今年で第36回目となる東京国際映画祭が、10月23日(月)~11月1日(水)に日比谷、有楽町、丸の内、銀座地区にて開催されました。今回はその様子をダイジェストでご紹介します。
レッドカーペット&オープニングセレモニー
今年はコロナ禍による制限緩和により、総勢2000名に及ぶ多くの海外ゲストが招かれました。東京ミッドタウン日比谷のステップ広場から日比谷仲通りにかけて敷かれたレッドカーペットには、国内外から205名の豪華ゲストが集結し、国内外のマスコミと観客計510名による熱気に包まれ、大いに盛り上がりました。
フェスティバル・ナビゲーターの安藤桃子と父の奥田瑛二、ポスタービジュアルの監修を担当したコシノジュンコが登場しました。さらに、クロージング作品『ゴジラ-1.0』の山崎貴監督、神木隆之介、浜辺美波ほか、豪華俳優&スタッフがレッドカーペットを彩りました。
今年度の特別功労賞受賞者であるチャン・イーモウ監督が登壇し、表彰も執り行われました。
チャン・イーモウ監督コメント:
思い出しますと36年前、東京国際映画祭が始まったばかりの時に私は東京にやって来まして、ここで主演男優賞を受賞しましたが、その時はまだ映画監督ではありませんでした。その後、18年経ち、審査委員長を務めました。そして再び、18年が経ちまして今日ここに立ってこの賞を受賞いたしました。光陰矢の如き、本当に時間が立つのは早いもので、あっという間に36年間が過ぎてしまいました。私は再び東京に戻って来まして、新しいスタートとして仕事をして参りたいと思 います。私のことを評価してくださって心から感謝したいと思います。これからも一生懸命頑張って、良い作品をたくさん撮って、良い作品を携えてまたお会いしたいと思います。
『PERFECT DAYS』オープニング上映舞台挨拶
日程:10月23日(月)
登壇者:ヴィム・ヴェンダース監督、役所広司、柄本時生、中野有紗、アオイヤマダ、麻生祐未、石川さゆり、田中泯、三浦友和、高崎卓馬(共同脚本、プロデュース)、柳井康治(製作)
Q:本作を製作したきっかけについて
ヴィム・ヴェンダース監督:
本当に素晴らしい場所があるということでお誘いいただきました。日本の建築士の方々が作ったトイレですね。素晴らしいものを作っているというところからインスピレーションを受けまして、当初映像を何か作ることを考えてはいたのですが、見たことがないものを目にして、こういうものであれば物語で語ったほうがいいのではないかというところからこの映画の製作が始まりました。誰よりも尊敬する憧れの役所広司さんと仕事ができるということで、私はとてもプレッシャーを感じました。
Q:トイレの清掃員、平山役について
役所広司:
平山という男について、ヴェンダース監督はいつも「ああ、平山みたいに生きたいな。平山みたいな生き方が羨ましいな」とおっしゃっていました。僕もそういう人物を目指せばいいのかという風に撮影中ずっと思っていました。自分は都会の中で生きている男ですが、平山は 他の人達とは違うゆったりとした時間と、森の中で静かに呼吸しながら生きているような人物だなと思いました。
『PERFECT DAYS』
2023年12月22日より全国公開
ビターズ・エンド
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© 2023 MASTER MIND Ltd.
『ポトフ 美食家と料理人』Q&A
日程:10月24日(火)
登壇者:トラン・アン・ユン監督、ブノワ・マジメル、トラン・ヌー・イェン・ケー(アートディレクション/衣装)
Q:本作で料理を題材にしたのはなぜ?
トラン・アン・ユン監督:
実は原作“The Life and Passion of Dodin Bouffant, Gourmet(英題)”に出会ったのが最初でした。登場人物が食べ物、料理について語るシーンが素晴らしかったので、それを映画にできないかなと思ったのがきっかけだったのですが、そんななか原作を離れて僕自身が入れたかったのが、⻑く続いているカップルの関係です。上手くいっている夫婦関係を描くのって難しいんですよ。それはちょっとした挑戦でした。
Q:食を追求し、芸術にまで高めた美食家のドダン役について
ブノワ・マジメル:
僕自身は実生活でも料理を作るタイプです。好きな女性であったり、友人など、誰かのために料理をつくるというのは、一種の愛の告白だと思います。とはいえ、僕自身はドダンのようなアーティストというわけではないので、料理をする動作に心をこめようと思いました。そうすると直感的に、とても自然な形で撮影に臨むことができました。しかもまわりを囲むのは、本当に才能あふれるスタッフばかりだったので、自分としては意外にシンプルに演じることができました。皆さんがご覧になった冒頭の料理のシーンは、本当に素晴らしかったですよね。トラン監督が振付師のように振り付けをしてくれて、素晴らしいリズム感が生み出されたわけです。これは皆で作り上げた共同作業だったわけです。
Q:料理のシーンに音楽を使わなかったのはなぜ?
トラン・アン・ユン監督:
皆さんが料理をする時には、下ごしらえや調理などたくさんの仕草がありますよね。そこで奏でられる料理の音というのは、とても豊かなサウンドだと思うんです。でもそこに音楽をつけるとそういう音を排除することになってしまう。だから編集の時に、そうした料理の音を聞いていると、それがまるで伴奏であるかのような音楽であることに気付いたので、そこでの音楽は排除することにしました。それにしても愛の物語なのに、音楽がない映画ってレアですよね(笑)。
Q:日本の観客に向けてメッセージ
トラン・アン・ユン監督:
この映画は愛する喜び、食べる喜びが満載の映画です。ですから日本の観客の皆さんに、そうした喜びを再確認していただければと思います。
『ポトフ 美食家と料理人』
2023年12月15日より全国公開
ギャガ
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©2023 CURIOSA FILMS ー GAUMONT ー FRANCE 2 CINEMA
『正欲』ワールドプレミア舞台挨拶
日程:10月25日(水)
登壇者:稲垣吾郎、新垣結衣、磯村勇斗、佐藤寛太、東野絢香、岸善幸監督
Q:桐生夏月役を演じた新垣結衣について
稲垣吾郎:
今まで抱いてきた新垣さんのイメージが覆されたというか、思い描く印象とまったく違っていて、最初に現場で会った時は本当にびっくりしました。皆さんも観たらびっくりすると思いますよ!
Q:出演の決め手と寺井啓喜役の稲垣吾郎について
新垣結衣:
お話をいただいて企画書を読ませていただいた時にすごく心惹かれるものがあり、岸監督とも直接お話をさせていただいて、同じ方向を向いて作品に挑めるという意思疎通ができて、ぜひよろしくお願いしますというスタートでした。稲垣さんについては、ご一緒したシーンがとてもシリアスで重要なシーンだったので、そういう時間を共に過ごして、1つのシーンを一緒に作り上げることに力を尽くすことができたのはとても光栄でした。
Q:朝井リョウによる原作について
岸善幸監督:
世界には“大多数”と呼ばれる人達がいて、一方でそのカテゴリに入らない方々が存在している。“マイノリティの中のマイノリティ”が存在しています。その存在をすごく丁寧に、今この世界でどう生きているかを描いています。衝撃でしたし、目から鱗が落ちる作品でした。
Q:映画を楽しみに待つファンへメッセージ
稲垣吾郎:
この映画は、改めて人それぞれの個性を認め合うことの大切さ、そういものを発見することの喜びを感じていただける作品だと思います。素晴らしい俳優の皆さんが演じている登場人物達を観ていると、息が苦しくなるようなとても切ない物語ではありますが、最後は深い感動を皆さんに お届けできる素晴らしい作品に仕上がっていると思います。
『正欲』
2023年11月10日より全国公開
ビターズ・エンド
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REVIEW/デート向き映画判定キッズ&ティーン向き映画判定
©2021 朝井リョウ/新潮社 ©2023「正欲」製作委員会
映画『ナックルガール』ワールドプレミア
日程:10月25日(水)
登壇者:三吉彩花、前田公輝、窪塚洋介、チャン監督
Q:日韓共同制作であり世界配信される本作の主役に選ばれた時の印象は?
三吉彩花:
最初にチャン監督にお会いした時、橘蘭として私がどうこの作品をかき回し引っ張っていけるかと不安と緊張がありましたが、無事にオファーをいただいて嬉しかったですし、世界配信ということでたくさんの方に観ていただける作品なので緊張もありながら気合いも入りました。
Q:アクションシーンについて
三吉彩花:
今思い返してもよくあんなに半年間も皆で過酷なトレーニングをやりきれたなと感無量です。私はこの作品でボクシングに初めて触れて、ボクシングの基礎練習を行いました。日本と韓国のアクションチームのトレーナーさんが教えてくださり、前田くんをはじめ、キャストと一緒に1日5、6時間練習をして、毎日通うなかでチームワークも生まれました。皆さんはこれから映画を観ていただくと思いますが、その努力が表れていれば嬉しいです。
Q:巨大な犯罪組織のボス白石役と監督の印象について
窪塚洋介:
原作ものということですが、ほぼオリジナルなんじゃないかという脚本に仕上がっていると思いました。原作に登場しない役でオファーをいただき嬉しかったのと、日本と韓国の合作でどういうものが出来上がるんだろうというワクワク感が大きくぜひ参加したいと素直に思いました。監督がとてもチャーミング で、監督は現場ではビシッとしていますが、ご飯を食べに行くと、言葉の壁を越えた溢れんばかりのチャーミングさを見せてくれて、今もとてもいい関係が続いています。仲良くなっていただけて嬉しいです。
『ナックルガール』
2023年11月2日よりAmazon Prime Videoにて配信開始
Amazonプライムビデオで観る
© 2023 Amazon Content Services LLC or its Affiliates
『駒田蒸留所へようこそ』舞台挨拶付き特別上映
日程:10月28日(土)
登壇者:早見沙織、小野賢章、内田真礼、吉原正行監督
Q:ウイスキーを題材に選んだ理由について
吉原正行監督:
若者のビフォーアフターの作品を作りたいということで、どういう設定がわかりやすいかを考えて、蒸留所を舞台にしました。ウイスキーは成果物が出るために3年、良いものだと10年以上かかります。働いた成果が出るのに時間がかかるので、そこに向き合うためのモチベーションとして良い題材だと思いました。
Q:印象に残ったシーンについて
早見沙織:
1つ目は、琉生が社⻑を務める蒸留所の取材へ来た高橋さんとのやり取りです。2人の関係はあることをきっかけに大きく動くことになるのですが、そこにウイスキーも絡んでくるんです。もう1つは家族の絆を表すようなウイスキーを作るための奮闘。そのなかでの母とのやり取りはとても胸を打ちますので、楽しみにしていただきたいです。
小野賢章:
光太郎はこれまで何となく生きてきた仕事に熱が入らないような⻘年で、それをよく表しているのが友人に「仕事をやめようかな」と漏らすシーン。仕事のちょっとしたミスで「この仕事向いていないかも」と愚痴をこぼすのですが、居酒屋で聞いたことがあるようなリアルさがあります(笑)。僕はあまり感じたことがありませんが、皆さんには共感してもらえるかもしれません。
内田真礼:
朋子はとてもよく怒ります(笑)。そして、琉生との友情を感じるシーンが見どころです。会社を守ろうとする熱意があって、そこを感じていただきたいです。
Q:P.A.WORKSでの新人育成について
吉原正行監督:
かれこれ20 年くらい育成しています。最近は「絵を描きたい」という動機以外で入社を希望する方もいたり、毎年たくさんのことが起こります。彼らの芽が出てくるためにはウイスキーと同じで3年はかかると思うので「こういう成果が出るんだよ」ということを作品でも出せたらと思いました。
『駒田蒸留所へようこそ』
2023年11月10日より全国公開
ギャガ
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©2023 KOMA 復活を願う会/DMM.com
『怪物の木こり』ジャパンプレミア
日程:10月31日(火)
登壇者:亀梨和也、菜々緒、吉岡里帆、染谷将太、中村獅童、三池崇史監督、怪物の木こり
Q:各キャストとの共演について
亀梨和也:
菜々緒さんとの共演は、撮影前から安心感がありました。現場でも阿吽の呼吸でお芝居を構築できたので、楽しかったです。中村さんについては、今回共演するのは初めてですが、プライベートでは、たくさん時間を過ごさせていただいているので、獅童さんはお兄さんというか。獅童さんの役としての凄みで引っぱっていってもらいました。
菜々緒:
亀梨さんは、本当に多彩な方。どこまで進化するんだろうかと。亀梨さんのハマリ役を楽しんでいただきたいです。吉岡さんは、すごくやわらかい印象でしたが、お芝居になると芯の強さを感じる。染谷さんはとにかく羨ましい!お芝居もさらっとやられているのに存在感がありました。
Q:撮影中のエピソード
吉岡里帆:
私は撮影初日に猿ぐつわが用意されていて、それを付けていたら監督にげらげら笑われて(笑)。原作者の方もいらっしゃったのに、私はずっと猿ぐつわで、すごく恥ずかしい初日でドキドキしました。
三池崇史監督:
現場もずっとこんな感じでした。個人の想いをそれぞれ持って役に向き合っていただきました。獅童さんだけはフラットでしたけど (笑)。
Q:これから本作をご覧になる方へメッセージ
亀梨和也:
とにかくまず皆さんが最初に感じたものを大事に観ていただきたいです。バイオレンスが苦手な方も、監督がすごく綺麗に撮っているのでその奥にあるメッセージを感じて、何回も観てもらえると違った景色が見えると思います。まずはピュアな気持ちで楽しんでください!
『怪物の木こり』
2023年12月1日より全国公開
PG-12
ワーナー・ブラザース映画
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©2023「怪物の木こり」製作委員会
その他にも豪華ゲスト登壇のイベント多数開催!
ワールド・フォーカス部門で映画『2046』が上映され、上映後に「トニー・レオンのマスタークラス」が開催され、トニー・レオンが登壇しました。
会期中に小津安二郎生誕120年記念シンポジウム“SHOULDERS OF GIANTS ”が行われました。『お早よう デジタル修復版』(1959)が上映され、上映後には、黒沢清、ジャ・ジャンクー、ケリー・ライカートら世界で活躍する映画監督が登壇し、小津作品をめぐるトークセッションを行いました。
クロージングセレモニー
東京国際映画祭は、11月1日(水)に閉幕を迎え、TOHOシネマズ日比谷スクリーン12 にてクロージングセレモニーと東京日比谷ミッドタウン BASE Q HALL にてコンペティション作品審査委員&受賞者記者会見が行われました。
東京グランプリは『雪豹』が受賞!
セレモニーでは、各部門における審査委員からの受賞作品の発表が行われました。
第36回東京国際映画祭 各賞受賞作品・受賞者
【コンペティション部門】
東京グランプリ/東京都知事賞『雪豹』(中国)
審査員特別賞『タタミ』(ジョージア/アメリカ)
最優秀監督賞岸善幸(『正欲』、日本)
最優秀女優賞ザル・アミール(『タタミ』、ジョージア/アメリカ)
最優秀男優賞ヤスナ・ミルターマスブ(『ロクサナ』、イラン)
最優秀芸術貢献賞『ロングショット』(中国)
観客賞『正欲』(日本)
【アジアの未来】
作品賞『マリア』(イラン)
【Amazon Prime Video】
テイクワン賞『Gone with the wind』 ヤン・リーピン(楊礼平)
審査委員特別賞『ビー・プリペアード』 安村栄美
【エシカル・フィルム賞】
『20000種のハチ(仮題)』
【黒澤明賞】
グー・シャオガン、モーリー・スリヤ
【特別功労賞】
チャン・イーモウ
最優秀監督賞と観客賞で『正欲』が2冠、最優秀女優賞と審査員特別賞で『タタミ』が2冠を受賞となり、【東京グランプリ/東京都知事賞】には『雪豹』が選出され、審査委員長のヴィム・ヴェンダースよりトロフィーが授与、小池百合子東京都知事に代わり産業労働局次長の松本明子より麒麟像の授与が行われました。最後に安藤チェアマンによる閉会宣言により第36回東京国際映画祭は幕を閉じました。
今年も盛りだくさんでしたね。豪華なゲストが一堂に会すレッドカーペットは映画祭の醍醐味ですよね。来年もさらにパワーアップした映画祭に期待しましょう!
【第36回東京国際映画祭】
開催期間:2023年10月23日(月)~11月1日(水)
会場:日比谷、有楽町、丸の内、銀座地区
公式サイト
©2023 TIFF