REVIEW
2020年に発行され同年直木賞を受賞した、馳星周著の小説「少年と犬」は、『ラーゲリより愛を込めて』を手掛けた平野隆プロデューサーと脚本家の林民夫、瀬々敬久監督により映画化されました。物語の舞台は、大震災から半年後の宮城県仙台。失職中の和正(高橋文哉)は、やむなく裏稼業に手を染めていた時、飼い主不明のシェパード、多聞(さくら)に出会います。そこから多聞は和正と家族達の運命を変えていきます。

多聞を演じたのは、名犬さくらです。動物を起用した撮影では多くの場合、代役がいるなか、本作では最初から最後までさくらが多聞を演じたとのことです(映画公式資料)。シーンを観れば一目瞭然でさくらがいかに優秀な俳優犬だとわかるでしょう。また、日本を縦断して展開されるストーリーであることを踏まえると、さくらが全シーンを通して演じきった点は驚くべき偉業だといえます。

7篇(単行本時は6篇)の連作小説として書かれた原作を映画化した本作では、多聞が日本を縦断しながら一時的な飼い主となった人間の心を癒し、救っていきます。そんな様子を観ていると、言葉がなくても通じ合える相手がそばにいてくれるだけで、人はこんなにも心が満たされるのだなとわかります。そして、黙って寄り添う多聞の存在によって、人間の利他精神が育つ様子を観て考えさせられるところもあります。現代社会で生きづらさを感じて心がすさんでしまいそうになったら、本作を観ると優しさを少し取り戻せそうです。
デート向き映画判定

犬と人間のストーリーが軸となっているのでロマンチックなムードになるような内容ではないものの、逆に誰にでも観やすいので、デートで観るのも良いでしょう。心が温まるストーリーなので、初デートでも安心して観られます。動物を飼っている方、過去に飼ったことがある方なら、会話のきっかけにもできそうです。
キッズ&ティーン向き映画判定

さまざまな世代、境遇の人間達が犬の多聞に出会い、人生を好転させていくので、観ていて清々しい気持ちになります。タイトルを見てわかる通り、キーパーソンとなる少年も登場するので、キッズでも感情移入できるところがあります。家族で観るのも良いし、友達と観るのも良いでしょう。

『少年と犬』
2025年3月20日より全国公開
東宝
公式サイト
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©2025映画「少年と犬」製作委員会
TEXT by Myson
関連作
「少年と犬」馳星周 著/文藝春秋
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情報は2025年3月時点のものです。最新の販売状況や配信状況は各社サイトにてご確認ください。
