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The NET 網に囚われた男

2017年1月7日より全国順次公開
クレストインターナショナル
公式サイト

キム・ギドク監督が描く人間の狂気が好きで、ほとんどの作品は観ていますが、今作はかなり社会派で、朝鮮半島の南北分断問題を描いています。もちろん、このなかで描かれているのも人間の狂気なのですが、それは1人の特定の人についてというよりは、国単位です。本作の主人公は、北朝鮮で妻子とともに細々とした暮らしをする漁師。彼は韓国との国境で漁をしていて、エンジンの故障により韓国領域に流されてしまいます。韓国からスパイ扱いをされるのはもちろん、北朝鮮に帰っても疑われるという恐れがあり、北朝鮮にいる妻子を守るためにも、身動きが取れません。それでも彼は北朝鮮に戻ろうと必死で闘います。
愛国心やこれまでの辛い歴史のために、一方的な価値観を持っている、両国の人々。なかにはもちろん、国を問わず同じ人間として個人を尊重する考えを持っているキャラクターもいるのが救いですが、だからといって、簡単に解決できる問題ではありません。主人公が最後にとった行動が、強いメッセージとなっていますが、“選べない”現状は本当に辛いと思います。どちらの国が良いかという浅い議論ではなくて、ここで描かれているのは、人が何を求めるか、どうやったら幸せになるかという議論。偏った描き方ではない点も素晴らしいと思いました。日本人も知るべき実態が描かれているので、多くの方に観て欲しいです。

デート向きの内容ではありませんが、人間としてどう生きたいかというテーマは、観終わった後に話し甲斐があるので、一緒に観るのも良いのではないでしょうか。ただ、相手が朝鮮半島の南北問題に極端な見解を持っているとわかっている場合は、デートの雰囲気ではなくなる可能性も覚悟して、一緒に観ることになります。でも、知られざる部分というか、こういう見方があるんだという部分もきちんと描かれているので、偏見がある人にこそ観て欲しい映画です。他国の問題とはいえ、こういった部分の価値観が合うのか知るのは交際する上で大事だと思います。

キッズにはまだ難しい内容ですが、社会科の時間に、朝鮮半島分断の問題について教えてもらった人なら、ぜひ観て欲しいと思います。もしくは、大人の人に先に朝鮮半島の南北問題について簡単に解説してもらいつつ、一緒に観るとより理解が深まるでしょう。日本に流れてくるニュースだけではわからない、北朝鮮と韓国の人々の実状や心情が描かれています。先入観を捨てて、素直な気持ちで観てください。

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2016.12.26　TEXT by Myson