今回は、オーディションを受け、『轢き逃げ -最高の最悪な日-』の主演に抜擢された、中山麻聖さん、石田法嗣さんにインタビューをさせて頂きました。ネタバレ厳禁のこの作品で、それぞれに難しい役柄を演じられていますが、どんな心境だったのかなど、お聞きしました。
<PROFILE>
中山麻聖(なかやま ませい):宗方秀一 役
1988年12月25日、東京都出身。2004年に映画『機関車先生』でデビュー。2012年に映画『アノソラノアオ』、2014年にはTVドラマ『牙狼<GARO>-魔戒ノ花-』で主演を務めた。その他の主な出演作に、ドラマ『江~姫たちの戦国~』『美女と男子』『警視庁ナシゴレン課』や『べっぴんさん』SP等がある。2019年は、主演作として『轢き逃げ -最高の最悪な日-』と、『牙狼<GARO>-月虹ノ旅人-』が公開。
石田法嗣(いしだ ほうし):森田輝 役
1990年4月2日、東京都出身。子役としてデビュー。2005年に主演映画『カナリア』にて、毎日映画コンクール・スポニチグランプリ新人賞を受賞。また、同年にSPドラマ『火垂るの墓-ほたるのはか-』で主演を飾った。その後、2度の海外留学を経験。2019年は、主演作『轢き逃げ -最高の最悪な日-』の他、『空母いぶき』『スウィート・ビター・キャンディ』など4本の出演映画が公開される。
オーディションで謎の課題
マイソン:
観終わった後に複雑な心境になる映画がありますが、私にとってこの作品はそのタイプでした。鑑賞後に余韻に浸るのはもちろんなのですが、こういう映画を観た後の過ごし方って、皆どうしてるんだろうって思います。普段お2人は、こういうタイプの映画を観た後、気分転換しますか?それともどっぷり浸かりますか?
石田法嗣さん:
僕は後者ですね。結構入り込んじゃうと、ずっと引きずっていますね。
中山麻聖さん:
たぶん、そういう映画で描かれていることって、普段の生活の中でやっぱり避けたくなることとか、目をふさぎたくなるようなことじゃないですか。普段避けているからこそ、何かきっかけがないと向き合わないと思います。特に僕等みたいな演者だと、そういう機会が結構多いので、没頭して考えに考えてっていうのはありますね。
マイソン:
観ている側がそうなるってことは、演じているお2人は演じた後ってもっと落ちるものですか?
中山麻聖さん:
落ち方はどうなんでしょう。演じている時はあまりわからないんですよね。秀一として考え事をしているのか、僕個人として考え事をしているのかも境界線が曖昧で。撮影がないところで話をしている時も、普通の何でもない会話なのに、輝と話しているのか法嗣と話しているのか、区別がついていないかもしれませんね。
石田法嗣さん:
僕もこの映画の現場ではどっぷり浸かってましたね。集中が切れる時って、撮影が終わって気分転換にご飯を食べに行こうっていう時くらいで、結局その後ホテルの部屋に戻ると、台本を広げているんですよ。自分はすごくネガティブ思考なので、次のシーンをどうやって戦っていこうかなって悩んで、麻聖に電話したりして。それで現場に入って、監督に芝居の方向性とかを教えて頂いて、そこに合わせて作っていくという感じで、本当に毎日積み重ねだったよね。
中山麻聖さん:
そうだね。ずっと神戸でロケに集中できた分、どんどん気持ちが入ってしまって。例えば、今日の(気持ちの)落ち方と明日の落ち方のバランスをうまく保たなければならない時に、秀一みたいに輝と2人で一緒にいることで、自分を保てるようにしていたんだなって、今振り返ればそう思います。
マイソン:
なるほど〜。気持ちの持って行き方とか、いろいろとすごく難しかったと思うんですが、オーディションの時に、変わった課題などはありましたか?何を求められているんだろうと思った課題とか?
中山麻聖さん:
洗面所のシーンで、鏡で自分の顔を見ながらセリフを言う設定で、カメラのレンズを見ながら芝居をしてくださいっていうのがありました。そこはすごく大事なんだなって感じていました。輝に関して言葉を投げているんですけど、それは自分に対して言っていることなんだろうなっていう風に、その時すごく感じましたね。
マイソン:
石田さんは、何か思い出に残っていることはありますか?
石田法嗣さん:
未だに疑問なのが、最後にカメラに向かって手を振ってくれって言われたんですよ。あれは何だったのか、まだ聞いてなくて。
中山麻聖さん:
あった、あった!
石田法嗣さん:
ビデオ審査だったんですけど、監督に向けてなのか、何かの意図があってなのか、あの時もし手を振っていなかったらどうなっていたんだろうって思ったんです。僕は満面の笑みでやったので、受かったのかなって(笑)。
一同:
ハハハハハハ!
中山麻聖さん:
あれは謎だった。
マイソン:
真相が気になりますね!
石田法嗣さん:
答えは聞かないようにしようかな(笑)。
マイソン:
ぜひ聞いてみてください!あと、親友というのもテーマの1つでしたが、お2人にとって、理想の親友関係ってどういうものですか?
中山麻聖さん:
理想はいっぱいありますね。それこそ恋人に近い気がするんですよね。何かあったら話したくなるとかもそうですし、隠し事って言わないほうが良いこともあると思うんですけど、信用していた分、嘘に気付いた時に結構ショックが大きいので、嘘はつかれたくないなって思いますね。
石田法嗣さん:
僕は、例えば自分がすごくお腹が減っていて、あと少しで死んでしまうって時に「ご飯食べに行こう」って誘ったら、「よし、行ってやる」って理由も聞かずに来てくれる人が理想の親友ですね。相手はお腹が減っているか知らないけど、「いいよ、付き合ってやるよ」って、一緒に明石焼きを食べてくれる人が好きです。まさにこの人なんですけど。
中山麻聖さん:
俺なの(笑)!?
石田法嗣さん:
一緒に付いてきてくれたんですよ。僕は1人で行けないタイプなので、明石焼きを食べたことがなかったから、麻聖に「行かない?」って誘ったら、「いいよ、行ったことがあるから連れてってやる」って言ってっくれて。だから理想はこういう関係です。これが親友です。浅いね〜(笑)。
中山麻聖さん:
いや、良いと思うよ。そのタイミングで僕も1人が嫌だったので、ちょうど本当にすべてが合っていたんですよね。
マイソン:
お2人とも役のままという感じですね!
中山麻聖さん:
だから、会話しているとどこが境界線かわからなくなるんですよ。
マイソン:
でも相性とかも見て、お2人を主演に決められたんだなってすごく感じます。
石田法嗣さん:
でもオーディションで一度もお会いしていないんですよ。だから不思議だなと思って。
中山麻聖さん:
そうだよね、会ってないんだよね。
マイソン:
さっきお話されていた、手を振った課題で判断されたんですかね(笑)?
石田法嗣さん:
2人共、満面の笑みで手を振ってたんですかね。
中山麻聖さん:
どうやってたっけな〜(笑)。
マイソン:
ハハハハ(笑)。では最後の質問で、この作品は本当にネタバレしてはいけないストーリーですが、その上でこの映画を人に薦めようとした時、どう伝えれば良いでしょうか?
中山麻聖さん:
この作品はもちろんフィクションなのですが、逆にすごく現実味があって、誰にでも起こる可能性のある、ある意味で身近な、隣り合わせな部分を持っている作品だと思うんです。登場人物の誰もに感情移入できる部分のある作品だと思いますので、例えばまず始めに自分に一番近しいところからの目線で観ていただき、その印象を抱いたまま今度は違う役に自己投影して観たりしていただくと、映画を観終わった後にまた全く違う印象を受けると思います。ぜひいろいろな角度から観ていただきたいと思います。
石田法嗣さん:
しっかりしてるな〜!麻聖が言ったように、本当にいつ自分の身に降りかかってくるかわからないことを描いていて、轢き逃げして間違った選択をしたらどうなるのか、主人公2人の行く末や、被害者、巻き込まれた人、そういう人達が最後にどんな判断をするのかを、いろいろな人に観てもらいたいです。許すのか、許せないのか、「あなたならどうしますか?」って。上手く伝えられなくてすみません。麻聖のコメントが上手すぎて(笑)。
マイソン:
ハハハハ!ありがとうございます。
2019年4月16日取材 PHOTO & TEXT by Myson
『轢き逃げ -最高の最悪な日-』
2019年5月10日より全国公開
監督・脚本:水谷豊
出演:中山麻聖/石田法嗣/小林涼子/毎熊克哉/水谷豊/檀ふみ/岸部一徳
配給:東映
結婚式の打合せに向かう途中、車で女性を轢いてしまった宗方秀一と、助手席に乗っていた親友の森田輝は、動揺してその場を立ち去ってしまう。2人は目撃者はいないと思い、何でもなかったように日常をやり過ごすが、周囲で不可解な出来事が起こり始め…。
©2019映画「轢き逃げ」製作委員会