色っぽい大人のラブストーリーです。といっても、エッチなシーンやラブシーンはありません。それなのになぜ色っぽいのかというと、“無言の会話”で男女の心の動きを見事に表現しているからなんです。国連で働く夫に会いにはるばるエジプトのカイロにやってくるも夫が多忙で孤独な日々を送ることになる主人公ジュリエットを演じるのはパトリシア・クラークソン。大人の女性独特の美しさと品を漂わせていますが、このジュリエットのキャラクターによって、夫がいないあいだにカイロの街を案内してくれたり世話をしてくれるエジプト人男性タレクとの心のなかだけの恋がより一層美しく見えます。 そして、お国柄の違いがとてもうまく表現されているのも見どころ。貧しくて恵まれない環境で生活をしているエジプトの人々のことをジュリエットは気にかけるけれど、タレクはある意味割り切りながらもこれは自分たちの国の問題で他国に介入されるべきではないと思っていたり、そういう価値観の違いがところどころ自然に会話に表れています。私も数年前クーデターが起こる前にエジプトに旅行に行ったので、現地の風景やエジプトの人々の様子を思い出しながら観ました。本作にはピラミッド以外あまり名所は出てきませんが、街をぶらぶらしたり現地に溶け込んで文化を体験する旅行に近い感覚が味わえると思います。日常から解き放たれて“女”に戻りたいと思う方はぜひ観てみてください。 |
とても静かな作品だし、わかりやすいセリフで展開するストーリーでもないので派手な展開の映画が観たいデートのときには向いていないと思いますが、大人のカップルにはオススメです。心のなかだけで誰にも何も打ち明けずに味わう恋は、解釈によっては浮気ともとれるかも知れませんが、そういう理屈で観るのではなく、「恋をする気持ち」を思い出すために観てもらえると良い刺激を受けると思います。ただし、別の相手を探したくなる刺激になってしまう可能性もあるので自分たちの状況次第で観るか判断してください。 |
ほとんど言葉で説明しないし、若者たちのように「恋にまっしぐら!」という行動に出られない大人の恋愛を描いているので、キッズやティーンには理解不能かも知れません。でも、エジプトの文化を知ったり、外国から訪れた人たちと現地の人たちの感覚の違いなどを学べる部分もあります。問題のあるシーンはないので、エジプトに興味がある人は観てみると良いでしょう。 |
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2013.10.16 TEXT by Myson