“赤ちゃんポスト”をきっかけに出会った、赤ん坊の母親、ベイビー・ブローカーの男達、そして彼らを現行犯逮しようと静かに追いかける刑事らが絡み合いながら繰り広げる一風変わった旅路を描いた是枝裕和監督の最新作 『ベイビー・ブローカー』が、2022年6月24日より全国公開となります。先日、5月10日(火)に本作の撮影が行われた韓国にて制作報告会が開催され、主演のソン・ガンホ、カン・ドンウォン、イ・ジウン(IU)、イ・ジュヨンといった豪華キャスト陣、さらに日本からリモートで是枝裕和監督も参加しました。
マスコミ陣から大きな拍手とフラッシュの嵐とともに出迎えられた面々。まず、ベイビー・ブローカーのサンヒョンを演じたソン・ガンホは、「個人的に3年ぶりのこういう場で、是枝監督の新作と共にご挨拶でき嬉しいです。ありがとうございます」と挨拶。そして、日本からリモートでイベントに参加した是枝裕和監督もモニター越しに「長年の夢が叶い、映画が完成してこの日を迎えられたことを嬉しく思います」とコメントしました。
本作の企画の始まりについて問われた是枝監督は、「ペ・ドゥナさんは一度映画をご一緒させていただきましたし、ソン・ガンホさんとカン・ドンウォンさんは映画祭でお会いさせていただいたり、日本へ新作のPRイベントで来日された際に上映に花束を持って参加させていただいたりというような交流をさせていただいており、“いつか映画でご一緒しましょう”という漠然とした言葉を交わしていました。2016年頃にふと思いついたプロットがありまして、これなら自分の頭の中にいる韓国の役者の方々と一緒に映画が作れるのではないかという思いつきがきっかけでした。神父の格好をしたソン・ガンホさんが赤ん坊を抱き上げて、すごく良い人に見えるんだけど実は…、そんな1シーンが最初に思い浮かびました」と明かしました。さらに、ソン・ガンホについて「演じる人物像の中に善悪の両方が入っていて、それがシーンやセリフによって微妙に入れ替わる。色が単色ではない人物描写というのが、とても深くて見事で本当に素晴らしいと思って拝見していました。今回のサンヒョンの役も、悪人なのか善人なのか、観ている人達が探っていけるような、そういう人物描写にしたいと思いました」と語りました。
ソン・ガンホは是枝監督からオファーがあった当時のことを尋ねられ、「正確な年度は覚えてないですが、6、7年前に釜山映画祭で初めてミーティングをしました。昔から是枝監督の作品世界のファンでしたし、尊敬する芸術家ですので、とても光栄でした。先入観かもしれませんが、監督の映画を観ていると、冷たい話の中に温かいヒューマニズムが描かれて終わる印象でしたが、この作品を経験したら、監督の冷徹な現実直視により、温かいストーリーの中でも冷静な視線で社会を俯瞰している感じがしてとても感動しました。新しい挑戦でもあり、ワクワクする作業でした」と話しました。
そして、サンヒョンを演じるにあたってのこだわりについて、「カン・ドンウォンよりもっとカッコ良く映りたいなと思いました(笑)。劇中ではちょっとカッコよく撮れたと思ったんですけど、今日の彼の衣装を見て、そういう期待はやめることにしました(笑)」と会場の笑いを誘いました。そんなカン・ドンウォンとの共演については、「12年前の『義兄弟』で実の兄弟のように演技の相性が良いと感じたので、今回も自然に演じることができました。末っ子の弟と共演する感じで、分析的ではなく本能的なケミストリーを作れたと思います」とコメントすると、カン・ドンウォンが「個人的には12年前よりももっと相性が良かったと思います。私もだいぶ成長しましたし(笑)。私も年を取ったので会話ももっとスムーズにできました」と明かし、ソン・ガンホが「成長しましたね。背も伸びたし(笑)」とジョークを飛ばしました。
カン・ドンウォンは是枝監督との出会いについて、「私も6、7年前に東京で監督に初めて会いました。その後、映画化されるまでかなり時間がかかったのですが、やっと去年撮影をすることになり、こうして公開を控えていて感慨深いです」と振り返りました。続いて、ドンスというキャラクターについて問われると、「ドンスは少し頑固な面があるんです。ドンス自身が児童養護施設で育ち、使命感を持って子どもを養子縁組させる人物で、子どもは児童養護施設で育つより家庭で育ったほうが良いという考えを持ってる人物です。実際、児童養護施設を何度か訪ねて、そこの出身の方々とお話をして、その気持ちを演技に込めようと努力しました。その会話で感じた感情とその方々の悲しみを表現しようとしました」と役作りについて明かしました。
本作が劇場公開映画への初出演となるイ・ジウン(IU)は、「もらったシナリオを読む前に、短編映画の撮影で共演したことのあるペ・ドゥナさんに電話をしたんです。そしたら“とてもハマり役だ”と言ってくれたんです。好きな先輩からそう言われて、私も確信を持って台本を読んだ覚えがあります」と明かしました。今回演じた役については、「母親役は初めてなので、子どもの抱き方や遊んであげるときの振る舞いなど、小さな習慣を自然に見せようとしました。外見的にもあまりやったことがなかったスモーキーメイクやブリーチヘアなど、メイクチームからアイデアをもらいながら役作りをしました」と語りました。
シナリオを読んだときに涙を流したというイ・ジュヨンは、「ネタバレにならない範囲で言いますと、登場人物達がお互いの心を理解しながら会話するシーンがありますが、ソヨンがあの3人に言ってあげる言葉があるんです。その言葉をじっくり考えたら、とても心に響きました。人物達の感情をきちんと積み上げていくシナリオでした。監督の作品がとても好きで、この映画の中に自分が存在できて光栄です。そして、とても楽しくお仕事ができました」と話しました。さらに、ペ・ドゥナと共に挑んだ刑事役について、「映画に登場する刑事ってステレオタイプを思い浮かべますが、是枝監督の描く人物には、皆発見されていない人間性があると感じました。イ刑事がサンヒョン達を追う時も捜査目的ではなくて、ソヨンが赤ちゃんを捨てなければならなかった事情を知りたがったり、理解してあげたいという感情がありました。そのような部分をもっと引っ張り出そうとしてくれました。ペ・ドゥナさんとは車内シーンが多かったのですが、とても上手にリードしてくれました。漫才コンビのような愉快な雰囲気が出せるように2人でたくさん話しました」と撮影を振り返りました。
また、イベントでは是枝監督が撮影中にスタッフに書いたという手紙の写真がスクリーンに映し出される場面もありました。手紙を書いた経緯について尋ねられた是枝監督は、「言葉が通じない関係なので、撮影が進んでいく中で感じたことなどをできるだけ文字にして伝えていくことで、自分が何を感じているのか、悩んでいることも含めて共有したほうが良いなと思ったので、このような形でスタッフやキャストの皆さんにお手紙を渡しました」と明かしました。最後に監督は、「本当にここに並んでいただいている方、ペ・ドゥナさんも含めて韓国映画界の宝物のような役者さん達と、韓国映画界を代表するスタッフの方達に集まっていただいて、自分自身も納得ができる大好きな作品になりました。そして、カンヌ国際映画祭でのお披露目という素晴らしいスタートを切ることができ、この後韓国での公開を控えて、映画ファンの方に作品を届けられることを本当に嬉しく心待ちにしています。公開時期にはオンラインではなく、韓国にお伺いして直接この映画を届けられたらと思いますので、楽しみに映画の公開を待っていてください。ありがとうございました」と挨拶しました。
キャスト同士の和気あいあいとした雰囲気や監督との信頼関係も伝わってくるイベントでしたね。本編ではどんな化学反応が観られるのか、とても楽しみです!
『ベイビー・ブローカー』
2022年6月24日より全国公開
ギャガ
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