2015年9月5日より全国順次公開/R-15
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2007年、イタリアの古都ペルージャで起きた英国人女子留学生殺害事件を題材にした本作。この事件の実際の容疑者は、被害者のルームメイトだったアマンダ・ノックス(劇中ではジェシカで舞台も異なる)と、その恋人、さらに知人男性の3人で、アマンダ・ノックスの容姿の美しさや、事件がセックスやドラッグ絡みというスキャンダラスな要素が多かったことから、当時メディアを賑わせていたのを私も記憶しています。本作は、事件そのものを映画化したストーリーではなく、映画化しようとしている監督トーマス・ラング(ダニエル・ブリュール)が、ローマで映画制作の準備を進める上で、数々の疑問にぶつかり苦悩する様を描いています。プライベートで元妻と愛娘の親権を争っているトーマスは、仕事も数年うまくいっておらず、この作品で勝負する必要があるのですが、事件について調査を進め、またローマで知り合った純真な少女メラニーの優しさに触れ、これから撮ろうとしている映画の本質について考え始めます。当然のことながら、周囲はエンターテイメントとして事件のスキャンダラスな要素をフォーカスさせようとするのですが、トーマスの思いは別の方向に…。こういったやりとりは、実在の事件を映画化する際によくありそうですが、本作は映画作りの大変さを物語るにとどまらず、被害者を含めここで関わる少女たちと自分の娘への思いを重ね、真相を知りたいという強い思いを募らせる1人の男性が、映画作りを通して身も心も削っていく様子を描いている点で、父親目線を強く感じさせるストーリーでした。こういった描き方は、さすがマイケル・ウィンターボトム監督ですね。事件を解明するストーリーだと期待して観てしまうと肩透かしにあったような感覚になる人もいると思いますが、ステレオ型にしか報道されていない事件を別の視点から見るとこんな風にも見えるという感覚で観て欲しい作品です。 |
本作で取り上げられている元の事件を知っている人なら特に、そのスキャンダラスな部分を記憶していると思いますが、それをそのまま映画化していると勘違いしないように誘った方が良いでしょう。サスペンス映画というよりは、人間ドラマで、じわじわと展開していくタイプの映画なので、派手な映画を好む相手を誘うには不向きでしょう。誘うなら映画好きか、1人でじっくり観ることをオススメします。 |
R-15なので、15歳未満の人は観られません。実在の事件を取り上げていますが、事件を解決していく映画ではなく、普段映画を観慣れていないと、何に焦点を当てて観れば良いか少し戸惑うかも知れません。また、主人公トーマスの心情はティーンの皆さんがどこまで共感できるかわかりませんが、自分のお父さんを観ているような感覚で観察すると良いでしょう。もしくは、事件に焦点を当てて観た場合、加害者ではなく被害者に目を向けてみてください。映画化する題材としてではなく、実際の事件で1人の少女が亡くなっている事実をどう扱うべきなのか、自分ならどう思うかを考えてみるだけでも有意義だと思います。 |
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■TJE Selection イイ男セレクション/ダニエル・ブリュール
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2015.8.25 TEXT by Myson