REVIEW
歴代のゴジラの中で、1番恐ろしいといえるほど恐怖心を煽る圧倒的な強さを感じます。見た目にも爬虫類感が増したのか、不気味さが倍増しています。そして、1940年代後半の戦後を物語の舞台にしている点で絶望感も増し、八方塞がりとなったキャラクター達から離せません。
昨今、自然災害や、新型コロナウィルス感染症の蔓延、世界中で勃発した複数の戦争など、地球全体が暗い時代に入っているように感じます。現代を生きる私達自身が個々の人間では立ち向かえない困難に直面しているなか、本作のキャラクター達に自分を重ねて観る方も多いのではないでしょうか。時代は違えど、現代の私達に通じる部分がある分、作品が訴えかけてくるメッセージもズシッと重く感じると思います。また、山崎貴監督が作り出す壮大な世界観と、豪華キャストの共演によって、エンタテインメント性は確保されつつ、逆にそんなことも気に留める心の余裕がなくなるほど、キャラクター達のさまざまな苦渋の選択に心を奪われます。
とにかくまずどんなに苦しくても生きていくことが大切だと感じると共に、人との繋がりの尊さを実感させられます。人間への戒めを感じるストーリーとしては、ある意味原点回帰ともいえそうで、さらに「0=ゼロ」でもなく、「-1.0」とタイトルについている背景にもさまざまな想像が膨らみます。
ポップコーンムービー的なムードというより、重みのある人間ドラマのムードが強いので、“映画観”が似ている人と観るほうが楽しめそうではあります。大切な人の存在を一層尊く感じるストーリーという点では、カップルで観るのも良いでしょう。見応えがかなりあるので、いろいろなメニューを詰め込んだ日のデートで観るよりは、映画鑑賞をメインメニューにしたデートで観るのがオススメです。
“ゴジラ”シリーズがただの怪獣映画ではないこと、これだけ長い間、世界中で愛されてきている所以を改めて実感できると思います。ゴジラは人間にとってどんな存在なのか、いろいろな解釈をしてみてください。過去の“ゴジラ”シリーズと観比べるのも良いと思います。特に1作目の1954年の『ゴジラ』を観てみると、“ゴジラ”がどんな思想のもとに生まれたのか、解釈が深まると思います。
『ゴジラ-1.0』
2023年11月3日より全国公開
東宝
公式サイト
© 2023 TOHO CO., LTD.
TEXT by Myson
第96回アカデミー賞®ノミネート:★視覚効果賞、計1部門
(★)は受賞した賞です。
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情報は2023年11月時点のものです。最新の販売状況や配信状況は各社サイトにてご確認ください。