4世紀、ローマ帝国末期のエジプト、アレクサンドリアを舞台に繰り広げられる物語と言うことで、まだ地球や自分たちの存在がもっと謎に満ちていた時代と言えますが、そんな時代に主人公ヒュパティアのような自由な発想で自立した女性がいたことにとても共感を覚えました。ヒュパティアは実在の女性天文学者で、宗教はもとより「天動説か地動説か」「何を信じるか」という話題で自分の身の危険を左右するような時代に自分の意志を貫いた人物として描かれています。人々のための宗教なのか、権力争いのための宗教なのかわからないような情勢のなかで、身を守るために改宗することもなく、また異教徒でも皆兄弟だとして差別なく接した彼女が、ラストであのような運命を受け入れるというのはとても見ていて辛かったですが、自分の意志を曲げてまで生きることより、自分らしい生き方を最後まで大事にしていた女性という面で感動しました。彼女はだいぶ先の時代を歩んでいた人で、現代の女性よりもずっと大変な時代にあんな生き方をしたなんて、とても尊敬します。女性としての人生を捨てて研究に一生を捧げた点については、「女性としての生き方も諦めて欲しくなかった」と思いましたが、この点でもかなり今の現代女性に増えているパターンだなと、時代を超えている感じがしました。
たまたま2010年3月にエジプト旅行に行き、アレクサンドリアも含めいろいろな遺跡を巡りましたが、ガイドさんがキリスト教徒に壊されたと言っていた遺跡があったのを思い出し、劇中でキリスト教徒が遺跡を破壊するシーンは切ない気持ちになりました。何千年もそこに残っているエジプトの美しい遺跡の数々をバックにしての人間たちの争い…そんなシーンを観て、人間って愚かだなとつくづく思いました。セットもかなりリアルだったのでどうやって撮ったのだろうと思いましたが、CGではなく実際に建てたようですね。さらにアベナバール監督が本作に選んだエピソードは、一流の専門家によるチェックを受けたとのことですが、実際にドラマチックな出来事なので淡々と描いてはいるものの余計なことをしていない感じですんなり観ることができました。これは現代女性にはぜひとも観て頂きたい映画です。
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昔こういうの授業で習ったなあというような世界史ネタがたくさん出てきます。天動説や地動説などが全くピンと来ないと、ちょっとおもしろみが半減するかも知れません。自分は理解しているのに彼氏や旦那がちんぷんかんぷんで鑑賞後に「あれって何?」と聞いてきてもイラッとしないなら、一緒に行っても良いでしょう。でも正直なところ強く生きた女性の物語なので、強く女性に共感を得そうな分、男性はどう捉えるのか賛否両論の反応になるでしょう。歴史好きな男子とならデートで観るも良しですが、女性同士、または一人鑑賞が良いと思います。 |