2014年10月4日より全国公開
アース・スター エンターテイメント
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寝るとき、お風呂に入るときですら、ずっと被り物を脱がないフランク。一見ゆるいコメディなのかと思いきや、シュールな笑いは多々ありつつ、壮絶な物語でした。ずば抜けた感性と音楽的才能を持つカリスマ的存在フランクと、彼を尊敬し音楽活動と生活を共にするバンド・メンバー、そしてその中にひょんなことから加わった一人の青年ジョン。フランク達とのクレイジーな生活のなかでジョンは徐々に変化していくのですが、影響を受けている側だったジョンのなかに野望が芽生え、だんだんとフランク、そしてバンドメンバーたちの日常を掻き乱していきます。“普通はこうでしょ”っていう概念を象徴するのがジョン、“周囲がどう思おうと私たちには私たちなりの幸せがある”っていう別の視点をもたらすのがフランク達のように感じましたが、人が何を求めて、何を拒絶するか、その価値観はやはり共通のものさしでは測れませんね。そして人それぞれが住む世界は一緒に過ごしていても異なる場合もあって、それを共有できるかどうかだってわからない。でもそれは誰に責任があって、誰が悪いのかというのも決めつけることはできないんだなとか、いろいろなことを考えながら観ました。自分の居場所を作ることって本当に大変で、それを守るのも大変で、でも私たちはそうやってそれそれがこの世の中に生きているんだということを、フランクという存在によって巧妙に描いた作品です。殻に閉じこもってしまう人が観たら、さらにフランク化してしまうのか、客観視して“被り物を脱ぎたい”と思うのか、観る人によって両極に分かれそうですね。とにかく、いろいろな意味でオモシロイ作品です。※左下はメイキングの写真。フランクの中身はちゃんとマイケル・ファスベンダーです(笑)。 |
気まずくなるようなシーンはそれほどないし、笑えるシーンもあるので、デートで観ても良いでしょう。ただ、単純にコミカルな映画ではないので、笑いだけを求めて観るならば向いていません。そして、内向的過ぎる人を誘う場合も注意しましょう。被り物をすることで自分を守っているフランクに共感するとは思いますが、その影響がどっちに転ぶかが読めません。まあそもそもフランク並みに度を超して内向的な人を劇場に連れて行くこと自体が困難かも知れませんが(苦笑)。一時的に内向的になってしまっているだけの人には、自分を客観視するのに良いかもしれません。でも、無難なのは心が健康な人を誘うことです(笑)。 |
被り物をしているフランクのキャラクターは一見楽しげですが、キッズにはまだ理解が難しい心情を描いているので、もう少し大人になった方が共感できると思います。ティーンになれば、自分のなかに閉じこもりたい心情は自覚できると思うので、物語に感情移入できるのではないでしょうか。抽象的な描写をどこまで理解できるかは個人差があると思いますが、まずは感覚で観てみてください。フランクのような心情を感じたことがないという人でも、周囲にこういうタイプの友達がいたらと想像しならが観ると良いでしょう。これから成長する上でだんだんと世界が広まり、いろいろな人と接することになりますが、人それぞれに価値観が違うということがわかれば良いと思います。 |
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2014.9.22 TEXT by Myson