少年院にいる間に熱心なキリスト教徒になり、神父になることを夢見ていた主人公が、前科者は聖職者になれないと知りながら、ひょんなことがきっかけで神父として過ごすという物語。これだけ聞くと、朗らかな良い話に思えますが、R-18作品ということで、恐らく終始心穏やかにはいかないだろうと皆さん想像できるでしょう。本作は、ポーランドで実際に起きた事件を基に描かれていますが、それを思うと余計に胸が痛むストーリーです。
詳細は伏せておきますが、やっぱり人間は罪深いと実感させられる内容です。それは、主人公ダニエルについてというよりも人間の本質についてであり、どんなに人間が悔い改めて、神がそれを赦しても、別の人間がそれを赦さないことで、負の連鎖が続いていくということなのかもしれません。自分の傷を癒すために、人間が人間を罰して、それを都合よく神の仕業だとしてしまう。ダニエルが少年院に入る前に犯した罪は間違いなく罪であり、償わなければいけませんが、彼が神父のふりをしている間にとった行動は罪なのでしょうか。ダニエルはニセモノの神父ですが、彼の言葉や行動に嘘がないからこそ、彼は人々の心を動かしていきます。本作を観ていると、どちらの人間が“聖なる犯罪者”と言えるのかと考えさせられると同時に、何かを本気で信じてそれを実行する力の強さと、それを失った時の負の力の大きさの両方を感じずにはいられません。人を赦せない社会が何を生み出してしまうのか、ぜひ皆さんの目で確かめてください。
限られたシーンではありますが性的描写や暴力描写があり、テーマが重いので、ウキウキ過ごしたいデートには向きません。でも、語り甲斐のある内容なので、お互いの映画の好みに合っていて、議論好きなカップルなら、一緒に観るのもアリだと思います。同じ思いを共有できるだけでも、一緒に観る意味がある映画です。
世の中には、「それがルールだからダメ」ということは多々ありますが、そのルールが都合よく使われて、本来大切にすべきことをないがしろにする方向に働いている場合もあります。もちろん基本的にルールは守るものですが、それに疑問を持つことも時に必要だということを本作は教えてくれます。本作はR-18なので18歳にならないと観られませんが、若い皆さんにこそ観てもらい、考えて欲しいテーマが描かれているので、18歳になったらぜひ観てください。
『聖なる犯罪者』
2021年1月15日より全国順次公開
R-18+
ハーク
公式サイト
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