REVIEW

真実【レビュー】

  • follow us in feedly
  • RSS
映画『真実』カトリーヌ・ドヌーヴ/ジュリエット・ビノシュ/ イーサン・ホーク

これまで家族をテーマにさまざまな映画を撮ってきた是枝監督ですが、国を超えて、また違った表現で、こんなに素晴らしい作品を作られるとはお見事です。そんな本作は、人の感情、家族、親子の関係は万国共通だなと改めて感じさせる内容になっています。本作のストーリーは、国民的大女優であるファビエンヌが、「真実」という自伝本を出したことで、そこに綴られた内容を巡り、娘リュミールと母ファビエンヌが過去の真実に向き合うというもの。最初は娘の目線で観て、女優の仕事に夢中になるあまり母親業を怠ってきた母が、プライドから事実をねじ曲げて本を出版したのかと思ってしまいますが、物語が進むにつれて、まさに”真実”が明かされていき、最後にはまったく異なる親子関係が浮き彫りになります。これは女性としての生き方を問い直す内容とも言えて、改めて母であることと、一人の人間、女性として生きることの大変さを実感させられます。そして、母と娘がお互いに抱く複雑な心情をカトリーヌ・ドヌーヴとジュリエット・ビノシュが見事に演じていて、その演技力と迫力に圧倒されます。これは毒とユーモアと優しさが絶妙に詰まった作品で、一流の仕事が観られます。

デート向き映画判定

母と娘の物語なので、女性が共感するのはもちろんですが、親子という普遍的なテーマを扱っているので、男性が観ても共感できるはずです。また男性は、仕事に熱心なあまり母親として苦悩する女性のパートナーとしての目線でも観られるので、夫婦やこれから結婚しようとするカップルは、こういった作品を観て家族観を語るきっかけにするのも良さそうです。

キッズ&ティーン向き映画判定

キッズにはまだ難しい内容かも知れませんが、仕事で母が不在がちで寂しい思いをしたことのある人にとっては、身近に感じられるストーリーなので、中学生以上なら、大人の心情も想像しながら観られると思います。子どもの目線で見ている状況は、親からすると全然違ったものかも知れないという新たな視点を与えてくれる内容で、「親に愛されていないのではないか」という不安を軽減してくれるはずです。親子で観ると、普段言えないことを話し合うきっかけにもできそうです。

映画『真実』カトリーヌ・ドヌーヴ/ジュリエット・ビノシュ/イーサン・ホーク

『真実』
2019年10月11日より全国公開
ギャガ
公式サイト

©2019 3B-分福-MI MOVIES-FRANCE 3 CINEMA photo L. Champoussin © 3B-Bunbuku-Mi Movies-FR3

TEXT by Myson

関連記事
  • follow us in feedly
  • RSS

新着記事

映画『HERE 時を越えて』トム・ハンクス/ロビン・ライト HERE 時を越えて【レビュー】

映像作家としてあらゆる挑戦を行ってきたロバート・ゼメキス監督は、本作でも新たな挑戦の成果を見せてくれています…

映画『アンジェントルメン』ヘンリー・カヴィル/エイザ・ゴンザレス/アラン・リッチソン/ヘンリー・ゴールディング アンジェントルメン【レビュー】

本作は「近年機密解除された戦時中の極秘ファイルを後ろ盾にしたダミアン・ルイス著 『Churchill’s Secret Warriors: The Explosive True Story of the Special Forces Desperadoes of WWII』」を原作としており…

映画『少年と犬』高橋文哉/西野七瀬 映画レビュー&ドラマレビュー総合アクセスランキング【2025年3月】

映画レビュー&ドラマレビュー【2025年3月】のアクセスランキングを発表!

映画『BETTER MAN/ベター・マン』ジョノ・デイヴィス 社会的成功が本当の幸せをもたらすとはいえない事例【映画でSEL】

昨今、ウェルビーイングという概念が広まりつつあり、社会的な成功は必ずしも幸福をもたらすとは限らないという見方も出てきました。その背景を、「自己への気づき」(SELで向上させようとするスキルの一つ)に紐づけて考えてみます。

映画『片思い世界』広瀬すず/杉咲花/清原果耶 片思い世界【レビュー】

広瀬すず、杉咲花、清原果耶がトリプル主演を務める本作は、『花束みたいな恋をした』の脚本を手掛けた坂元裕二と、土井裕泰監督が再タッグを組んだ…

映画『神は銃弾』マイカ・モンロー マイカ・モンロー【ギャラリー/出演作一覧】

1993年5月29日生まれ。アメリカ出身。

映画『ファレル・ウィリアムス:ピース・バイ・ピース』 ファレル・ウィリアムス:ピース・バイ・ピース【レビュー】

“ハッピー”や“ゲット・ラッキー”をはじめとする大ヒット曲を多数生み出し、他のビッグ・アーティストへの楽曲提供やプロデュースでも並外れた偉業を成してきたファレル・ウィリアムスの人生が初めて映画化…

映画『ANORA アノーラ』ユーリー・ボリソフ ユーリー・ボリソフ【ギャラリー/出演作一覧】

1992年12月8日生まれ。ロシア出身。

映画『片思い世界』公開直前イベント、広瀬すず/杉咲花/清原果耶/土井裕泰監督 存在するということに対しての肯定を、ここまで実験的に描いた物語もなかなかない『片思い世界』公開イベントに広瀬すず、杉咲花、清原果耶が揃って登壇

劇場公開を目前に控え、本作でトリプル主演を務めた、広瀬すず、杉咲花、清原果耶と、土井裕泰監督が舞台挨拶に登壇しました。

映画『おいしくて泣くとき』長尾謙杜/當真あみ おいしくて泣くとき【レビュー】

タイトルを聞いただけで泣いちゃいそうな作品だと予想できるので、逆に泣かないぞと…

本サイト内の広告について

本サイトにはアフィリエイト広告バナーやリンクが含まれます。

おすすめ記事

映画『キングダム 大将軍の帰還』山﨑賢人/吉沢亮/橋本環奈/清野菜名/吉川晃司/小栗旬/大沢たかお 映画好きが選んだ2024邦画ベスト

正式部員の皆さんに2024年の邦画ベストを選んでいただきました。2024年の邦画ベストはどの作品になったのでしょうか?

映画『セトウツミ』池松壮亮/菅田将暉 映画好きが推すとっておきの映画を紹介【名作掘り起こし隊】Vol.4

このコーナーでは、映画業界を応援する活動として、埋もれた名作に再び光を当てるべく、正式部員の皆さんから寄せられた名作をご紹介していきます。

映画『オッペンハイマー』キリアン・マーフィー 映画好きが選んだ2024洋画ベスト

正式部員の皆さんに2024年の洋画ベストを選んでいただきました。2024年の洋画ベストに輝いたのはどの作品でしょうか!?

学び・メンタルヘルス

  1. 映画『BETTER MAN/ベター・マン』ジョノ・デイヴィス
  2. 【映画でSEL】森林の中で穏やかな表情で立つ女性
  3. 映画『風たちの学校』

REVIEW

  1. 映画『HERE 時を越えて』トム・ハンクス/ロビン・ライト
  2. 映画『アンジェントルメン』ヘンリー・カヴィル/エイザ・ゴンザレス/アラン・リッチソン/ヘンリー・ゴールディング
  3. 映画『少年と犬』高橋文哉/西野七瀬
  4. 映画『片思い世界』広瀬すず/杉咲花/清原果耶
  5. 映画『ファレル・ウィリアムス:ピース・バイ・ピース』

PRESENT

  1. 中国ドラマ『柳舟恋記(りゅうしゅうれんき)〜皇子とかりそめの花嫁〜』QUOカード
  2. 中国ドラマ『北月と紫晴〜流光に舞う偽りの王妃〜』オリジナルQUOカード
  3. 映画『ガール・ウィズ・ニードル』ヴィク・カーメン
PAGE TOP