2015年2月14日より全国公開
松竹株式会社メディア事業部
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田舎のある小さな村で過ごす若い女性の生活を四季を通して描く四部作の後半は、〈冬と春〉。前半では、都会で暮らしていた主人公いち子に何かが起きて地元に戻ってきたというのがほのめかされ、いち子の母についての謎が浮上してエンディングを迎えました。後半となる今作では、その真相が明かされます。後半も相変わらず、この小森という村でいち子が栽培し収穫する自然の食材が見るからに新鮮で、料理も本当に美味しそうに描かれています。そして、橋本愛が演じるいち子の食べ方が本当に美味しそうなんですよね。映像だけでなく食べるときの音もとても美味しそうです。 物語は後半に大きく動き始め、いち子がずっとこの小森にいるのか、また都会に帰るのか、小森にいたくているのか、何かから逃げて小森にいるだけなのか、彼女の本心と向き合う内容になっています。そんな彼女の心に答えを示すきっかけとして、母からの手紙が出てくるのですが、女性として、母として生きる一人の女性の胸の奥にあった心情に、大人になった娘が気付きます。本作は全般的に抽象的に表現されているところが多く、行間を読むという感覚で楽しんで欲しいのですが、女性の価値観の複雑さをとてもうまく描写していると思います。そこには、決して綺麗事だけで済ませていない女性の本心が描かれており、何を選択するかは女性自身が決めることであるという強いメッセージを感じます。“生きるために食べる。食べるためにつくる”という本作キャッチコピーの言葉の奥に、「でも本当に生きるには、食べる以外にもやるべきことはある」という言葉も隠されているように思います。 |
デートで観る上で気まずい内容というわけではありませんが、わかりやすくドラマチックなタイプの映画ではなく、静かにじわじわと心に訴えてくる内容なので、じっくり映画を鑑賞しながら、自分の世界に入り込んで観て欲しい作品です。また、女としての生き方について改めて考えたくなる内容なので、デートで観るよりは1人で見るか、女性同士で観に行くのが良いでしょう。 |
大人とは観る視点が異なると思いますが、自給自足する主人公の生活ぶりから学べることはあると思います。農業に興味を持ったり、料理に興味を持つというきっかけにするのも良いでしょう。主人公やほかの登場人物の心を描いた部分も、子ども目線で何かしら感じることがあるでしょう。後半で描かれる主人公いち子の母のエピソードについては、はっきりと何が言いたいかはわからないかも知れないし、大人の人に聞いても大人もはっきり言葉で説明するのが難しいかも知れませんが、感覚で理解する、行間を読むようなセンスを磨くつもりで観てみてください。 |
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2015.2.9 TEXT by Myson