得力が増していると感じます。
デート向き映画判定
自分達の恋愛に置き換えて考えられるようなシチュエーションではないものの、自分達の関係に自信がない状態で観ると、どんな影響を受けるのかは未知数です。映画の物語に引っ張られる心配のない方は、鑑賞後に解釈を話したくなるストーリーなので、会話が弾むのではないでしょうか。
キッズ&ティーン向き映画判定
観たままを楽しむというスタンスもあるとは思いつつ、とことん解釈したくなる気持ちが出てくる内容です。ある程度集中して、各キャラクターのセリフを噛み砕きながら観なければ、キョトンとしてしまう可能性もあります。上映時間が長めでじっくり観る作品に慣れてから観るほうが良いでしょう。
『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』
2024年10月11日より全国公開
PG-12
ワーナー・ブラザース映画
公式サイト
© & TM DC © 2024 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved.
IMAX® is a registered trademark of IMAX Corporation. Dolby Cinema is a registered trademark of Dolby Laboratories
TEXT by Myson
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TM & © DC. Joker © 2019 Warner Bros. Entertainment Inc., Village Roadshow Films (BVI) Limited and BRON Creative USA, Corp. All rights reserved.
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情報は2024年10月時点のものです。最新の販売状況や配信状況は各社サイトにてご確認ください。