REVIEW

ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ【レビュー】

  • follow us in feedly
  • RSS
映画『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』ホアキン・フェニックス

REVIEW

本シリーズの1作目となる前作の結末で、社会の隅に追いやられていた青年アーサー(ホアキン・フェニックス)がジョーカーとして目覚め、社会に蔓延する闇をあぶり出しました。その光景に恐ろしさを感じた方もいるでしょう。本作は投獄されたジョーカーのその後を描くシリーズ2作目となっています。

映画『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』ホアキン・フェニックス/レディー・ガガ

本作ではアーサーの精神状態を表現する上で歌が効果的に使われています。歌はアーサーを現実世界から連れ出す役割を持っているように見えます。劇中にはふんだんにショーのようなシーンがあり、アーサーの心に火を灯す謎の女性リーをレディー・ガガが演じている所以にも納得します。レディー・ガガはショーのようなシーンでアーティストとしての本領を発揮しているのはもちろん、物語のキーパーソンとなるリーのあらゆる“顔”を見事に表現しています。

映画『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』レディー・ガガ

そして、再びホアキンが演じるアーサーを観て鳥肌が立ちました。本シリーズの主人公には、アーサーとジョーカーという2つの顔が同居しており、本作で描かれる裁判ではそれが病理によるのかどうかが争点となっています。つまり、アーサーはアーサーで在り続けているのか、それとも彼は完全にジョーカーなのかが本作の要である点で、端からは見分けがつかない曖昧さを表現しなければいけません。これはかなり高度な演技をしていると感じます。ホアキンの役作りのための減量も凄まじく、見ただけで怖くなるくらい痩せていて、改めて彼の役作りと名演に感服します。

ここからはあくまで私個人の解釈です。ネタバレしないように書いていますが、鑑賞後に読むことをオススメします。

映画『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』ホアキン・フェニックス

本シリーズには、ジョーカーを崇める人々が出てきます。ジョーカーことアーサーは主人公でありながら、彼は社会を映す鏡であり、ある種のスケープゴートでもあるように思います。ジョーカーを求める人達は、アーサーには興味がなく、ジョーカーをおもしろがり囃し立てながらも、自分は手を汚さずにうまく生きているような人々なのでしょう。だから、囃し立てている相手がおもしろくなくなってくれば、平気で手のひらを返してしまう。エンタテインメントという言葉がセリフに出てくる点で考えても、エンタテインメントと現実を分けられなくなった人達で溢れる現代社会、何もかも都合よくエンタテインメントとして片付けられてしまう現代社会を揶揄しているようにも思えます。

映画『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』ホアキン・フェニックス/レディー・ガガ

本作においてアーサーは社会的弱者の象徴であり、都合よく一時はヒーローとして祀り上げられたとしても、現実社会はやはり弱者を本気で助けようとはせず、まさにピエロのような存在で在り続けるしかないのかもしれません。アーサーの物語はその比喩ではないかと受け取りました。つまり、都合の良い存在であり続ける限り、他人は無責任な加担はしてきても、本当の意味で彼のような人間を救おうとはしない現実が本作には描かれています。これはオリジナルで作り上げたキャラクターではなく、もともとDCコミックスのキャラクターであるジョーカーを主人公に描いているからこそ、エンタテインメントと現実の境界が曖昧になっている点に一層説得力が増していると感じます。

デート向き映画判定

映画『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』ホアキン・フェニックス/レディー・ガガ

自分達の恋愛に置き換えて考えられるようなシチュエーションではないものの、自分達の関係に自信がない状態で観ると、どんな影響を受けるのかは未知数です。映画の物語に引っ張られる心配のない方は、鑑賞後に解釈を話したくなるストーリーなので、会話が弾むのではないでしょうか。

キッズ&ティーン向き映画判定

映画『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』ホアキン・フェニックス

観たままを楽しむというスタンスもあるとは思いつつ、とことん解釈したくなる気持ちが出てくる内容です。ある程度集中して、各キャラクターのセリフを噛み砕きながら観なければ、キョトンとしてしまう可能性もあります。上映時間が長めでじっくり観る作品に慣れてから観るほうが良いでしょう。

映画『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』ホアキン・フェニックス/レディー・ガガ

『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』
2024年10月11日より全国公開
PG-12
ワーナー・ブラザース映画
公式サイト

ムビチケ購入はこちら

© & TM DC © 2024 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved.
IMAX® is a registered trademark of IMAX Corporation. Dolby Cinema is a registered trademark of Dolby Laboratories

TEXT by Myson


関連作:

『ジョーカー』
REVIEW/デート向き映画判定/キッズ&ティーン向き映画判定 いろいろな“バットマン”の世界を観てみよう
Amazonプライムビデオで観る

「ジョーカー アルティメット・コレクターズ・エディション(2枚組/豪華封入特典付)」
2024年10月9日発売
Amazonで購入する

映画『ジョーカー アルティメット・コレクターズ・エディション(2枚組/豪華封入特典付) 』ホアキン・フェニックス

TM & © DC. Joker © 2019 Warner Bros. Entertainment Inc., Village Roadshow Films (BVI) Limited and BRON Creative USA, Corp. All rights reserved.

本ページには一部アフィリエイト広告のリンクが含まれます。
情報は2024年10月時点のものです。最新の販売状況や配信状況は各社サイトにてご確認ください。

関連記事
  • follow us in feedly
  • RSS

新着記事

映画学ゼミ2025年12月募集用 人間特有の感情や認知の探求【映画学ゼミ第3回】参加者募集!

今回は、N「湧き起こる感情はあなたの性格とどう関連しているのか」、S「わかりやすい映画、わかりにくい映画に対する快・不快」をテーマに実施します。

映画『ナイトフラワー』北川景子/森田望智 ナイトフラワー【レビュー】

『ミッドナイトスワン』で第44回日本アカデミー賞最優秀作品賞を受賞した内田英治監督が、“真夜中シリーズ”と銘打つ本作は…

映画『Fox Hunt フォックス・ハント』トニー・レオン 『Fox Hunt フォックス・ハント』一般試写会 5組10名様ご招待

映画『Fox Hunt フォックス・ハント』一般試写会 5組10名様ご招待

映画『新解釈・幕末伝』山下美月 山下美月【ギャラリー/出演作一覧】

1999年7月26日生まれ。東京都出身。

映画『もういちどみつめる』筒井真理子/髙田万作 もういちどみつめる【レビュー】

「18・19歳の厳罰化を目的とした、2022年の少年法改正に対して抱いた疑問から制作を始めました」(映画公式サイト、佐藤慶紀監督)とあるように…

映画『喝采』ジェシカ・ラング 『喝采』一般試写会 10組20名様ご招待

映画『喝采』一般試写会 10組20名様ご招待

映画『ヒックとドラゴン』メイソン・テムズ メイソン・テムズ【ギャラリー/出演作一覧】

2007年7月10日生まれ。アメリカ生まれ。

「Kodansha Studios 設立発表会見」野間省伸(株式会社講談社 代表取締役社長)、 クロエ・ジャオ(Kodansha Studios 最高クリエイティブ責任者)、 ニコラス・ゴンダ(Kodansha Studios COO) 映画業界に新風を吹かせられるか?2025新レーベル発足および官民の取組みまとめ

今回は近日発足された新レーベルと、官民の取組みについてまとめて紹介します。

映画『果てしなきスカーレット』 果てしなきスカーレット【レビュー】

細田守が原作、脚本、監督を担当した本作は、16世紀のデンマークの王女、スカーレットが主人公です。細田監督は…

映画『ブラックフォン2』イーサン・ホーク/メイソン・テムズ ブラックフォン2【レビュー】

2022年に作られたシリーズ1作目『ブラック・フォン』から4年後を描いた本作でも…

本サイト内の広告について

本サイトにはアフィリエイト広告バナーやリンクが含まれます。

おすすめ記事

映画学ゼミ2025年12月募集用 人間特有の感情や認知の探求【映画学ゼミ第3回】参加者募集!

今回は、N「湧き起こる感情はあなたの性格とどう関連しているのか」、S「わかりやすい映画、わかりにくい映画に対する快・不快」をテーマに実施します。

映画『悪党に粛清を』来日舞台挨拶、マッツ・ミケルセン 映画好きが選んだマッツ・ミケルセン人気作品ランキング

“北欧の至宝”として日本でも人気を誇るマッツ・ミケルセン。今回は、マッツ・ミケルセン出演作品(ドラマを除く)を対象に、正式部員の皆さんに投票していただきました。上位にはどんな作品がランクインしたのでしょうか?

映画『フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊』ウェス・アンダーソン監督 映画好きが選んだウェス・アンダーソン監督人気作品ランキング

今回は、ウェス・アンダーソン監督作品を対象に、正式部員の皆さんに投票していただきました。人気作品が多くあるなか、上位にランクインしたのは?

学び・メンタルヘルス

  1. 映画学ゼミ2025年12月募集用
  2. 映画『エクスペリメント』エイドリアン・ブロディ
  3. 映画学ゼミ2025年11月募集用

REVIEW

  1. 映画『ナイトフラワー』北川景子/森田望智
  2. 映画『もういちどみつめる』筒井真理子/髙田万作
  3. 映画『果てしなきスカーレット』
  4. 映画『ブラックフォン2』イーサン・ホーク/メイソン・テムズ
  5. 映画『TOKYOタクシー』倍賞千恵子/木村拓哉

PRESENT

  1. 映画『Fox Hunt フォックス・ハント』トニー・レオン
  2. 映画『喝采』ジェシカ・ラング
  3. 映画『TOKYOタクシー』オリジナルパラパラメモ
PAGE TOP