時代劇が大好きな高校生が、高校最後の夏休みに映画制作に挑む姿を描いた『サマーフィルムにのって』で、主人公ハダシを演じた伊藤万理華さんと、謎の青年、凛太郎を演じた金子大地さんにインタビューをさせて頂きました。お2人のお話から映画作りに対する姿勢や思い、いち映画ファンとしての熱が伝わってきました。
<PROFILE>
伊藤万理華(いとう まりか):ハダシ 役
1996年2月20日大阪府生まれ。神奈川県出身。乃木坂46の一期生メンバーとして2011年から2017 年まで活動した。同グループ卒業後は、俳優としてドラマ、映画、舞台で活躍中。主な出演作に、映画『映画 賭ケグルイ』や、テレビドラマ『潤一』、舞台“月刊「根本宗子」第17号「今、出来る、精一杯。」”、“月刊「根本宗子」第18号「もっと大いなる愛へ」”、LINE VISION“私たちも伊藤万理華ですが。”などがある。2021年は、ドラマ『夢中さ、君に。』や、舞台“DOORS”に出演し、地上波連続ドラマ『お耳に合いましたら。』では主演を飾る。また、俳優業以外では、雑誌「装苑」での連載や、PARCO展“伊藤万理華の脳内博覧会”、“HOMESICK”を開催するなど、クリエイターとしても才能を発揮している。
金子大地(かねこ だいち):凛太郎 役
1996年9月26日生まれ。北海道出身。アミューズオーディションフェス2014の俳優・モデル部門を受賞しデビュー。以降、映画、ドラマ、CMに多数出演。2018年、ドラマ『おっさんずラブ』への出演で注目を集め、2019年にはドラマ『腐女子、うっかりゲイに告る。』で初主演を飾り、第16回コンフィデンスアワード・ドラマ賞新人賞を受賞した。その他の主な映画出演作に、『逆光の頃』『ナラタージュ』『探偵はBARにいる3』『殺さない彼と死なない彼女』『君が世界のはじまり』などがあり、2021年公開の『猿楽町で会いましょう』ではW主演を飾った。9月10日には、映画『先生、私の隣に座っていただけませんか?』、12月には『私はいったい、何と闘っているのか』が公開する他、3本の作品が公開待機中。
映画というものを皆大切にして欲しい
マイソン:
本作は時代劇が物語の鍵になっていましたが、この映画に携わる前は時代劇を観ていましたか?
伊藤万理華さん:
いえ、私は馴染みがありませんでした。この映画を機に初めて触れました。何で観てこなかったんだろうと思うくらい本当に世代関係なく楽しめて、それがあんなに昔から作られているんだという驚きがありました。私自身、ハダシがどうしてこの時代劇にハマったのかというのを、観てやっと実感しました。
金子大地さん:
僕もこの作品に出ている時代劇はこの映画をきっかけに観たのですが、それまではあまり馴染みがありませんでした。こういう仕事をしているからなのか、画を見て今だったら撮れないだろうなとか、とにかくリアリティがあって、そこはやっぱりすごいなと思いました。それだからこそ今も愛される映画なんだなと強く感じました。
マイソン:
本作では、伊藤さんが演じたハダシは監督、金子さんが演じた凛太郎は俳優として、高校生なのでお金がないなかで映画を作っていましたよね。ご自身でもちょっと作ってみたいなと思ったり、撮ることのおもしろさは感じましたか?
伊藤万理華さん:
すごく感じました。この作品を撮る前から、何か自分から生み出すということをしていたほうなので。これまで映画に関してはショートフィルムなどに自分が出る側としてですが、監督とどういう風にしていきたいかを話し合ったりすることもありました。自分自身をキャストとしてだけでなく1つのチームとして見て欲しいから、協力し合って自分の意見を取り入れておもしろいと思ってくださる方と今後もそういうことをやっていきたいです。
マイソン:
金子さんはどうでしょうか?
金子大地さん:
映画は僕には撮れないですね。やっぱり熱みたいなものが本当に大切だなと思っていて、それは役者もそうだと思いますし、裏方の人も作り手の人もそうだと思います。どれだけ熱があるかで本当に作品は変わると思うので、監督は相当難しいなと。だからこそ俳優として頑張りたいと思います。
マイソン:
劇中ではキラキラムービー制作チームと時代劇制作チームがいて、とても爽やかでラストもすごく良かったなと思いました。お2人は高校生の頃、どちらにチームに近かったですか?
金子大地さん:
僕はどちらでもありませんでした(笑)。でもどちらも素敵で、何かを生み出すとか作ることはなかなか大変なので、それはすごいなと。僕はそういった欲が全くなかったので、こんな青春って良いなと思いました。
マイソン:
伊藤さんはどうですか?
伊藤万理華さん:
何かに熱中して、花鈴(甲田まひる)自身もある意味オタクというか、キラキラ映画のために本を作って書いていたりという部分で、時代劇かキラキラかではなく、どちらも一緒だと思うんです。あんまりジャンル分けはしたくないけど私もハダシや花鈴のようなタイプの人間で、それは学生の時から変わらずずっと同じです。ただ、私は勝手に好きなことをやって終わっていたから、自己満足で終わらずに自分達で仲間を集めて作ろうというのは、そういう人が近くにいたら羨ましいなとか、魅力的だなと思います。
マイソン:
人を巻き込むのは大変だけど、それをやり遂げるのは素敵ですよね。少しお話が変わりますが、今は集中して映画を観るのが苦手な方が増えて、“ながら観”をしたり早送りで映画を観る若者もいるというお話を聞くのですが、どうやったら映画に集中して観てくれるのか、お2人はどう思いますか?
金子大地さん:
おもしろい作品を残し続けることじゃないかなと思います。妥協せずに。
マイソン:
やっぱり内容で夢中にさせるものを、ということですね。
金子大地さん:
はい。僕は絶対にそういう熱って伝わるものだと思うんです。
伊藤万理華さん:
私は実際にそういう体験がありました。家ですごく眠い時に配信で何となく観てみた映画が、目が覚めるくらいおもしろかったんです。「そういうことか!」と思いました。観た時期にも寄るのかもしれませんが、何かの瞬間におもしろいって思った時には食い付いていたし、ながら観もしなかったし、おもしろすぎて何度も観てしまった作品がありました。そういうものになると良いなと思います。
マイソン:
ちなみに何の映画だったんですか?
伊藤万理華さん:
『21ジャンプストリート』です。最高でした!何回も観ています。
マイソン:
なるほど!ではこの流れでいつも皆さんにしている質問をさせて頂きますが、これまでにいち観客として影響を受けた映画や、俳優、監督がいらっしゃったら教えてください。
金子大地さん:
僕は小さい時からすごく影響されやすい性格で、何か作品を観たらモノマネをしたりしていて、小学生の時に『ロード・オブ・ザ・リング』を観た時が衝撃でした。あんなにすごい映画を2001年に作り出しているのかと。メイキングとかを観てもすごいなと思いますし、小学生ながら単純に「俳優ってカッコ良いな」と思ったのを覚えています。その他の作品もたくさんありますが、小学生の時に観た記憶って体験したかのように覚えていて、すごくファンタジーの世界に入り込んだ気持ちになれて、それが大きかったと思います。自分の中で1つ大好きだと思えた作品が『ロード・オブ・ザ・リング』でした。
伊藤万理華さん:
私は最近観た映画になりますが、今でも1番好きだと思うのは『スパイダーマン:スパイダーバース』です。
金子大地さん:
ずっと言ってるよね(笑)。観たよ!
伊藤万理華さん:
観た!?私は映画館で観たんですけど、自分の中ですごく衝撃を受けました。アニメーションとしても音楽も、それこそ全部が詰まっていて、それまでヒーローものとかマーベルに関してあまり詳しくなかったのですが、観た時に衝撃的に「好き!これは私大好きだ!!」と思いました。“スパイダーマン”シリーズは観ていたけど、全部一気に観返しました。アニメとか実写とか関係なくいろいろ観るんですけど、やっぱり「好きな映画は何ですか?」と聞かれたら『スパイダーマン:スパイダーバース』かなって。本当に好きです。
マイソン:
『スパイダーマン:スパイダーバース』の世界観が好きという感じですか?
伊藤万理華さん:
あのカラフルでぐちゃぐちゃした世界観が好きとかではなくて、あんなに情報量が多い絵なのに、何でこんなに感動するんだろうとか。“スパイダーマン”って素直に弱い人が立ち向かって自分から何者にでもなれるんだっていう話じゃないですか。観終わった後に私はスパイダーマンになれるかもしれないって思ってしまったくらい、この年齢なのにそんな風に思えたのってすごいことだなって思ったんです。それぐらい素直に勇気と元気をもらえたのがこの作品でした。
マイソン:
お話を聞いていて、お2人ともその作品を観た時にすごく没入感があったんだろうなと感じましたが、どうですか?
金子大地さん:
いくつになってもそういう風に入りこめる映画って良いよね。
伊藤万理華さん:
本当に。だから映画の力だなって思います。
マイソン:
今は映画を観られるデバイスがいろいろありますが、俳優さん的にはどうですか?映画館で観て欲しいのか、どんな観方でも良いですか?
伊藤万理華さん:
絶対に映画館です!取材だからこう言ってるわけではなく、現実的に小さな映画館がなくなってきちゃっているじゃないですか。でも、やっぱり映画館に行くと集中できるし、あの空間で観るからこそ、音響や大きな画面は家では感じとれない倍ぐらいの感動があると思っています。『サマーフィルムにのって』にも通じる部分があると思うんですけど、現実にもそういうことになってしまっている分、映画というものを皆大切にして欲しいなと思います。
マイソン:
そうですよね。金子さんはどうですか?
金子大地さん:
誰もがふらっと観られるというか、映画が身近な存在になってくれたら良いなと。『サマーフィルムにのって』は絶対におもしろいと思える作品なので、たくさんの方に観てもらいたいです。この映画には1本の映画をどれだけの熱量で作っているのかというようなところも詰まっているので、その熱を感じて欲しいです。
マイソン:
本日はありがとうございました。
2021年5月11日取材 PHOTO&TEXT by Myson
『サマーフィルムにのって』
2021年8月6日より全国公開
監督:松本壮史
出演:伊藤万理華/金子大地/河合優実/祷キララ/小日向星一/池田永吉/篠田諒/甲田まひる/ゆうたろう/篠原悠伸/板橋駿谷
配給:ハピネットファントム・スタジオ
勝新太郎をこよなく愛する高校3年生のハダシは、映画部に所属しつつも、撮るのはキラキラムービーばかりで、自分で脚本を書いた時代劇を撮る機会を持てないでいた。だがそんなある日、彼女の目の前にハダシの作品の主人公にイメージがぴったりの凛太郎が現れて…。
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