2017年9月16日より全国順次公開/PG-12
リアリーライクフィルムズ、コピアポア・フィルム
公式サイト
これまでに発表した2本の長編作品が、カンヌ国際映画祭の監督週間と批評家週間の開幕上映作品に選ばれたというフランス映画界の新星、カテル・キレヴェレ監督の日本デビュー作。映画資料には『ラ・ラ・ランド』のデイミアン・チャゼル、『たかが世界の終わり』グザヴィエ・ドランらと並び、ミレニアム世代監督の代表と評されていて興味をもちましたが、音楽、映像、キャスティング(どこまで監督の意志が反映されたかはわかりませんが)など…さまざまな要素に光るセンスを感じました。2014年に発表されたメイリス・ド・ケランガルの小説"Répare les vivants"をキレヴェレ監督自身が脚色した本作は、事故で脳死判定をされたサーファーの青年の心臓が、50代の女性に移植されるまでの24時間を描くヒューマン・ドラマ。限られた時間のなか、生と死にまつわる家族や周囲の人々の葛藤が、海を思わせる青を基調とした映像と波のように短いフレーズを繰り返すメロディーのなかに、美しく淡々と描かれます。当事者や家族にとっては大きなドラマですが、医師や臓器移植コーディネーターにとっては日常の仕事。しかし、どの立場であっても命の重みに変わりはない。海のように絶え間なく繰り返される生命の営みをクールに俯瞰しながらも、短いシーンやセリフのなかに人々の感情の熱さはしっかと描き切った、なかなかの佳作です。出演は、『預言者』のタハール・ラヒム、『毛皮のヴィーナス』のエマニュエル・セニエ、そして、近年は『Mommy/マミー』ほかグザヴィエ・ドラン監督とのタッグで印象的な演技を魅せるアンヌ・ドルヴァル。実力派俳優の演技が本当に素晴らしいのですが、難しいテーマのすべてを担うような、中年女性クレール(アンヌ・ドルヴァル)の最後の表情は必見です。今後の活躍に注目したい女性監督、カテル・キレヴェレ。ぜひこの機会にチェックを! |
テーマは重いですが、映像や音楽のオシャレ度も高く、アート作品好きのカップルもヒューマン・ドラマ好きカップルも満足できる作品だと思います。心臓移植シーンのリアルさには驚きますが、ストーリーの流れのせいか、そんなにグロいが印象は受けませんでした。ただ、そういったシーンが極端に苦手という相手とは観に行かないほうが良いでしょう。 |
PG-12作品なので、12歳未満のお子さんは保護者と一緒にご覧ください。中学生以上なら、事故で亡くなった青年に自分達を重ねて観ることができると思います。その無念さに思いを馳せ、「車に乗るときはシートベルトをしよう」という教訓を心に刻んでほしいと思います。 |
© 2015 SBS PRODUCTIONS – SBS FILMS– TWENTY TWENTY VISION FILMPRODUKTION – FRANCE 2 CINÉMA – ENTRE CHIEN ET LOUP
2017.8.30 TEXT by min