“ジャズ”“ソウルフル”というキーワードを聞いて、どっぷり音楽映画なのかと思いきや、そうでもなく、少なくともジャズ・ピアニストになる夢をずっと持ち続けている主人公ジョーが夢に向かって突き進む話かと思いきや、そうでもないところが、良い意味で期待を裏切ってくれます。ジョーはあることがきっかけで、ソウル(魂)達が暮らす世界に迷い込んでしまいます。その世界は、ソウル達が生まれる前に、どんな性格や興味を持つかを決める場所。そこでジョーは22番と呼ばれる手強いソウルが何か興味を見つけるのを手伝うように言われ、元の世界に戻るために、22番のメンターになることを引き受けます。でも、人間の世界に生まれたくない22番は全然興味を見つけられません。ここからのストーリーが見もので、意外な展開に、ジョーと同じく観ているこちらもいつも自分達がいる世界を違った視点で見られるようになっていきます。さらにそれだけでは終わらず、最後にジョーが気付いた大事なことが、本作が本当に伝えたいメッセージとして語られていて、鑑賞後はすごく晴れやかな気持ちになれます。私達は「やりたいことを見つけろ」「好きなことをやれ」と言われたり、逆に「夢を追うなんてやめろ」「そんなことやっても無駄だ」と言われて生きていますが、それよりももっと大事なことを忘れていると気付かせてくれるストーリーです。ある意味、同時に“現実”も突きつけてくれるので、夢から覚めると言える部分もありますが、夢から覚めても世界は素晴らしいと思えるようになるはずです。
これはデートで観ると、すごく良いと思います。本作で語られているのは、幸せになるヒントとも言えて、それは誰にでもできることです。付き合いたてはラブラブでも、ずっと交際していると「これをやってくれない」「自分ばっかり」と思えてくることもあるはず。そんなカップルこそぜひ本作を一緒に観てください。そうすると、日常で見落としていた素敵なことにたくさん気付いて、お互いに優しくなれると思います。
大人にすごく刺さる内容だとは思いつつ、キッズやティーンの皆さんが今本作で語られているような大切なことに気付いて、それを忘れずに生きていくと、全然違った生き方ができるのではと思います。ただ、そうはいっても今はまだ若い皆さんがこういう考え方をするのは難しいのもわかります。だから今1回観て、大人になってあらゆる失敗や挫折、辛い思いを経験して、またぜひもう一度観てください。そうすれば、この映画が語りかけていたことはこういうことだったのかと、一層心に響いてくるでしょう。
『ソウルフル・ワールド』
2020年12月25日17時よりディズニープラスにて独占配信開始
ディズニー&ピクサー
公式サイト
© 2020 Disney/Pixar.
TEXT by Myson