数々の名作に出演し、俳優だけでなく、プロデューサーをやったり、絵本や小説を出したりとマルチに活躍するジム・キャリーは、『ソニック・ザ・ムービー』の公式資料によると、2014年5月にアイオワ州フェアフィールドにあるマハリシ経営大学から名誉博士号を贈られ、その大学の卒業式でこうスピーチしたそうです。
好きでない仕事で失敗することもあるのだから、
好きな仕事をする可能性に賭けてみたほうがいい
なんて素敵な言葉でしょう!でも、「好きな仕事をする」って、どういうことをさすのでしょうか?ちまたでは、好きな仕事をすることに肯定派と反対派がいますが、そもそも「好きな仕事」の概念が異なるので、どちらが正しいということではないように思います。では、「好きな仕事をする」を現実的に叶えるために、その解釈、背景を考えてみたいと思います。
まず“好き”の対象をイメージする時、例えば「私は映画が好きだから、映画に関わる仕事をしたいです」と思うのは自然です。
でも、映画に関わる仕事といってもたくさんある中で、何でも良いのかというと、きっと皆さんそうではないですよね。また、「映画が好き」の背景に何があるのかを考えてみると、少し見え方が変わってくると思います。
映画関連のお仕事で皆さんが良く知る役割を例に考えてみましょう。俳優、監督、プロデューサー、カメラマン、音響、照明…とこれだけでも、やることが全然違うのがわかります。映画制作の現場以外の仕事では、宣伝、買付、営業(劇場に対してなど)、映画館運営、パンフレット制作、グッズ制作、映画媒体ライターや編集者…と本当にたくさんの仕事があります。映画監督や俳優、制作系以外で、映画の仕事をしたいと思った時、就職先としてすぐに思いつくのは映画会社だと思いますが、前述のように多種多様な職種があることを踏まえてイメージすると、就職先は無数にあると言えます。
さらに、本業として映画に携わっている会社もあれば、本業は別の業種で、一部の部署またはグループ会社の1つが映画に携わっているというケースもあります。また、出版社などでいうと、ファッション雑誌やスポーツ雑誌を扱うのと同列で映画雑誌を取り扱う部門があったり、広告代理店の中で映画担当がいたりと、職種が先にあり、その中で何を扱うかが決まっているというケースもあります。
そう考えると、ただ“映画が好き”というだけでは、好きな仕事が何かを考えるにはまだ不十分で、むしろ“映画”は扱う商品、ジャンルでしかないので、「映画にまつわる何をしたいのか」から考えたほうがより具体的にイメージしやすいでしょう。そして、映画が好きだからといって、仕事で映画に関わることが得策かは個々に異なります。仕事にするまでは映画を気楽に観ていられたとしても、仕事となると向き合い方が変わります。自分が好みの映画ばかりに接するわけでもなく、知らなかったほうが良かった裏側を知ることになる場合もあります。
一方で、映画に関わる仕事で、なりたい職種も決めたとします。でも、自分に向いているか、自分がそのポジションで役に立てるかという問題もあります。『モンスターズ・ユニバーシティ』では、怖がらせ屋になりたいとモンスターズ・ユニバーシティの怖がらせ学部に入ったマイクと、怖がらせ屋として有望視されるサリーが、どうやって名コンビになっていったのかを描いています。ここで注目して欲しいのは、マイクです。マイクは全然怖くなく、落ちこぼれ扱いされてしまい、将来の夢に全然近づけません。でも、マイクは自分が役に立てることを見つけていき、サリーの最高のパートナーになっていきます。マイクを観ていると、視点や考え方を変えることで、好きな仕事をするチャンスがつかめるのだなと勇気をもらえます。
最後に性格特性と職業のマッチングを考える上で参考になる理論を1つご紹介します。ホランドの類型学的理論では、各々の職業には対応した固有のパーソナリティが関連するとして、パーソナリティを6つの類型に分けています。これをRIASEC(リアセック)と言います。
R(realistic)=現実的:物、機械、動物などを対象として、手腕的、機械技術的に対応するもので、順応的、具体的で率直なパーソナリティを示す。
I(investigative)=研究的:科学者や医者に多く、抽象的あるいは具体的な対象に対して研究活動を行うもので、知的、分析的で内省的なパーソナリティを示す。
A(artistic)=芸術的:芸術関係の職業に適するもので、想像性と情感が豊かで個性的なパーソナリティを示す。
S(social)=社会的:教育やカウンセリングに適していいるもので、対人関係能力に優れ、社交的で援助的なパーソナリティを示す。
E(enterprise)=企業的:組織・企業活動に適したもので、指導性や社交性のある活動的なパーソナリティを示す。
C(conventional)=慣習的:書記的・数的能力に優れ、銀行員や事務員に適したもので、秩序を重視し抑制的で従順なパーソナリティを示す。
[佐々木士師二(1996) 「産業心理学への招待」(有斐閣)]
上記の6つを六角形で示したものを“ホランドの六角形モデル”といいますが、隣り合っているパーソナリティは類似性が高いとされています(六角形にした時に、Rのもう1つの隣りはCになります)。この中で自分はどのパーソナリティが強いのか、傾向を知るための「VPI職業興味検査」というのがあります。これはある程度、世の中にあるさまざまな職業についてのイメージがないと答えにくいため、短大生、大学生以上を対象にした検査となっています。就職相談などで実施される場合もあると思いますが、興味がある人は機会があればやってみると良いかも知れません。ただ、興味の範囲が広いと、分散されてしまい、結果的にどれもまんべんなくという結果になることもあったり、これが絶対という結果ではなく、あくまで参考にというスタンスでやってみてもらえればと思います。検査は受けなくても、上記のどの傾向が自分にあるかイメージするだけでも、自分にどんな職業があっているのか、少し具体的に考えられるのではないでしょうか。
“好きな仕事”については、1回ではお伝えしきれないので、次回引き続き考えたいと思います。
オススメのお仕事映画
『モンスターズ・ユニバーシティ』
Amazonプライムビデオにて配信中(レンタル、セルもあり)
ブルーレイ・DVDレンタル&発売中
REVIEW/デート向き映画判定/キッズ&ティーン向き映画判定
好きな仕事に就くって奥が深い!サリーにも苦労があり、マイクにも苦労があり、2人の頑張る姿に勇気をもらえます。これからの将来をイメージする上で子ども達に観て欲しいのはもちろん、学生や大人もより現実的な自身の仕事観を捉える上でとても参考になるストーリーです。
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