孤独感に苛まれ、精神的に苦しんでいたゴッホが、絵を描くことで救われていた部分があったというのがすごく伝わってくるストーリーです。セリフの中には、自身が病気であるからこそ絵が描けるのだと語るシーンもあり、また目の前に見えているもの、自分だけに見えているものについてポール・ゴーギャンと語るシーンなど、とても哲学的な要素が含まれています。そんな彼はただ絵を描きたいだけで、世界がどう見えていても自由なはずなのに、周囲から偏見を持たれてしまい、自分が良いと思う芸術を分かち合える人が周囲には極少なく、孤独感を拭えないでいたことも想像できます。本作を観ていると、人々の偏見が芸術を純粋に嗜むことを阻んでいるのも客観視できると同時に、芸術の持つ影響力の強さも感じます。それでも彼は人間を憎まず、自然を愛します。そんな彼の優しさ、複雑さを、ウィレム・デフォーが見事に演じていて、それがこの映画に浸透しています。こんなに深い苦しみ、悲しみを抱えていても生き抜いたゴッホから、人間の生命力の強さを教えてもらえる1作です。
ラブストーリーの要素はなく、ゴッホの苦悩の日々を描いた人間ドラマなので、特別デート向きというわけではありませんが、誰もが知る芸術家の物語なので、芸術や文化に関心がある相手ならデートで観るのもありでしょう。精神的な苦しみと芸術の結びつきを感じられる作品で、アーティスティックな人や、クリエイティブな仕事をしている人は、より興味を持って一緒に観てくれると思います。
ゴッホは教科書にも出てくるでしょうし、有名な絵ならキッズやティーンの皆さんにもわかると思うので、その背景にある逸話を知ると、より歴史上の人物について興味が湧くはずです。ポール・ゴーギャンなど同時代の画家との繋がりなども知ることができて、知識も自然に広がります。また、ゴッホが問題を抱えていたように、誰にでも何かについて「これって自分だけなのかな?」と思うことはあると思います。そんな思いを抱えている人は、特に共感して観られるでしょう。
『永遠の門 ゴッホの見た未来』
2019年11月8日より全国公開
ギャガ、松竹
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TEXT by Myson