2017年10月7日より全国順次公開/R-15+
スールキートス
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男女の恋愛を軸に描いているのかと思いきや、根本は母の愛に飢えた娘のストーリーという印象でした。血の繋がった母と娘の物語ではなく、母のような存在に愛を求める少女の思いを描いている点でも意外性がありましたが、こういう設定にすることで、母、娘というキャラクターがステレオタイプにならないと同時に、さまざまな家庭事情の人が観てもどこかしら当てはめて観られる柔軟性ができているという点が上手いなと思いました。草刈民代が演じる猫のように生きる女性、直子は好きになれませんが、男性ならよくいるタイプかも知れません。そう思うと、女性だからってこういう生き方をしてはいけないわけでもないし、女性が母親らしく生きる、自分らしく生きることって、両立できない場合もあるのかなと考えさせられました。そして、主人公、泰子の人生が複数の他人に掻き回されていく様子は観ていてもどかしいですが、長らく置き去りになっていた心が、どうにもできない現実を受け入れることで前に進めるようになる展開は、清々しい部分もありました。とにかく、家族にはいろいろな形があり、男女の関係にもいろいろな形がある。絵に書いたような幸せでなくても、あなたなりの幸せがあると教えてくれるストーリーです。 |
ラブストーリーも描かれていますが、特殊なケースであり、女性としては複雑な立場に置かれるので、ロマンチックなムードに浸って観られる内容ではありません。また男性に関しても、複雑な思いで見守るしかない設定がいくつか出てくるので、デートには向かないでしょう。風来坊タイプとおつきあいしている人は、1人で観に行って心の整理をするのに良いと思います。 |
ここに描かれる大人の事情を今分かれというには図々しいし、子どもが理解するにはまだ難しい題材だと思います。今、複雑な家庭事情で悩まされている人がいたら、大人になってから本作を観ると、少し気持ちが楽になるかも知れません。これからいろいろと経験して、いろいろな人と出会ってから、観てみてください。 |
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2017.9.27 TEXT by Myson