今回は『下忍 赤い影』で忍者を演じた寛一郎さんにインタビューさせて頂きました。小さい頃から、俳優というお仕事や、映画という存在が身近にあった寛一郎さんは、映画界の未来や過去にどんな思いを持たれているのか、聞いてみました。
<PROFILE>
寛 一 郎(かんいちろう):竜 役
1996年8月16日生まれ。東京都出身。父親は俳優の佐藤浩市。瀬々敬久監督の『菊とギロチン』(2018年公開)で俳優デビュー。劇場公開順は前後するが、2017年、廣木隆一監督作『ナミヤ雑貨店の奇蹟』など話題作に続けて出演し、数々の新人賞を受賞した。その他の主な映画出演作に『心が叫びたがってるんだ。』『チワワちゃん』『君がまた走り出すとき』『雪子さんの足音』などがある。また、チェン・カイコー監督作『空海-KU-KAI-美しき王妃の謎』では、日本語吹き替え版キャストを務めた。テレビドラマでは、『ミッドナイトジャーナル』『リーガルV~元弁護士・小鳥遊翔子~』『ドロ刑-警視庁捜査三課-』などに出演。
日本の本気を見てみたい!
マイソン:
今回忍者の役を演じるにあたり、アクション監修の坂口拓さんからは何かアドバイスはありましたか?
寛一郎さん:
坂口さんは自称現代忍者なので、忍びは昔こうやっていたっていうことなどを教えてもらいました。
マイソン:
やって見せてもらったりもされたんですか?
寛一郎さん:
はい、やって見せてもらいました。見せてもらうと坂口さんって、やっぱりすごいんだなってなります。
マイソン:
さすがですね。普段から時代劇とか殺陣は観るほうですか?
寛一郎さん:
時代劇や殺陣っていうのは、あんまり観てなくて、それこそ小さい頃は“スター・ウォーズ”とかが流行っていたので、チャンバラという部類では男の子なのでカッコ良いなと思って、そこから映画が好きになっていろいろ観ていました。今回のアクションは、型にはまった静と動の動きみたいなものではなくて、どちらかというとアクロバティックな現代風のアクションだったので、そこは時代とは逆行したところにあるのかなって思います。
マイソン:
今の人が観やすいアクション映画になっていますよね。本当に忍者になれたらやりたいことってありますか?
寛一郎さん:
忍術ってどこまでできるんですかね。できるとしたら、分身の術は使ってみたいです。自分が2人いて、片方に仕事してもらって、もう片方は遊んでとか、してみたくないですか(笑)?皆が思いますよね。交代交代でって。
マイソン:
確かに!実用的なのが良いですよね。
寛一郎さん:
実用的なのが良いですね。分身の術ができたら何でもできますよね。
マイソン:
そうですよね。では、お芝居をしていておもしろいなと思う瞬間ってどんな時ですか?
寛一郎さん:
芝居がおもしろい人、良い役者さんと一緒にお芝居をする時は、おもしろいですね。刺激って言葉とはまた別なんですけど、シナジーが生まれますし、そのシナジーを僕は与えたいと思いますしね。そういう関係でお芝居ができるってことはおもしろいことだなって思います。
マイソン:
先ほどよく映画をご覧になるというお話があったんですけど、洋画と邦画だと、どちらをよく観ますか?
寛一郎さん:
どっちも観ますけど、邦画のほうが多いかも知れないです。
マイソン:
気になる俳優さんとか、映画に興味を持ったきっかけの作品とかありますか?
寛一郎さん:
よく俳優になったきっかけとかを聞かれるんですが、僕は環境柄、映画とか俳優って職業がすぐ隣にあって、映画を観る環境下にいたので、きっかけというきっかけはないんですが、映画は昔からずっと好きですね。
マイソン:
国を問わず共通してこの俳優さん良いなって思う要素はありますか?
寛一郎さん:
この人の芝居すごいなって思うのは目なんですよね。表情っていうか、何て言うんでしょう、動きとかそういう小芝居ではなくて、その俳優の中にある核みたいなもの。言語化するのがすごく難しいんですけど、それが見える時ってあるじゃないですか。例えば、今こうして話していて、「この人は嘘をついていないな」とかわかる時ってあるじゃないですか。それが感じとれる瞬間があって、僕はそれが映画の醍醐味だと思うんです。
マイソン:
セリフがない芝居でもすごく通じる時ってありますもんね。では今後やってみたいことはありますか?
寛一郎さん:
50億円くらいかけて映画を作ってみたいですね(笑)。本当に制限なく予算があって邦画を作るってなったら、どんな映画を作るんだろう、今の日本の映画界はどういう映画を作るんだろうって本当に思っていて。50億円あったらさすがにつまらない映画は作らないだろうって、どう作るのかが気になります。僕は出なくて良いので。
マイソン:
監督やプロデューサーっていう立場でもなく?
寛一郎さん:
どちらでもなく、普通に1人の観客として観てみたいです。
マイソン:
低予算で上手く作る人はいっぱいいそうですもんね。
寛一郎さん:
皆それに慣れ過ぎてしまっていて、低予算でも良い映画が作れるからそうなっちゃうんですけど、日本の本気を見てみたいですね(笑)。
マイソン:
見てみたいですね!でもどうせなら出たくないですか?
寛一郎さん:
もちろん出たいです!でもまずは作ってみて欲しいなって。
マイソン:
では今回現代風の時代劇をやってみて、今後はもっとどっぷりとした時代劇をやってみたいと思いましたか?
寛一郎さん:
1970〜80年代の邦画がおもしろ過ぎるので、どっぷり時代劇もやってみたいです。リアリティというより整合性を持たせるのって、どこか説得力が必要ですし、それは難しいけどやってみたいなって思います。
マイソン:
70〜80年代の邦画がおもしろいとのことですが、特にお好きな作品は何ですか?
寛一郎さん:
やっぱり黒澤明さんはすごいですよね。『七人の侍』とかはシビれますね。
マイソン:
身近に映画があって、既にこれまでいろいろな映画を観ていらっしゃると思うんですけど、若い方達にそういう映画も身近に感じられるオススメポイントや見どころはありますか?映画を楽しむというか、古い作品も楽しむみたいな。
寛一郎さん:
古い作品を映画好きじゃない人が観たところで、画質の違いとかに抵抗感があると思うんです。僕らはフィルムって良いなってなるんですけど。あと(昔の映画は)セリフも何を言ってるのかわかりづらかったり、1カット長回ししたところで観客はそれの何がすごいのはわからないだろうし。でも、ジブリと黒澤明監督作品は本当に世界に通用するものだと思うので、皆教科書として観て欲しいですけどね。ただ、映画は娯楽なので、好きなものを観たほうが良いと思います。
マイソン:
無理に映画を好きにならなくても、そのうちにってことですね。
寛一郎さん:
そうなんです。自分が観たいものを観れば良いんです。極論、好みですからね。イケメンが観たかったら青春キラキラものを観れば良いし。ただ観客の問題じゃなくて、全部作り手の問題です。だから僕らも頑張ります!
マイソン:
楽しみにしています!本日はありがとうございました。
2019年8月23日取材 PHOTO & TEXT by Myson
『下忍 赤い影』
2019年10月4日よりシネマート新宿ほか公開
監督:山口義高
出演:寛一郎/山口まゆ/結木滉星/中谷太郎/行平あい佳/PANTA(頭脳警察)/榊英雄/津田寛治
配給:AMGエンタテインメント
武士による統治が終わろうとしている幕末では、忍者の役目もなくなりつつあり、忍者組織の最下層“下忍”の末裔である竜は抜け忍となっていた。だがある日、江戸で暮らしていた竜は、勝海舟に素性を見抜かれ、スカウトされて密命を受ける。
© 2019「下忍」製作委員会