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ソング・トゥ・ソング
音楽の街オースティンで、何者かになろうとしていたフェイは、音楽プロデューサーとして成功したクックと秘かに付き合いつつ、新たに出会った売れないソングライターのBVとも交際を始める。正反対の2人の間で、フェイは心が揺れ動くが…。
本作は、音楽で成功することを夢見るフリーターのフェイ(ルーニー・マーラ)、売れないソングライターのBV(ライアン・ゴズリング)、成功者のクック(マイケル・ファスベンダー)の三角関係を描きつつ、クックが出会う夢を諦めたウェイトレスのロンダ(ナタリー・ポートマン)が登場することで、タイプの違う2つの恋愛の対比を映し出しています。クックは音楽プロデューサーとして成功しており、豪邸や財産、仕事に恵まれ、すべてを持っているように見えます。フェイもそんなクックに惹かれつつ、同時に彼からは本当の愛を得られないことを薄々感じているようです。そこへ、売れないソングライターのBVが現れ、フェイは彼からの愛情を受け、幸福感を得ますが、幸せになればなるほど不安になるというのが、人間の不思議なところ。BVに決めればいいものを、フェイはクックとの関係を断ち切れません。
一方、クックはロンダと出会い、彼女と結婚し、彼女をクックの世界に引き込みます。ロンダの暮らしは質素なものから贅沢なものに変わり、彼女の母もクックの財政的な助けを得ることができ、始めは幸せそうでしたが、クックとの生活に欠けているものに気付き始めたロンダは、徐々に壊れていきます。
テレンス・マリック監督作といえば、哲学的で抽象的で難解なイメージがありますが、今作の解釈を試みると、本来人間は愛を求めるようにできているにも関わらず、資本主義社会になり、お金やモノを中心とした世界になり、愛とは別なものに惑わされるようになってしまったということを投影した物語ではないかと思います。そして、人は何者かになりたいと思って生きていて、自分を何者かにしてくれそうな人に惹かれるということも表しているように思います。情報社会となった現代は、世界が広くなったことで、多くの人の価値観に振り回されるリスクもあります。ありのままの自分で良いはずが、社会の価値観に合わせた自分になろうとしてしまう…。本作は、そんな資本主義社会に翻弄された人間が辿る末路がどんなものかを描くと同時に、本来の自分の望みに気付いた人間はやり直すことができること、そして、自分が本当になりたい自分でいさせてくれる相手を選ぶことの重要性も教えてくれます。
本作は、愛かお金かという選択を説いているにとどまらず、人間がどのように生まれついているかということにも言及しているように思います。現実的に考えて、愛かお金かとなってしまえば、状況次第で選びたくても選べないということになりそうですが、それよりもっと根本のところで、なりたい自分でいさせてくれる相手かどうかで、自分にふさわしい相手かどうか考えてみてはどうでしょうか。
『ソング・トゥ・ソング』
2020年12月25日より全国公開
PG-12
公式サイト REVIEW/デート向き映画判定/キッズ&ティーン向き映画判定
© 2017 Buckeye Pictures, LLC
TEXT by Myson