2017年2月4日より全国順次公開/PG-12
キノフィルムズ、木下グループ
公式サイト
黒人差別にまつわるいろいろな歴史が、映画化されてきましたが、本作でこんな史実もあったと知り、驚きました。舞台は南北戦争下の1862年。主人公のニュートンは、まだ14歳だった甥を失い、彼の遺体を家族のもとに届けようと南軍を脱走。故郷のミシシッピ州ジョーンズ郡に戻ったニュートンは、徴兵された男達の留守を預かる近隣の住人達が、南軍に衣類や食料などを搾取されている実態を知り抵抗しますが、そのことがきっかけで追われる身になってしまいます。やむなく妻と生まれたばかりの赤ん坊を家に残して、逃亡奴隷の隠れ場所で共同生活を始めたニュートンは、苦難をともに乗り越えた黒人達と心を通わせるようになり、他の逃亡奴隷や、脱走兵も加わった自由反乱軍を結成していきます。 この映画の冒頭で登場したニュートンは、リーダーになるような人物には見えませんでした。でも、正義感が強く、誰にでも優しく、自身の価値観をしっかり持っている点でリーダーにふさわしい人物だということが徐々に見えてきます。そして彼が人間として普通に幸せに暮らしたいという感覚がわかっていた男だったからこそ、人種を越えたコミュニティをまとめることができたと思います。マシュー・マコノヒーの演技は、そんな親近感がもてる、押しつけがましくないヒーロー像に説得力を与えています。同時にこの物語は、誰もがヒーロー、リーダーになりうるという点もリアルに感じさせます。白人の妻と黒人の妻、2人の妻がいたという事実だけ聞くと、センセーショナルな印象でしたが、それも想像とは違っていて、とにかく彼は良心と知恵と勇気で行動する男という点で、共感できました。人種問題についてなど極端な発言をしているドナルド・トランプが、2017年1月下旬にアメリカ大統領に就任しましたが、それが良いのか悪いのかはさておき、人種問題、選挙、リーダーシップ、いろいろな点でタイムリーなテーマを扱った映画だと思います。 |
主人公に2人の妻がいたというところだけ聞くと、二股をかけている男の話で気まずい部分もあるのかなと思うかも知れませんが、そういう心配は不要です。ただ、アメリカの歴史を紐解く内容なので、ロマンチックなムードになるような映画ではありません。デートで観るには少々堅いテーマですが、2人とも興味が持てるならデートで観るのもアリでしょう。 |
PG-12なので、12歳未満の人は大人と一緒に観るようにしてください。本作をより理解するには、南北戦争についてや、黒人差別についてのアメリカ史を多少しておいたほうが良いでしょう。学校でまだ習っていない人、習ったはずだけどあまり記憶に残っていない人は、改めて少し勉強してから観ると良いと思います。映画を観ることで、勉強に携わる部分への興味も深まって、一石二鳥ですよ。 |
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2017.1.24 TEXT by Myson