よく「旬の食材を食べよう!」と聞きますが、それはなぜなのでしょうか?「美味しいから」「健康のため」などの理由が挙げられると思いますが、実は他にもさまざまな利点があります。そこで今回は、旬の食材を食べるメリットについて紹介します。
旬の食材は栄養価が高くて価格も安い
今日の日本では、ハウス栽培や海外からの輸入によりほとんどの食材を1年中手軽に購入することができます。しかし、昔はシーズンごとに収穫できる作物が限られていたため、最盛期を“旬”と呼び大切にしてきました。自然の恵みを存分に受けて育った作物は、栄養価も高く、美味しいのが特徴です。ある調査研究によると、野菜の季節ごとの栄養価、特にビタミンAの元となるカロテンとビタミンCの含有量は、季節ごとに大きく変動し、ほとんどの野菜で旬の時期に最も栄養価が高いことがわかりました。例えば、夏が旬のトマトに含まれるカロテンの量が最も多かったのは7月で、1番少なかった11月の2.9倍、冬が旬のほうれん草に含まれるビタミンCは12月が最も多く、1番少ない9月の4.9倍もあります。
また、旬の時期には大量の生産が可能なため、価格が安いというメリットもあります。つまり、栄養価の高い作物を価格も安くお得に購入することができるのです。
環境保護のためにも旬の食材を食べることが重要
通年出回っている野菜類は、旬以外はハウス栽培されることが多く、冬でも室内を加温して育てるため、電気やガスなどのエネルギーを大量に消費して作られています。農産物の生産エネルギーの大半は石油なので、ハウスを加温するために石油が燃焼されると、地球温暖化の原因となる二酸化炭素をはじめ、酸性雨の原因となる物質も排出されます。また、旬以外の野菜や果物には、成長を早めるために化成肥料を多く使ったり、殺虫剤などの農薬を必要以上に使うケースも多くあります。魚介類についても、成長を早めるために自然界では食べることのない人口飼料を使って育てられています。
つまり、旬以外の食材は、環境に大きな負荷を与えながら作られ、本来ないものが含まれている恐れもあるのです。一方、旬に採れる食材は、自然の営みに従って育てられるので、農薬などの薬品や人工肥料、人工飼料の使用を必要最低限に抑えることができます。また、現在使用されている農薬の多くは、太陽光下で減少するため、露地栽培の作物の多くは残留農薬がさらに少なくなります。このように旬の食材を食べることは、環境に優しく、安全性の面でも優れていることがわかります。
消費者が食材に関する知識を持ち、本来の味や栄養、環境や安全性を考えて選ぶようになることは、とても大切なことです。皆さんの意識が少しずつ変化することで、将来的には季節はずれの食材が売れなくなり、スーパーでも旬の食材中心の陳列に変わっていくかも知れません。そのためにも日本の食材の旬を再認識し、それぞれの季節に適したものを食べるよう心掛けてみましょう!
夏に食べたい旬の野菜
夏が旬の野菜には、体を冷ます効果のあるものや、暑さで奪われやすいビタミンCが豊富なものが多くあります。ここでは代表的な夏野菜の栄養素と効果の一部をご紹介します。
■オクラ
食物繊維が豊富で、細胞と細胞を繋ぐ保水力で胃の粘膜を保護します。また、ネバネバが持つ適度なとろみは、のどごしをよくし、食欲を促すことで、夏バテ回復の効果も期待できます。その他にもカロテンやビタミンB1、ビタミンC、カルシウム、鉄などもバランスよく含まれています。
■カボチャ
黄色い部分にはカロテノイド(色素成分)が豊富で、この中のβ-カロテンの一部はビタミンAに変わり、肌や粘膜を丈夫にしてくれます。残ったカロテンは細胞が酸化されるのを防ぐ、抗酸化作用が強いので、老化や発がん予防する効果が期待されます。また、体を丈夫にし、風邪の予防にもなるビタミンCやビタミンEも多く含まれています。
■きゅうり
95%が水分のため、高い栄養価は期待できませんが、利尿作用が高い野菜として認められているため、水太りやむくみ解消に役立ちます。また、体を冷やす効果があるため、暑気払いに最適です。
■トマト
赤い色はリコピンと言われるもので、赤ければ赤いほどリコピンが豊富な証拠です。このリコピンには抗酸化作用があり、がんや動脈硬化、老化の防止にも効果的な成分です。また、甘さだけでなく爽やかな酸味があるため、胃液の分泌を促して、消化を助ける効果もあります。
■なす
なすの皮にはナスニンという成分が含まれています。ナスニンには、コレステロールの低下や活性酸素の発生を抑える働きがあるため、動脈硬化などの生活習慣病の予防が期待されています。同じく皮の部分にはアルカロイドというがん細胞の増殖を抑える成分も多く含まれています。また、きゅうりと同様に体を冷やす効果もあります。
上記以外にも夏が旬の野菜には、ピーマン、レタス、とうもろこし、ししとう、枝豆、みょうが、ゴーヤなどがあります。ぜひそれぞれの成分や効果を意識して積極的に摂取し、暑い夏を乗り切りましょう!
<参考・引用資料>
三ッ井清貴「服部幸應の食育インストラクター養成講座 テキスト2、5」(がくぶん)
農林水産省Webサイト1 / 農林水産省Webサイト2
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©2013「奇跡のリンゴ」製作委員会
TEXT by Shamy(NPO日本食育インストラクターPrimary)