2017年7月22日より全国順次公開
ココロヲ・動かす・映画社〇
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幸せとは、多くの要素で成り立っているものです。仕事、お金、愛情、健康、環境…etc。しかし、どんなに良い条件のなかで暮らしていても、自分が自分でいられなかったとしたら、それは何より不幸なことだと思います。第29回東京国際映画祭で最優秀男優賞と観客賞受賞したフィリピン映画『ダイ・ビューティフル』は、女性の心と男性の肉体をもつトランスジェンダーのトリシャ・エチェバリアが、さまざまな苦難と葛藤の末に“ミスコン女王”として生きる道を選び、気高く、そして周囲への愛情いっぱいに生き抜く姿を描く作品です。思春期に感じる性的違和感、厳格なキリスト教徒である父親との確執、偏見、性的暴力…さまざまな困難に遭う度に自分の存在について悩み、さんざん苦しんできたトリシャ。そんな彼女が、ついにミスコン女王の称号を手に入れ、TVカメラに向かって「死んだあと、もしも生まれ変われるなら、もう一度自分になりたい!この世で私の務めを果たせるのは私だけ…」と高らかにスピーチする姿が深く胸に刺さります。生きていれば、誰もが自分自身の存在価値について思い悩むでしょう。しかし、トリシャのように深く自己のアイデンティティと向き合い、やがて自分を愛し誇れるようになったとき、彼女の手に入れた幸福はとてつもなく大きなものに見えました。若くして亡くなったトリシャの葬儀では、世界のセレブ達を模した艶やかな死化粧が7日間にわたって施されます。死してなお美しいトリシャ。「たった一度の人生を、自分らしく、精一杯生きてほしい」彼女の穏やかな表情からは、そんなメッセージが聞こえてくるようです。 |
ハートフルな人間讃歌である本作は、デートで観るのもオススメです。ただし、性的マイノリティに対して意見が食い違う相手の場合は、慎重に検討すべきでしょう。日本でも、ダイバーシティ(多様性)を尊重する社会になりつつあり、若いカップルならばライトに観られる作品でも、年代によってはまだまだ受け入れがたいと感じるかも知れません。お互いの価値観を図る意味で一緒に観てみるのは良いことだと思います。 |
トリシャが性的暴力を受けるシーンなど、ちょっと過激な描写があります。しかし、トリシャの思春期の恋心や親に自分を理解してもらえない悲しさは、キッズやティーンのほうが共感しやすいのではないでしょうか。ストーリー的な部分の理解度は、心の成長度によっても変わってくると思いますが、トリシャを演じたパオロ・バレステロスの“そっくりメイク”のテクニックは観ているだけでワクワクすると思いますよ。パオロさん自身はトランスジェンダーではありませんが、自身のInstagram(インスタグラム)で海外セレブのものまねメイクを披露している人気メークアップ・アーティストなので、メイクに興味のある人はいろいろと参考になるかも知れません。 |
© The IdeaFirst Company Octobertrain Films
2017.7.19 TEXT by min