鬼才ペドロ・アルモドバルが製作ということと、アルゼンチンに実在するプッチオ一家が起こした事件を映画化した作品ということで興味を持って観ました。本作はヴェネチア国際映画祭で銀獅子賞も受賞しています。プッチオ家は一見普通の家族なのですが、裕福な家庭の人間を誘拐し身代金で生計を立てていたんです。それは家業になっていて、父が首謀者で、母もそれを知っていて、息子達も手伝わされています。そして何より衝撃的なのが、自宅で誘拐した人物を監禁しながら、家族は普通の生活をしていること。さらに、長男はラグビーのナショナルチームに所属しながら、チームメイトをターゲットにすることもあるんです。息子達が望んでやっているかというとそうは見えないのですが、父の圧倒的権力が家業を手伝わないことを許さない状況で、父アルキメデスは本当にモンスターです。映画の最後に彼らのその後が流れますが、父アルキメデスの傲慢さは異常で、それでも生き残ってしまうある種の生存本能はすさまじいものを感じ、ゾッとしました。アルゼンチンの社会情勢とも絡んだ時代を反映した事件に思えますが、他国の事とは言え、政治の大切さはこういう映画を観ることで実感します。 |
実際に起きた事件を映画化した社会派ドラマで、クライマックスは衝撃的でヘビーな内容です。デートで観るタイプの映画ではありませんが、何かトラブルに巻き込まれているカップルは、客観的に自分達の状況を考える参考に観てみると、今すぐに危険な事から手を引こうと思えるでしょう。また犯罪でなくとも、重大な問題を抱えた家族と縁を切れない人と付き合っている人は、今後の人生をリアルにイメージするために1人で観てじっくり考えてみてください。 |
キッズ&ティーンの皆さんには、絶対に真似して欲しくない内容が描かれた作品です。ですが、実際にアルゼンチンで起きた事件を映画化しているので、世界情勢を知るために、中学生以上なら観てみるのも勉強になるのではと思います。事件を起こした家族が悪いのはもちろんですが、こういう事がまかり通ってしまう社会はなぜできてしまうのか。これという答えが用意されているものでもありませんが、それを考えてみることは無駄ではありません。ティーンの皆さんは観たら、ぜひいろいろな人と意見を交換してみてください。 |