医師の仕事は、患者の病気や怪我を治すことというイメージはどうしてもありますが、それだけではなく、患者がその後どう生きるか、もし余命が短いとしたらどう過ごすのが一番幸せか、ということに深く関わるのだなと改めて考えさせられます。そして、本作で主人公達が行うのは往診だからこそ、患者達の生活を目の当たりにして、放っておけないことも出てくるし、すごく大変なお仕事で、誰にでもできることではないということが伝わってきます。原作は、現役医師の南杏子が2020年に発表した同名小説ということで、この物語には、いろいろな思いが詰まっているのかなと個人的には感じました。「こうしてあげたいけど、できない」ということが多い現実も垣間見えましたが、コロナ禍で医療の現場が逼迫している今だからこそ、余計にそういったジレンマが医療従事者の方々のストレスにもなっているのではないかと思えます。
切ない要素が多いストーリーではありますが、途中ちょっと意外なシーンも出てきます。これは原作にもあるのか、はたまた監督の無茶ぶりなのかは不明ですが(笑)、途中俳優一同がある芸を披露している場面がありますので、そこはほっこり楽しんでください。
ちらっとラブストーリーらしき要素は出てきますが、やはり主流は医療に携わる人達と患者達の物語なので、特別デート向きという感じではありません。ただ、患者達の中には夫婦も出てくるし、どうやって看取るのかという部分も出てくるので、夫婦で観ると今後のことをいろいろと相談するきっかけにできそうです。
キッズは特にまだ身近に感じられることが少ないと思うので、大人になってから観ると良いでしょう。医療関係の道を歩みたいティーンは、現場についていって、見学するような感覚で観ると、自分の仕事観、価値観が少し見えてくるかもしれないですね。
『いのちの停車場』
2021年5月21日より全国公開
東映
公式サイト
©2021「いのちの停車場」製作委員会
TEXT by Myson