一般庶民の家庭で育てられた青年、松平小四郎(神木隆之介)が、突然出自を明かされ殿様となり、借金まみれの藩を任されるというストーリー。借金額はなんと現在の価値に換算して100億円です。簡単に返せる額ではなく、いつ藩が潰れるかわからない状況で、先代藩主である一狐斎(佐藤浩市)は大名倒産するよう、小四郎に命じます。大名倒産とは、計画倒産(個人の場合でいう自己破産)のことで、本作では藩には返済能力がないので倒産して幕府に肩代わりしてもらおうという目論見が描かれています。本作は、この大名倒産を巡るさまざまな人物の奔走や企みを描いています。
金銭問題を巡るストーリーなので、描き方によっては恐ろしい世界観となるところを、本作はコミカルに描かれているので楽しく観られます。また、100億円に相当する額を返済するのか、はたまた大名倒産してしまうのかのせめぎあいがドラマチックに描かれていて、結果によっては小四郎は切腹しなければいけなくなる状況が良い緊張感も生み出しています。クライマックスで伏線が一気に繋がる瞬間も心地良いですよ。今の時代にも通じる倹約術なども描かれていて、時代劇は苦手という方にも観やすい作品です。子どもから大人まで幅広く楽しんでいただけます。
ほのかにラブストーリーの要素もありつつ、楽しく観られる作品で、どんなステージのカップルでも観やすいと思います。鑑賞後は自然にお金の話もしやすいので、感想を聞きながらお互いの金銭感覚を確かめてみるのも良さそうです。
お金の単位が今と異なるとはいえ、お金との付き合い方は今の人も昔の人も同じです。難しい計算の話はほとんど出てこないので小学校高学年以上なら充分ついていける内容です。また、お金をどうやって節約して、どうやって捻出するかというアイデアの基本は、現代の私達が観ても勉強になるところがあります。そして、何よりクスクス笑えるシーンも多いので楽しいです。友達と観ても家族と観ても楽しめます。
『大名倒産』
2023年6月23日より全国公開
松竹
公式サイト
© 2023映画『大名倒産』製作委員会
TEXT by Myson