巨大彗星が約半年後に地球に衝突するという危機を描いたストーリーですが、よくあるディザスタームービーとは一線を画しています。これは巨大彗星が地球に衝突するのをどう回避するかという話ではなく、この地球滅亡の危機を察知した天文学者が必死に政府や世の中に訴えても誰も耳を貸さない社会を映し出す物語となっている点でとてもユニークです。そして、目の前の現実から目を逸らすだけではなく、今度は権力者達が地球を救うよりも自らの利益のために暴走する様が描かれていて、地球上の至るところで起きているであろう出来事を揶揄する内容となっています。なので、扱っているテーマはとても深刻な社会問題と言えますが、そういう社会を象徴する人物達のバカさ加減を嘲笑するように、かなりブラックユーモアが効いています。一番腹立たしいキャラクターは権力者達ですが、彼等の情報操作に踊らされている一般庶民も含めて、人間の愚かな姿が浮き彫りにされています。
また本作には、レオナルド・ディカプリオ、ジェニファー・ローレンス、メリル・ストリープ、ケイト・ブランシェット、ジョナ・ヒル、マーク・ライランス、タイラー・ペリー、ティモシー・シャラメ、アリアナ・グランデ、ヒメーシュ・パテルなど豪華過ぎるキャストが顔を揃えています。主演のレオナルド・ディカプリオ、ジェニファー・ローレンスの名演を楽しめるのはもちろん、メリル・ストリープ、ジョナ・ヒル、マーク・ライランスが見事にいや〜なキャラクターを演じていて、本当に観ていて腹立たしくなってきます。ケイト・ブランシェット、タイラー・ペリーが演じる脳天気なキャスターも異様な世の中を象徴するような存在となっていてとても印象的です。さらにティモシー・シャラメが演じる若者は、絶望的な社会に生まれてしまった運命と静かに折り合いを付けているように見えて、これまた時代を象徴するキャラクターとして存在感を放っています。
どんな結末を迎えるのか最後までわからない展開となっていて、オチもとってもシュールです。いつまで経っても、何があっても人間は愚かであり、愚かだからこそ図太いのかもしれませんが、本作は「これで良いんでしょうか?」と問いかけているようにも感じます。ここで他人事と思うか、何かしら自分にも関係する物語と観るかによって、どちらの人種に属するのか分かれそうです(苦笑)。
恋愛ネタも少々入ってきますが本筋ではないので、カップルで観て気まずいことはそれほどないと思います。こういった事態に陥った時、個々の価値観がすごく出てくると思います。なので、観終わった後に感想を述べあうとある程度2人の相性が見えてくるのではないでしょうか。「この人と一緒にいて良いのかな?」と心のどこかで思っている方は、敢えてデートで観て相手の意見を聞き、自分との相性をジャッジしてみてはどうでしょうか?
15歳未満の未成年者の視聴は推奨されませんとあるので、高校生になってから観ると良いでしょう。社会問題を扱っていますが、ストーリーはシンプルなので理解に困ることはないと思います。ただ、派手なディザスタームービーではないので、その辺りは念頭に置いて観てください。巨大彗星が地球に衝突するかもしれないという状況にはなくても、映画で描かれているのと同じようなことが私達の身の回りでも起きています。あなたならどうするか考えながら観ると、今後の行動や姿勢も少し変わってくるかもしれません。
『ドント・ルック・アップ』
2021年12月24日よりNetflixにて配信中
公式サイト
TEXT by Myson