泥酔が原因で自動車事故に遭い、胸から下が麻痺するという障がいを追った、実在の人物ジョン・キャラハンの半生を描いた本作は、亡きロビン・ウィリアムズが映画化権を取得していましたが、生前に実現できず、企画があがってから20年経ってようやくガス・ヴァン・サント監督の手により、ホアキン・フェニックスを主演に迎え、映画化されました。
本作の主人公ジョン・キャラハンは、酒が原因で自動車事故に遭い、車椅子生活を余儀なくされたとはいえ、その辛さに酒に頼ることをやめられません。障がいを追った人物が苦難と闘う美談はたくさん映画化されていますが、本作はそういった作風とは異なります。車椅子生活の大変さはもちろんですが、本作ではアルコール依存症から抜け出すことがいかに難しいかということに焦点が当てられていて、決して綺麗事にしていない点で、メッセージ性をより強く感じさせています。同時に、辛い日々の中でもユーモアを忘れない強さを持つジョン・キャラハン自身の人間的魅力も存分に描かれていて、彼を応援せずにはいられません。そんなチャーミングなキャラクターをホアキン・フェニックスが好演し、他にもジャック・ブラック、ルーニー・マーラと豪華キャストが共演していて、中でもジョナ・ヒルは存在感を一際放っています。ジョン・キャラハンが描く風刺漫画もとても味があり、キャラクターの1人と言っても良い役割を果たしていますが、毒があるのに優しさを感じさせるそのストーリーは、作品の世界観にも通じていて、一見暗いストーリーになるはずのところを、ユーモアと優しさに溢れるものにしています。そういうところにも彼の人柄が垣間見えますが、最後に映る実際のジョン・キャラハンもとても男前なので、ぜひ最後まで席を立たずに観てください。
お涙頂戴という押しつけがましい演出がないので、逆に誰にでも共感しやすいと思いますが、ちょいちょいエッチなシーンが出てくるので、ウブなカップルは気まずくなる可能性がなきにしもあらずです。ただ、苦難を抜け出すにはやはり誰かの支えが必要だということを実感できる内容なので、お互いにそういう存在になりたいなと思わせられる部分はあると思います。
PG-12なので12歳未満の人でも保護者が同伴すれば観られますが、大人になってから観たほうがより感情移入して観られると思います。とはいえ、中学生以上なら、人はなぜこうなってしまうのか考えるきっかけに観てみるのも良いと思います。若いと無茶をすることもあると思いますが、反面教師的な内容も含まれるので、いろいろ客観視できると思います。
『ドント・ウォーリー』
2019年5月3日より全国順次公開
PG-12
東京テアトル
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TEXT by Myson