2015年4月24日より全国順次公開
ギャガ
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『アーティスト』でアカデミー賞5冠に輝いたミシェル・アザナヴィシウス監督の作品としては、イメージが180度異なる社会派ドラマです。本作は、1999年、ロシアに侵攻されるチェチェンを舞台に、9歳にして目の前で両親を殺された少年が、まだ乳飲み子の弟を抱えて生き延びようとする壮絶なストーリー。幼い少年の大人顔負けの生命力と同時に、ピュアだからこそ心に深い傷を負う姿に胸を打たれます。そんな主人公ハジを演じるアブドゥル・カリム・ママツイエフは本作がデビュー作ながら本当に素晴らしい演技で、悲しい顔はもちろん、笑顔にハートを掴まれます。彼のダンスシーンがすごくキュートでありながら、とても感動的で重要なシーンなので特にご注目ください。 そして、本作で印象的だったのはもう一つのストーリーが同時に描かれている点です。2つの物語にどんな関係があるのかは最後に明らかにされるのですが、この演出、このラストにこの映画で伝えたい全てのメッセージが集約されているように思いました。「戦争に巻き込まれる必要のない人間が巻き込まれ、一番の犠牲者になっている」「結局なぜ戦争しているのか誰もわかっていない」「こうやって終わりがなく戦争は繰り返されていくけれど、誰のためにもなっていない」、そんな解釈を私はしました。ハジのストーリーを見守って頂くだけでも充分なのですが、それだけではない部分が多く含まれているので、ぜひその辺りにも注目してご覧頂ければと思います。 |
一見感動のドラマではあるのですが、この映画には2つの側面があり、単純に感動させるだけでは終わらせてくれません。なので、観終わったときの気分がどう転ぶかは正直個人差が出ると思います。そういう意味では初デートや新米カップルにとっては不向きかなと思いますが、結末まで観て誰かと語りたくなる作品ではあるので、いろいろと語ることで相手をよく知りたいと思っているカップルは一緒に観てみてはいかがでしょうか。 |
主人公が9歳の少年ということで、9歳以上なら試しに観てみても良いのかなと思えますが、上映時間が135分という長さで、若い兵士のストーリーのほうが子どもには少々刺激が強いシーンがあるので、中学生以上が適正かなと思います。中学生でも完全に全てを理解するのは難しいかも知れませんが、ティーンはティーンなりに観て得るものがある内容です。学ぶべき部分と、反面教師的な部分の両面を考えながら観てください。 |
© La Petite Reine / La Classe Américaine / Roger Arpajou
2015.4.20 TEXT by Myson