本作は、イギリスの国民的作家チャールズ・ディケンズの半自伝的小説「デイヴィッド・コパフィールド」を映画化。母と家政婦と3人で幸せに暮らしていたデイヴィッド少年が、母の再婚により継父に家を追い出され、貧しく苦しい日々を乗り越えようと奮闘する物語です。一難去ってまた一難といった具合に、デイヴィッドはずっと大変な苦労ばかりをしていくので、本来なら暗くて辛い話に見えてもおかしくないのですが、デイヴィッドをはじめ、それぞれのキャラクターがとても魅力的に描かれていて、悪役と善役のメリハリがあると同時に、悪役でもどこかおもしろい人間として見て、彼らからの嫌がらせも笑い飛ばすかのような雰囲気が作品全体を明るく包んでいます。また、デイヴィッドは少年の頃から周囲の人が話すおもしろい言葉を書き留めていますが、それを宝箱の中に入れて大事にしている姿も印象的に描かれています。彼は長く苦境の中にいますが、彼が集めたその言葉がいつかミラクルを起こすのかもしれないとワクワクさせられて、著者のチャールズ・ディケンズもこんな風に物語を作っていたのかなと想像が膨らみます。
そして、貧しさだけが敵というわけではなく、やっぱり人を貶めるのは人というところで、いわゆる悪役的なキャラクターが何人か出てくるのですが、そのキャラクターの中には根っから悪役というのではなく、デイヴィッドと同じように辛い人生を送ってきたなかで、野心の強さから人を陥れて這い上がろうとする人物もいたり、そういった人間描写の深さに引き込まれます。一方で人を助けるのもやはり人というところで、人間の温かさが描かれている点も本作の魅力です。最後は清々しい気持ちになれるので、人間関係にお疲れ気味の方は、視点を変えて気持ちを楽にするきっかけにぜひご覧ください。
本作にはデイヴィッドの恋愛模様も描かれていて、彼がどんな恋愛を辿るかというところに彼の成長が見えます。ロマンチックな展開や、観ていて微笑ましいシーンもありますが、後半はとても現実的な方向に進んでいくので、ラブラブで浮かれまくっているカップルが観ると、途中から「アレレレレ?」となる可能性があります(笑)。なので、ビギナーカップルよりも、お互いに恋愛で一山、二山越えてきた末に出会ったカップルのほうが共感しながら観られると思います。
デイヴィッドはとても辛い体験をしますが、ワクワクするような体験もします。そして彼は持ち前の明るさと強さでいろいろな苦難を乗り越え、たくさんの人と出会い、成長していきます。その出会いの中には良い出会いもあれば悪い出会いもありますが、生きていく上で悪い出会いを誰も避けることはできません。それでもデイヴィッドが負けずにいられるのはなぜなのか、ぜひ考えながら観てみてください。
『どん底作家の人生に幸あれ!』
2021年1月22日より全国順次公開
ギャガ
公式サイト
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TEXT by Myson