大ヒット海外ドラマ『glee/グリー』をはじめ、多くのヒット作を生んできたプロデューサー、ライアン・マーフィーが手掛けるミュージカル映画。今回ライアン・マーフィーは製作だけでなく、自ら監督を務めています。メリル・ストリープ、ジェームズ・コーデン、ニコール・キッドマン、ケリー・ワシントンといった豪華俳優が揃う作品ですが、「『ザ・プロム』っていうタイトルなのに、なぜメインキャストが大人なの?」と思う人も多いですよね。物語の序盤にもニューヨークのブロードウェイが舞台のシーンがあって、「ここからどうやって、インディアナ州エッジウォーターのお話とどう繋がるんだろう?」と思ってしまうのですが、観てみると「なるほど」といった感じ。そこにショービズ界の人間の性(さが)と人間臭さを描くことで、いろいろな意味でクセの強いキャラクター達に一気に親近感を湧かせます。だからこそ、ブロードウェイのスター達が全く別の世界に入っていっても、同じ目線でストーリーが展開することに違和感がないのだなと思えます。一方で、ミュージカルシーンはしっかりブロードウェイ感を出して豪華に仕上げてあり、メリル・ストリープ、ジェームズ・コーデン、ニコール・キッドマンの歌唱力とパフォーマンス力によって見入ってしまいます。
そして、物語が田舎の高校に移ると、『glee/グリー』を彷彿とさせる世界観が広がります。学園内のヒエラルキーが描かれているのはもちろん、今回もマイノリティの声にフォーカスしていて、そこがドラマの中核を担っています。若者達のミュージカルシーンでは、彼等が抱える心情をリアルに歌い上げたバラードや、団体で魅せる圧巻のパフォーマンスもあり、大人達に負けない見応えのあるシーンとなっています。
まさか泣ける映画とは思わず観ていましたが、ラストはウルッときます。音楽でノリノリになり、ドラマにホロッときて、最後はとても温かい気持ちになれる作品です。Netflixオリジナル映画ですが、一部劇場でも公開されるので、劇場で観られる人はぜひ大きなスクリーンで観て欲しいです。
キラキラした世界観で描かれるキュートなストーリーなので、デートで観ると2人のムードも良くなるでしょう。ラブストーリーがベースにありますが、気まずいシーンはありません。周囲の人の反発を恐れて、大事なことをカミングアウトをしておらず、こっそりと付き合っているカップルには、自分達を客観視できる内容です。そんな状況のカップルは、今後の自分達の付き合い方を相談するきっかけに観るのも良さそうです。
日本ではプロムを行う文化はありませんが、本作の高校生達を自分達に置き換えて観ることはできます。もし差別によって、皆が平等に楽しいことを経験することができなかったら、皆さんはどう思うでしょうか。何となく周囲がそう言っているからそういうものだと、自分の思慮がないまま信じ込んでいることがあるかもしれないと気付かされるストーリーです。いろいろな立場になって考えるきっかけにできるので、自分だったらどんな行動をとるか考えながら観て欲しいと思います。
『ザ・プロム』
2020年12月11日よりNetflixにて配信開始/12月4日より劇場公開
公式サイト
TEXT by Myson