敗戦の余韻が残るドイツ、ハンブルクにある安アパートの屋根裏に住んでいたフリッツ・ホンカは、1970年から1975年の間に4人の娼婦を殺した実在の連続殺人鬼です。原作は、ハインツ・ストランク(劇中に退役軍人としても登場)の“Der Goldene Handschuh(ドイツ原題)”/(英題:“The Golden Glove”)で、1970年代の社会情勢とともに主に加害者側の視点で描いたベストセラー小説です。公式資料のファティ・アキン監督の談によると、フリッツ・ホンカは幼少時代に肉体的、精神的に虐待を受けていたようですが、監督は彼の残虐行為に弁明を求めたくないとして、彼の出自を映画の中では描いていません。なので連続殺人を犯している時点でのホンカに何が起きているのかという視点で彼の生活を覗き観ることになりますが、決して巧妙とは言えない彼の手口で被害に遭ってしまう女性達がいることが、敗戦により人々が相当困窮していた時代背景に繋がり、狂気が蔓延していた状況を想像させます。そこが、ただ連続殺人鬼の話に留まらない本作の魅力でもあると思います。
連続殺人鬼の話なので、もちろん恐ろしいシーンが多々あり、序盤から目と耳を塞ぎたくなるような場面も出てきますが、ひょうひょうと日々を過ごすフリッツ・ホンカの持つ独特のキャラクターがとても印象に残ります。ホンカは1935年生まれなので、劇中での年齢は35歳くらいですが、演じているヨナス・ダスラーはホンカの約20歳年下(1996年生まれ)でかなりのイケメンです。フリッツ・ホンカは歯はボロボロ、特徴的な斜視、曲がった鼻、ひどく猫背という容姿ですが、特殊メイクとダスラーの見事な演技でとてもリアルに体現されています。ダスラーが演じたホンカは(実際の殺人であることを考えるとこう言うと大変不謹慎ですが)時にコミカルで、でもその淡々とした様子を見た直後にゾッとさせるものがあり、やはり人間的に近づけないものを漂わせています。何層にも見える作品、皆さんはどう観るでしょうか。
デートで観てはいけません!殺人のシーンや殺害後のシーンだけでなく、性的な描写も含めて、かなり衝撃的です。デートで観ていることを忘れてしまうくらい、げんなりするでしょう(苦笑)。映画として否定しているというのでは決してありませんが、観る人を選ぶ部分はあるので、誘う相手を吟味しましょう。
R-15ですが、15歳になったからと言って、観て大丈夫とは思えないくらい刺激が強い作品です。ダークな作品もいろいろ観て、ある程度免疫を付けて、だいぶ大人になってから観るほうが良いでしょう。実在した連続殺人鬼という点でも、皆さんにとっては相当怖いと思うので、今は無理をしなくて良いと思います。
『屋根裏の殺人鬼フリッツ・ホンカ』
2020年2月14日より全国順次公開
R-15+
ビターズ・エンド
公式サイト
TEXT by Myson
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