特集

映画に隠された恋愛哲学とヒント集63:「愛かお金か」のその先

  • follow us in feedly
  • RSS
映画『ソング・トゥ・ソング』ルーニー・マーラ/ライアン・ゴズリング

ネタバレ注意!

ソング・トゥ・ソング

音楽の街オースティンで、何者かになろうとしていたフェイは、音楽プロデューサーとして成功したクックと秘かに付き合いつつ、新たに出会った売れないソングライターのBVとも交際を始める。正反対の2人の間で、フェイは心が揺れ動くが…。

映画『ソング・トゥ・ソング』ルーニー・マーラ/ライアン・ゴズリング

本作は、音楽で成功することを夢見るフリーターのフェイ(ルーニー・マーラ)、売れないソングライターのBV(ライアン・ゴズリング)、成功者のクック(マイケル・ファスベンダー)の三角関係を描きつつ、クックが出会う夢を諦めたウェイトレスのロンダ(ナタリー・ポートマン)が登場することで、タイプの違う2つの恋愛の対比を映し出しています。クックは音楽プロデューサーとして成功しており、豪邸や財産、仕事に恵まれ、すべてを持っているように見えます。フェイもそんなクックに惹かれつつ、同時に彼からは本当の愛を得られないことを薄々感じているようです。そこへ、売れないソングライターのBVが現れ、フェイは彼からの愛情を受け、幸福感を得ますが、幸せになればなるほど不安になるというのが、人間の不思議なところ。BVに決めればいいものを、フェイはクックとの関係を断ち切れません。

映画『ソング・トゥ・ソング』マイケル・ファスベンダー/ナタリー・ポートマン

一方、クックはロンダと出会い、彼女と結婚し、彼女をクックの世界に引き込みます。ロンダの暮らしは質素なものから贅沢なものに変わり、彼女の母もクックの財政的な助けを得ることができ、始めは幸せそうでしたが、クックとの生活に欠けているものに気付き始めたロンダは、徐々に壊れていきます。
テレンス・マリック監督作といえば、哲学的で抽象的で難解なイメージがありますが、今作の解釈を試みると、本来人間は愛を求めるようにできているにも関わらず、資本主義社会になり、お金やモノを中心とした世界になり、愛とは別なものに惑わされるようになってしまったということを投影した物語ではないかと思います。そして、人は何者かになりたいと思って生きていて、自分を何者かにしてくれそうな人に惹かれるということも表しているように思います。情報社会となった現代は、世界が広くなったことで、多くの人の価値観に振り回されるリスクもあります。ありのままの自分で良いはずが、社会の価値観に合わせた自分になろうとしてしまう…。本作は、そんな資本主義社会に翻弄された人間が辿る末路がどんなものかを描くと同時に、本来の自分の望みに気付いた人間はやり直すことができること、そして、自分が本当になりたい自分でいさせてくれる相手を選ぶことの重要性も教えてくれます。

映画『ソング・トゥ・ソング』ルーニー・マーラ/ライアン・ゴズリング

本作は、愛かお金かという選択を説いているにとどまらず、人間がどのように生まれついているかということにも言及しているように思います。現実的に考えて、愛かお金かとなってしまえば、状況次第で選びたくても選べないということになりそうですが、それよりもっと根本のところで、なりたい自分でいさせてくれる相手かどうかで、自分にふさわしい相手かどうか考えてみてはどうでしょうか。

映画『ソング・トゥ・ソング』ルーニー・マーラ/ライアン・ゴズリング/マイケル・ファスベンダー/ナタリー・ポートマン

『ソング・トゥ・ソング』
2020年12月25日より全国公開
PG-12
公式サイト REVIEW/デート向き映画判定/キッズ&ティーン向き映画判定

© 2017 Buckeye Pictures, LLC

TEXT by Myson

関連記事
  • follow us in feedly
  • RSS

新着記事

【エンドレス・アカデミー】開校記念記者発表:下浦貴敬学院長、山口智子(スペシャルゲスト) 山口智子さんも応援!2025年4月開校【総合芸術学校エンドレス・アカデミー】下浦貴敬学院長&伊勢直弘講師インタビュー

“東京リベンジャーズ”や“ブルーロック”などを原作とした⼈気2.5次元舞台を数多く制作、プロデュースしてきた株式会社Office ENDLESSが、⻑年にわたる経験をもとに、独⾃メソッドによる教育の場として、【総合芸術学校エンドレス・アカデミー】を開校しました。この学校にはユニークなポイントが多数あります。そこで、下浦貴敬学院長と伊勢直弘講師に、学校設立のきっかけやカリキュラムへのこだわり、そのこだわりに繋がるお二人の経験について詳しくお聞きしました。 俳優の山口智子さんがスペシャルゲストとして駆けつけた開校記念記者発表の模様とともに、インタビュー内容をお届けします。

映画『終わりの鳥』ローラ・ペティクルー 終わりの鳥【レビュー】

この映画はスゴい!なんと独創的なんでしょう!…

映画『金子差入店』丸山隆平 『金子差入店』キャスト&スタッフ登壇!ジャパンプレミア 20名様ご招待

映画『金子差入店』キャスト&スタッフ登壇!ジャパンプレミア 20名様ご招待

映画『ドリーミン・ワイルド 名もなき家族のうた』ズーイー・デシャネル ズーイー・デシャネル【ギャラリー/出演作一覧】

1980年1月17日生まれ。アメリカ、カリフォルニア州生まれ。

映画『HERE 時を越えて』トム・ハンクス/ロビン・ライト HERE 時を越えて【レビュー】

映像作家としてあらゆる挑戦を行ってきたロバート・ゼメキス監督は、本作でも新たな挑戦の成果を見せてくれています…

映画『アンジェントルメン』ヘンリー・カヴィル/エイザ・ゴンザレス/アラン・リッチソン/ヘンリー・ゴールディング アンジェントルメン【レビュー】

本作は「近年機密解除された戦時中の極秘ファイルを後ろ盾にしたダミアン・ルイス著 『Churchill’s Secret Warriors: The Explosive True Story of the Special Forces Desperadoes of WWII』」を原作としており…

映画『少年と犬』高橋文哉/西野七瀬 映画レビュー&ドラマレビュー総合アクセスランキング【2025年3月】

映画レビュー&ドラマレビュー【2025年3月】のアクセスランキングを発表!

映画『BETTER MAN/ベター・マン』ジョノ・デイヴィス 社会的成功が本当の幸せをもたらすとはいえない事例【映画でSEL】

昨今、ウェルビーイングという概念が広まりつつあり、社会的な成功は必ずしも幸福をもたらすとは限らないという見方も出てきました。その背景を、「自己への気づき」(SELで向上させようとするスキルの一つ)に紐づけて考えてみます。

映画『片思い世界』広瀬すず/杉咲花/清原果耶 片思い世界【レビュー】

広瀬すず、杉咲花、清原果耶がトリプル主演を務める本作は、『花束みたいな恋をした』の脚本を手掛けた坂元裕二と、土井裕泰監督が再タッグを組んだ…

映画『神は銃弾』マイカ・モンロー マイカ・モンロー【ギャラリー/出演作一覧】

1993年5月29日生まれ。アメリカ出身。

本サイト内の広告について

本サイトにはアフィリエイト広告バナーやリンクが含まれます。

おすすめ記事

映画『キングダム 大将軍の帰還』山﨑賢人/吉沢亮/橋本環奈/清野菜名/吉川晃司/小栗旬/大沢たかお 映画好きが選んだ2024邦画ベスト

正式部員の皆さんに2024年の邦画ベストを選んでいただきました。2024年の邦画ベストはどの作品になったのでしょうか?

映画『セトウツミ』池松壮亮/菅田将暉 映画好きが推すとっておきの映画を紹介【名作掘り起こし隊】Vol.4

このコーナーでは、映画業界を応援する活動として、埋もれた名作に再び光を当てるべく、正式部員の皆さんから寄せられた名作をご紹介していきます。

映画『オッペンハイマー』キリアン・マーフィー 映画好きが選んだ2024洋画ベスト

正式部員の皆さんに2024年の洋画ベストを選んでいただきました。2024年の洋画ベストに輝いたのはどの作品でしょうか!?

学び・メンタルヘルス

  1. 映画『BETTER MAN/ベター・マン』ジョノ・デイヴィス
  2. 【映画でSEL】森林の中で穏やかな表情で立つ女性
  3. 映画『風たちの学校』

REVIEW

  1. 映画『終わりの鳥』ローラ・ペティクルー
  2. 映画『HERE 時を越えて』トム・ハンクス/ロビン・ライト
  3. 映画『アンジェントルメン』ヘンリー・カヴィル/エイザ・ゴンザレス/アラン・リッチソン/ヘンリー・ゴールディング
  4. 映画『少年と犬』高橋文哉/西野七瀬
  5. 映画『片思い世界』広瀬すず/杉咲花/清原果耶

PRESENT

  1. 映画『金子差入店』丸山隆平
  2. 中国ドラマ『柳舟恋記(りゅうしゅうれんき)〜皇子とかりそめの花嫁〜』QUOカード
  3. 中国ドラマ『北月と紫晴〜流光に舞う偽りの王妃〜』オリジナルQUOカード