2017年6月3日より全国公開
コムストック・グループ
公式サイト
19世紀末、光、色、角度が計算された照明のなか、シルクでできた特殊な衣装で舞い、幻想的かつ優雅なパフォーマンスで観客を魅了し、一躍、時の人になった伝説のダンサー、ロイ・フラーの実話を映画化した本作。当時、彼女のショーが多くの人々に大きなインパクトを与えた事は容易に想像できますが、技術が進歩した現代に観たとしても、その美しさは感動的なものでしょう。でも、彼女のダンスはただのダンスではなく、身体的負荷がかなりかかるもの。彼女自身が無理をしてショーを乗り切らない限り、他に方法がない時点で、限界が見えてきてしまいます。また、リリー=ローズ・デップが演じる若手のダンサーが、ロイ・フラーに新たな試練を与えますが、こういった展開はどんな業界でも世代交代として、誰もが必ず直面する事だと思うと、やるせない気持ちになりました。ロイ・フラーを演じたソーコの演技もさることながら、リリー=ローズ・デップの演技も素晴らしく、2人の競演シーンはとてもスリリングで、本作の1番の見どころとなっています。 本作は、きらびやかなサクセス・ストーリーというよりも、ロイ・フラーの壮絶な半生を描いていますが、それだけ情熱を注いでいるからこそ美しく、高尚な芸術のように思えました。彼女に限らず、映画で語られるほどの芸術家は、ドラマチックな人生を送っていて当然だろうとは思いますが、皮肉にも苦しみや悲しみがあるからこそ生まれる芸術があるのだろうと思えてなりません。彼女になぜそこまでやるのかと問いたくなりますが、“これしかないから”という答えが返ってきそう。影が濃いほど光が眩しくなるとは、こういう事なのかも知れませんね。 |
映画好きのカップルなら、たまにはこういう作品を観るのも良いかも知れませんが、切ないストーリーでただただ苦しく、時にエロチックなシーンもあるので、初デートではやめておいたほうが無難です。本当に支えてくれる人の存在や、一方で自分の足を引っ張ることになる存在について、いろいろ考えさせられるストーリーなので、1人でじっくり観るのが良いと思います。 |
最初は生きるのもやっとだったロイ・フラーが、成功するために無茶な言動をするのもわからなくはないですが、キッズやティーンの皆さんにとっては、良いお手本、悪いお手本の両方が描かれています。自分ならどうするだろうとリアルに想像して、今後の糧にするとしたら、高校生以上になってから観たほうが、自分の価値観に照らし合わせて考えられるように思います。 |
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2017.5.24 TEXT by Myson